ヘッドカノン(SCP Foundation)

登録日:2018/11/06 Tue 00:56:13
更新日:2024/12/30 Mon 18:45:26
所要時間:約 8 分で読めます






たとえばCK-クラス:再構築シナリオは幻覚誘発性を持つイナゴどもの襲来としたり、XK-クラス:世界終焉シナリオは次の大統領選挙で共和党が勝つことだとしても、それらは全く問題ありません。


ここでは、SCP Foundationにおいて頻繁に言及される『ヘッドカノン』について解説していこう。



一般的な意味合いでのカノン/ヘッドカノン

まずはSCPに関係しない、一般的な意味合いでのカノン/ヘッドカノンについて解説しておこう。

カノン(Canon)とは日本語に直せば『正典(せいてん)』を意味する言葉である。
そこから発展して、『公式設定/一次設定』のことを海外の創作界隈ではカノンと呼称するようになった。

これに対して、『脳内設定/二次設定』のことをヘッドカノン(Head Canon)と呼ぶ。
要するに「俺の頭の中(ヘッド)ではこれが正しい設定(カノン)なんだよ」という意味合いである。
もちろん創作者各々によって脳内設定が存在していていいのだが、中には「不特定多数に広く認められたヘッドカノン」というものも存在する。
例えば「博麗霊夢は年がら年中貧乏である」とか。
日本においてはこの手の「ファンに広く受け入れられた」ヘッドカノンが多い作品群として
東方Project』(博麗霊夢は貧乏である、アリス・マーガトロイドは何かと催眠を掛けられる、など)、『THE IDOLM@STER』(双葉杏はニート同然の生活をしている、輿水幸子はいじられ役である、など)、『VOCALOID』(初音ミクは長ネギを持っていてたびたび振り回す、KAITOはよく脱ぐ、など)、『ラブライブ!』、『艦隊これくしょん -艦これ-』(響は無表情のまま突拍子もない行為に出る、など)などがしばしば挙げられる。

本項目のヘッドカノン解説も、「各々が自分の世界観に於いてデフォルトにしている設定」と
「公式に箔付けされてはいないが、共通理解とされる設定」の2種類の意味合いで『ヘッドカノン』が使われることに留意して欲しい。

SCP創作におけるカノン/ヘッドカノン

共有されたヘッドカノン

SCP創作におけるヘッドカノンのあり方を語る前に、まずはSCPがどのような作品群なのかを知る必要があるだろう。
そもそもSCP作品群はシェアワールドと呼ばれるコンテンツの一つであり、これは「世界観設定を共有しながら作品を作って持ち寄ろうぜ」というものである。
ここで言うところの「世界観設定」こそがある種の(ここ重要)『カノン』である、というのが前節で述べたところである。

本項目を読んでいるような人には既にアニヲタ支部や他のウェブサイト(ニコニコ支部や5ch支部、ピク支部など)で
既にSCPというものについてディープに学んできた職員たちも多いだろうと思うのだが、
そういう場所で先輩職員と会話するとしばしば「カノンは存在しない」という言葉を聞かされることも多いはずである。

ここまで聞いて疑問が生まれるかもしれない。ある種の『カノン』を共有するのがシェアワールドなのに、「カノンは存在しない」とはどういうことなのか。

つまり、財団世界に一切の設定(=そう、前節で言うところの「不特定多数に広く認められたヘッドカノン」だ)が存在しない、というのは流石に言い過ぎな話だということだ。
それでも「カノンは存在しない」とされるのは、カノンに絶対はない=「自分の創作に都合の悪い設定は無視しても良い」ということを強調しているのである。
本部や各国支部であれば一応その後「サイトメンバーに受け入れられればね」というエクスキューズこそあるが、
他サイトでの創作にはもはや一切の成約もない。
だから「お前のそれ公式設定からかけ離れている!この同人イナゴめ!地雷表記しろ!」なんて言葉には何の説得力もない。
そもそも本部のお歴々からして平気で美少女化してるくらいだし。

だが、SCP財団では全部を全部「はいはい設定設定」と投げ捨ててしまうわけではない。
全員が全員、それぞれあまりにかけ離れている設定で創作してしまえば作品世界を組み立て、そしてその作品世界のクオリティを維持していくのは難しいのだ。
そこで本部や各国支部では「そうはならんやろ」というようなあまりに今まで受け入れてきた共通理解とかけ離れた作品はDownvote*1となり、
ある一定以上のちゃぶ台返しはそうそう起きにくくなっている。死なない/殺せないことが定番のクソトカゲがあっさり死んじゃうオブジェクトとかね。
クソトカゲを殺してるオブジェクトがないわけじゃないが、まあ要するに、そうした描写を描きたいのであれば、それに足るだけの十分な背景を用意しろということである。

ある程度は自由な解釈こそ許されるが、いくらかの事項は「共有されたヘッドカノン」として作品世界に影響を及ぼしている*2
財団世界に於ける根幹設定群はたいがいがこの『共有されたヘッドカノン』であり、
例えば記憶処理K-クラスシナリオなんかはヘッドカノンがある程度共有されている例である。
細かい部分ではやはり相違もあるが(Di Molte Vociに登場する『クラス-3G記憶処理』とか)。

個々の脳内におけるヘッドカノン

一方で、各個人は各SCP著作を読んで、独自に「これはこういうことなんだと思う」という自分なりの理解をし、
それを軸にSCPを語ったり創作したりすることが広く認められている。
そして作ったものについて、他者がまた同じく独自の解釈を述べることも認められている。
これが「カノンは存在しない」のもう一つの意味合いであり、SCPという創作に於ける『懐の広さ』としばしば表現されるものである。
雑にまとめるなら『解釈違い』。

例えば、SCP-1348SCP-8900-EXSCP-1973-JPは作者が自己の作品の解説を行っているが、
別に彼らの解説が絶対の『正解』ではない。
特にSCP-8900-EXについては、ニコニコ支部のとある職員が投稿した動画で「作者がこう言ってるんだからこれが正解」という断定をしたために
大荒れしてしまったことがあり、ヘッドカノンという概念についての理解はSCPを楽しむ上でぜひともしておきたいところである。

またこれを逆に活かして、画像及び意匠(=デザインのこと)がCCの対象外であるSCP-173を扱う作品を商業的に扱いたい場合に、
『無題2004』を全く連想できないデザインの彫刻を登場させ、SCP−173として扱うというゲームクリエイターもいた。
ただし、確かに法律的な部分はクリアできたものの、「コレジャナイ」扱いになったりと賛否両論だったようだが。



さて、ここまで読んでこられたアニヲタ支部職員の各位は次にこう言うだろう。

「……じゃあいままで読んできた『SCP解説』ってなんだよ?」



『解説』は「教科書」ではなく「副読本」

上述の通り、SCPの解釈は十人十色・千差万別であり、極論クソトカゲが『オレは実は一回刺されただけで死ぬぞオオ!』というのも
別に解釈としてぶっちゃけアリであり、それこそそれを『解釈』とぶっこいても(受け入れられるかは別として)認められる。

となると、「アニヲタ支部やニコニコ支部でオブジェクトについて解説しているページや動画ってどうなの?」という疑問が浮かぶだろう。
結論から言うと別に「正解じゃない」のである。いくらでも好きなこと書けるじゃない!やったねたえちゃん!記事がふえるよ!
…なんてワケは当然なく、こういった解説ページは往々にして、「記事文中から考察できる範疇にあるか?」が問われることになる。
SCP-096は実は美少女だったんだよ!」というのは別に個人の妄想は自由だが、
あくまで報告書では見た目についてしっかり記述されている以上、
「SCP解説」として『SCP-096=美少女』は認められない。体毛が一切無くて腕が不釣り合いに長いのが美少女の条件という人もいるかもしれないけど
その一線を超えて過剰な考察に走ったりとりあえず全部ゴルゴムや乾巧やディケイドの仕業にしてしまうようでは、
相談所で規約違反項目として削除されるのは論を待たないだろう。

しかしそれでも「あくまでひとつの可能性」でしかないのもまた事実である。
例えばSCP-2442はアニヲタ支部で載せている解釈としては「財団という組織は統合失調症患者の見ている妄想である」というものであるが、
別解釈として「財団を妄想の産物であると思い込ませようとしている人型実体」というものも存在する*3
アニヲタWikiにこう書いてある」と他解釈スレイヤーになってしまう前に、「他の解釈はネットに転がってないかな」と探してみたり、
5chやふたば、各種SNSや親しい友人などと議論を深めたり、本部や日本支部ディスカッションに目を通してみたり、
それこそ解説に違和感を覚えるならアニヲタWikiのコメント欄に異論を提示するなどして、積極的に議論を深めることが望ましい。

その中で納得がいくものが、あなたのヘッドカノンになるわけである。よろしくおねがいしますねこでした

ヘッドカノンそのものについて触れたオブジェクト

  • SCP-3500 - Instructions Unclear, Got Dick Stuck in Canon 🍆➡️📕(お前の指令でカノンがヤバい 🍆➡️📕)
『異なるヘッドカノンの世界だったはずの世界が1つの金科玉条のカノンに叩き潰される』という、
ある意味で財団創作に対する挑戦的なオブジェクトだが、その背景にはまさしく上で語られるような、
「ひとつのヘッドカノンが『正解』とされがちな風潮」に対する疑義とRoget氏いじりがテーマとなっている。

  • SCP-2159 - Head-"Kannon" (ヘッド・"カンノン")
SCP-3500と同様、「ひとつの解釈が他の解釈を否定してしまう」ことをネタとしたオブジェクト。

  • SCP-1132-J - Head-Cannons (ヘッド・カノン)
財団職員に発生する頭蓋の腫瘍がキャノン砲に変化していく現象系オブジェクト。
…とだけ書くとトマトが飛んできそうだが、なんとその状態の財団職員は
「自分のキャノン砲がスタンダードであるべき」と主張して他の影響者と議論を繰り広げるという、
ちゃんとヘッドカノンしてるジョークオブジェクトである。

財団施設内に不定期に現れる幽霊のオブジェクト。
詳しい解説をするとネタバレになるのであまり深くは言えないが、
「ヘッドカノン同士の違い」を題材に、見事なオチをつけた記事……とだけ記しておく。


余談

SCP-001は「何が本当の001なのか、そもそも本物のSCP-001は存在するのか」というヘッドカノンをネタにしたオブジェクトと言える。

ちなみに多くの作品では「財団の存在」は半ば前提のようになっているが、財団のない世界を描いた作品群もまた本部・日本支部に投稿されている。
財団の存在すら『カノンではない』のがSCP創作なのである。


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最終更新:2024年12月30日 18:45

*1 SCP財団では、サイトメンバーによる投票により低評価が一定以上になった記事は削除されることになっている

*2 もちろん中には「なっとる!やろがい!」とばりに生き残り、それまでのヘッドカノンを覆してしまう例も稀によくある

*3 余談だが、この解釈はアニヲタWikiのSCP−2442のコメント欄に見られる。