ソロモン72柱

登録日:2010/02/11(木) 16:03:39
更新日:2024/10/14 Mon 21:02:28
所要時間:約 30 分で読めます





ソロモン72柱とは、古代イスラエル王国の賢王、ソロモンが使役・封印したとされる悪魔の総称である。
別称として「ソロモン72将」。彼らが記された近世オカルティズムを代表する魔術書(グリモワール)名から採って「ゲーティア(ゴエティア)」とも呼ばれる。


【概要】

最初に断っておくと、ソロモン王が登場する旧約聖書に、ソロモン72柱についての記述はない。*1
『ソロモン72柱』というユニットが華々しくデビューするのは、中世後期~近世でムーブメントとなった魔術や悪魔学といったオカルティズムにおいてである。
更にエンターテインメント的性格を持つコンテンツとして、ホビー感覚でオカルトを愉しむ一般層の厨二患者にも定着したのは、19世紀にフランスで発刊された『地獄の辞典』*2の影響が大きい。
そういった魔術書(グリモワール)に記述された72柱発祥の伝承は大体次のとおりである。
彼らは、元々はソロモン王が都の建造のためにその魔力で使役していた、強大なる悪霊であった。
しかし、都の建造後、彼らを危険に思った使役主によって、真鍮の壺に封じられて「バビロンの穴」と呼ばれる湖に沈められた。
その後封印が解かれ、71柱は地獄へ還ったが、ベリアルだけは地上に残り、偶像を崇める人々を惑わすようになった。


【悪魔学においてのソロモン72柱】

72柱として扱われる悪魔はいずれも広大な領地と強壮な大軍勢を有する力強き地獄の王侯たちである。
一方で、召喚者には友好的であったり、キリストを訴えたりルターと論争したりしたというユーモラスな逸話があったりと、これ見よがしに恐ろしくあからさまな厄災をもたらす悪魔はむしろ少ない。
悪魔を召喚して使役する召喚術の対象として創作された存在だからとも言えるが、民間信仰に於いて親しまれていた他宗教の「神」や「精霊」を原型として考案されたためとする研究もある。

なお、並び順について「序列」という言い方をされるが、本来は敢えて言うなら出席番号みたいなニュアンスで、各魔神の強大さや地位に由来するものではないので、この言い方は正確とは言い難い。
でも、「(魔導書の)記載順」なんて味も素っ気もない正確なだけが取り柄の呼び方より、厨二的に威厳とロマン溢れる「序列」を使いたくなるのは仕方ないよね!
また、「72」という数字は12方位をさらに6等分した数で「全て」の方位を示しており、72柱は悪魔で……もといあくまで象徴的存在という説もあり、説明(伝承)が乏しい悪魔もわりといる。
文献ごとにユニットメンバーが替わっていることもよくあるし、脱退、再加入で数が変わっていることもよくある。
それぞれにシジル*3があるので、興味のある人はググってみよう。



以下は代表的な魔術書(グリモワール)『レメゲトン』での順序と、あれば補足

◆序列1~10位



◆序列11~20位



◆序列21~30位



◆序列31~40位



◆序列41~50位



◆序列51~60位



◆序列61~70位



◆序列71~72位





【サブカルチャーにおけるソロモン72柱】


ぶっちゃけ発祥からして既にサブカルという、その性質から72柱をモチーフにした創作物は多い。
キャラクター名に用いられるのはもちろん、魔法名やアイテム名に用いられることも多々ある。
ただ、如何せん72という数は多過ぎるのか、全てを網羅した作品はモチーフに起用された数に比するとごくわずか。
逆に各魔神モチーフの存在が完全なピンで登場することもあまりなく、その場合も大体アスタロトやベリアルといった72柱関係なくピン立ちできる大物が採用される。
が、バルバトスとかダンタリオンとか、そんなに突出して格が高い訳でもないのに妙に採用機会が多い連中もいる。

  • 『ガンダム』シリーズ
    ソロモン72柱の名を冠するモビルスーツが何体か存在する。
    作品によっては72柱の名を冠した登場人物もいる。
  • 原神
    作中における神々の名前に72柱の名前がそのまま、あるいは捩る形で付けられている。
    そんな命名規則の中で主人公のパートナーも72柱の名前を持っており、正体に秘密がありそうなことを示唆されている。
  • されど罪人は竜と踊る』シリーズ
    作中における魔法「咒式」の名称によく使われる。
  • 灼眼のシャナ
    作中に登場する「紅世の徒」たちの名前の元ネタ。能力も元ネタに関連した徒が大多数である。
  • Fate/Grand order
    作中世界におけるソロモン王が登場し、72柱は彼の使い魔たる「魔神柱」という形で登場する。
  • パズル&ドラゴンズ
    モンスターとして72柱の悪魔が何名か登場。
  • 『ブラックマトリクス+』
    72柱殆どの名前が出てくるゲーム。大半は技名だが、人名にも使われている。
  • 『遊戯王』シリーズ
    72柱の名を冠するモンスターが何体か存在する。
    特に『遊戯王R』のラスボス天馬夜行は、ガープやベリアル、ボティスといった悪魔をモチーフとしたモンスターを多数使用した。
    また、魔鍵ヌーベルズの様にソロモン72柱をモチーフにしたテーマも存在する。
  • 魔入りました!入間くん
    キャラクター名に使われている。(悪魔名)・○○という名前になっており、苗字に近い扱い。
  • メギド72
    登場する「メギド」のうち「祖メギド」に分類される者は72柱の名前を持ち、主人公はメギドを率いる「ソロモン王」の立場に就く。
    72柱をその他大勢的な扱いなしにちゃんとコンプリートしている希少な作品。
  • テイルズ オブ デスティニー2
    ボスの多くに72柱の悪魔の名が採用されている。
    中でも、一番有名なキャラクターが、かの「バルバトス・ゲーティア」。
  • クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ
    9周年イベントの「Diablo Historia」シリーズが、ソロモン72柱を題材としている。



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最終更新:2024年10月14日 21:02

*1 だが、「晩年のソロモン王はほとんどが異国人の700人の妻と300人の側女の影響で異教崇拝に傾倒するようになった」とされており、また「悪霊を使役していた」旨の風説は当時からあったとされているので、そこからこの設定が考え出されたのかもしれない。

*2 これは魔術書でもない、辞典形式の通俗的な読み物であったが、それゆえに掲載された俗信や伝承、或いは創作を広く世に広め得たとも言える。

*3 魔法陣のようなもの。

*4 『ミュンヘン降霊術手引書』では3本の角とされる。

*5 この為「サタン」の正体と考えられてもおり、神に反逆する赤い龍とも考えられた

*6 ただし、劇中で現存しているのは26体、実際に登場した数はさらに少ない。