SCP-2273

登録日:2019/01/10 Thu 00:39:51
更新日:2024/08/18 Sun 00:52:15
所要時間:約 12 分で読めます





SCP-2273は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスはEuclid。
項目名は『Major Alexei Belitrov, of the Red Army's 22nd Armored Infantry Division(アレクセイ・ベリトロフ少佐、赤軍第22装甲歩兵師団所属)』。


概要

SCP-2273は、非異常性のSCP-2273-1と、それを覆っている明らかにヤバゲな寄生生命体SCP-2273-2の総称である。

SCP-2273-1は、ソ連軍第22装甲歩兵師団に所属していたと主張するアレクセイ・ベリトロフ少佐である。
なお記録上このような装甲歩兵師団がソビエト・ロシアに存在した事実は存在しない。
他の事由も考慮して、ベリトロフ少佐は財団の基底世界とは異なる異次元人であると考えられている。
なおロシア語だけでなくドイツ語にも堪能である。
といっても、後述の寄生生命体SCP-2273-2のせいでベリトロフ少佐は普通の発話ができない。

SCP-2273-2はそのベリトロフ少佐を完全にカバーしている寄生生命体である。一応SCP-2273-1に対して敵意はない。
こいつの特性はこんな感じ。

  • 第2の外骨格を形成するキチン質の甲殻。
  • SCP-2273-2におよそ270度の視野とおよそ90度の両眼立体視能力を与える、複合レンズ状の目。
  • 軍事用森林パターン迷彩に似た土のような色の外見。
  • SCP-2273にそれ自体の重量に加えて1200キログラムの質量の運搬を可能にする、SCP-2273-1の筋肉・骨格器官と統合された高度な筋肉。
  • SCP-2273-2およびそのホストの栄養を得るために使われる、musca domesticaのものに似た口。
  • 軍隊の記章やバッジを表した入れ墨のような、色付きの瘢痕組織。
  • 広帯域での暗号化および非暗号化音声メッセージを送信可能な、完全に機能する有機無線トランシーバー。

最初のキチン質というだけで「みなまで言うな!サーカイトなんだろ?」とライダー先輩みたいなことをいいそうになるだろうが、
本報告書中では特に他にサーキック・カルト要素はなく、過去に関わってたかはともかくとして、現時点では無関係であると処理すべきであろう。
ベリトロフ少佐はそのトランシーバーからの発話を可能としているため、財団職員は意思疎通のためにAM無線受信機を用意している。

回収とインタビュー記録

そんなベリトロフ少佐だが、回収されたのは1989年10月13日、ウィスコンシン州ダナーの郊外で発生した地震と放射線スパイクの調査に財団が赴いたときであった。
ベリトロフ少佐は当初譫妄状態に陥っており、回収に際して抵抗はなかった。しかしインタビューでは敵意を見せる。
インタビューしたサイト17の人型異常体対応心理学者、フリードリヒ博士がロシア語に不慣れと見るやドイツ語で会話をしてくれるものの、
部下がアメリカ軍によって殺され、ひとり尋問を受けているという状況理解を伝える。

2度めのインタビュー時には、フリードリヒ博士は事前に許可を得て、レベル1研究者による報告書をベリトロフ少佐に提出。
これによってベリトロフ少佐はアメリカ軍でないことは理解したが、今度はカラスであると財団を糾弾した。
カラスとはベリトロフ少佐いわく「戦争当事者ではないがそれに群がる人たち」のことのようである。実際否定できねえ

その後、ベリトロフ少佐は「財団を信用はしないが協力する」と表明し、限られた情報のみ提供することに同意。
曰く、SCP-2273-2はベリトロフ少佐を放射線などから守るための『意思を持つ』防護服らしく、部下もみなそれを装着していたらしい。
これを装着すると五感が人間のものから遥かにグレードアップするため、指揮官・兵士としてたいへん助けになったという。
そのかわり脱げない。本当に申し訳ない
アメリカ軍はそんな部隊に興味津々だったようで、彼の部下の解体作業に取り組んだが、その後消失したという。
あとは長い年月ベリトロフ少佐は眠っており、そこを財団に起こされたというわけである。
それを作った『技術者』は、「太陽を苦手とするも自分たちがその装甲を纏うことはない」種族だったといい、
『彼らの戦争』でないために技術提供に留まったとベリトロフ少佐は推察している。

そしてベリトロフ少佐は、フリードリヒ博士との会話の中で、
「自分のかつていた世界といまいる世界は、似てこそいるが非なる世界である」という推論を投げかけている。

その後100回ほどのインタビューを終え、大分たったインタビューでは、ベリトロフ少佐はかつての記憶がプレイバックし、興奮しだした。
部下であった戦友たちは、ベリトロフ少佐と幼い頃から寝食をともにした仲間であった。


私は彼らを助けたかっただけなんだ、博士。どうして彼らと共に死ねなかったんだ?


フリードリヒ博士は、今や友となったベリトロフ少佐のストレス軽減をもとめ財団に限定的な社会的権利を付与するよう上申した。

LV-Zero「捲られたベール」シナリオ2217にともなうSCP指定解除とPoI指定

そうして1989年から2018年まで収容されていたベリトロフ少佐であったが、SCP-2217を巡る、
サーキック・カルトVS四団体連合の戦争に備えた財団のアンニュイ・プロトコルの施行を期に、
「まあこのくらいなら人々に知らせても大丈夫やろ」と判断された実体のSCP指定解除と開放の対象アノマリーのひとつに選出され、
財団の収容下を離れることとなる。同時に要注意人物(PoI)として認定された(PoI 2273/01)。

その後彼はロシア連邦政府に雇用を求めるも、「ええ…(困惑)」とその容姿を理由に拒絶された。人は見た目が9割
その後、テレビやラジオなどに散発的に出演した後、彼はMCFに、信用できる団体への雇用の斡旋を求め接触。
財団はベリトロフ少佐の消息をつかめなくなったが、東方時計仕掛正教会に主教として就職したようだ。
どんな自己分析ツールを使えばサーキックっぽい見た目のベリトロフ少佐がメカニトへの就職が適正となるんだろう…
しかし2021年以後、SCP-██████として指定された元サイト17の人型異常体対応心理学者、T・フリードリヒ博士とは書簡のやりとりをしていたらしい*1

その後T・フリードリヒ博士は死去。彼に送付された書簡はすべて、送信者に返送される。
すると何者からか財団に、MCFの郵便転送センターを通じて電話がかかってくる。
彼はT・フリードリヒ博士の安否を訊ね、彼の死を知ると近親者の連絡先情報を要請。
それを財団が機密情報として却下している。

ベリトロフ少佐はその後、MCFによって2034年に、「10年前に死去した」ことを公式に通知されるまで財団が消息を得ることはなかった。

以下はT・フリードリヒ博士への書簡から読み取れる内容である。
ベリトロフ少佐は、財団での生活をこそ恋しく思っていたようだ。
奇異な見た目の『英雄』にインタビューを迫るマスメディアと市井の人々。
かつてロシアのために戦った英雄は、ロシアの人々がアメリカの友人に電話をかけ、共にリビアを守っていることを、
美しいと思いつつ、自分の生きる世界ではないと感じていた。
もちろん異次元のロシアではあるが、似た歴史を辿った世界の末路に苦悩していたのである。
嫌々ながらの次元旅行者・ペニーのインチキ賭博に興じ、宇宙蟹と戯れた日々。
そして年寄りの戦士は、財団で出来た親友のサイボーグ少女ヴィクトリア(財団からSCP-191と推定されている)を懐かしんでいた。
彼の贖罪を兼ねた年の離れた親友関係。別にベリトロフ少佐がロリコンだったわけではない

そんな彼は、いつしか宗教に救いを見出すようになり、東方時計仕掛正教会に身を寄せた。
一方で、教会の人も含め財団職員たるT・フリードリヒ博士の健康を普通に神に祈ることから、
この時代には既に財団とメカニトの間に対立はなくなっているようである。
ペニーはすでに亡く、ヴィクトリアも老人より先に逝き、老人ももはや寄生生命体の体を動かせなくなりつつあった。
博士の死のあと、書簡はなくなったが、その後彼は世界平和のために宗教活動に専念したことが彼の備忘録から判明している。
そして彼もまたその長い長い人生を終え、祝福する女神の元へ旅立っていった。





現在、PoI 2273/01の遺体は、彼が人生最後の日々を送った東方時計仕掛正教会の墓地に埋葬されていると思われます。PoI 2273/01による情報漏洩が発生したという実質的な証拠はありません。このケースファイルを閉じることを推奨いたします。

— エージェント ラクシュミー・ターンボウ、財団記録・情報保安管理局





ちなみに死後、なぜか聖杯戦争で召喚されている。アイスヴァインちゃんもびっくり!
しかもアレクセイ・ベリトロフ少佐(アーチャー)、SCP-2273(バーサーカー)、ファーザー・アンヴィル(ルーラー)として3クラスで。


























余談

そんなアレクセイ・ベリトロフ少佐であるが、実は異次元人でない可能性が出てきている。
むしろSCP-2000の反復…そう、
GH-0によるリセットをその装甲の為に生き延びた生存者である可能性が浮上しているのである。

SCP-2932SCP-2511から財団が得ている知識にはいくつかの『共通する矛盾』が見られており、
これがSCP-2273のインタビューからも見られているようだ。
ちなみにSCP-2273、SCP-2932SCP-2511の3オブジェクトはいずれも報告書中、
なんらかの理由で情報が一部のみ開示されるに留まっているオブジェクトである。

  • SCP-2932:収容実体の完全な情報はいずれも不明。特にMal-Va-Gar-Ta-MorとFaeはほとんど全く情報がない。
  • SCP-2511:河童のインタビュー内容は財団によって検閲されている。
  • SCP-2273:インタビューのうちの大部分は報告書に掲載されていない。

そしてSCP-2273が「実は以前のリセットの生存者じゃないか説」が書かれているのは、
よりにもよってビッグフットの記事なのである。
そういや、2932はビッグフットが壊れたる神/MEKHANEの息子クソトカゲとピザが大好きなダエーバイトの尖兵の父親Adam El Asemや、
決して単一の呼称で呼べない森林地帯で出会う名辞災害を引き起こす土着実体Faeを収容する収容サイトであった。
モンゴルにワープした河童たちはビッグフットによって人間が滅ぼされていたと思いこんでいたと自白していた。

まさか、ベリトロフ少佐やその幼馴染に装甲手術を行った「生体技術に長けている、太陽を嫌う技術者」って…

いやいやまさか、ビッグフットは今となっては最近になって英語をようやく少々話せるようになったくらいの知能レベルしかないはずだし、
ベリトロフ少佐にその技術を提供するなどありえない話である。財団はちょっと妄想が激しいのでは…?





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最終更新:2024年08月18日 00:52

*1 LV-Zero「捲られたベール」シナリオ2217を期に、財団は一部の実体について、収容を継続しつつも市民権を与えたようである