SCP-392

登録日: 2017/05/23 Tue 14:24:43
更新日:2024/06/26 Wed 03:50:51
所要時間:約 5 分で読めます




SCP-392は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトのひとつである。
オブジェクトクラスはSafe。つまり収容方法は既に確立されている。
項目名はちょっと長く、『A Plant Now Found in Site-103, and Formerly Found in the Households of Nobility』。
日本語訳は『昔は貴族の館で、今はサイト-103で見られる植物』である。
ぶっちゃけ項目名というより、所在地のメモに見えなくはない。


概要

このSCP-392は項目名からも分かる通り、現在はサイト-103で栽培されている植物で、
桃の木に似ている、というかどうやら「ダエーバイト文明の魔術で品種改良された桃の木」らしい。
ダエーバイト文明というのは財団世界において、かつてユーラシア一帯を席巻していたとある女権社会の文明であり、
サーキックメカニトと対立していたとされる。
今は滅びた文明だが、財団世界において復活する可能性がしばしば示唆されている。

で、この桃の木、桃の木のくせに桃は実らない。代わりに実るのは人間の男の頭。それも沢山である。
「うげえ、ダエーバイトってそんな趣味悪いのか」と思うかもしれないが、安心してくれ、
どうやらダエーバイトでも「お前なんでこんな植物作ったん?趣味悪いで?」となっているらしいので。
…何も安心できないって?ごめん。
この桃の木を作ったのはダエーバイトの女族長であるワク・ワクさん。
ゴ○リ「今日はなにをつくるの?」
ワク・ワク族長「今日はね、私の側室の野郎どもの顔が実る木をつくるよ!」
ワク氏族のワク・ワク族長は、どうも純粋なダエーワというよりは人間の血を若干引いている異端な氏族だったらしく、
それがこんなダエーバイト視点でも頭おかしい桃の木が氏族に受け継がれた原因であるということ、らしい。


顔の特徴

顔にはダエーワの側室を示す入れ墨が見られるという。
実る顔はみんなDNAは一致しており、同じ男の顔が実るというなんとも不気味な木。
ダエーバイト抜きにしてもホラーである。

しかも目の前に女性がいるとなんと目がその女性を追っかけはじめる。男の性なんですかね
声こそ出さないが、撫でられると嬉しいらしく、キスをされると舌を入れようとする。
なおこの特性を調べる実験で登場した女性はDクラスなのだが、
Dになるような何かをやらかしたとはいえ、こんな気持ち悪い植物にキスをさせられるのは少し可哀想である。

にしてもこの頭、たまってるんじゃないだろうか

ちなみにこの顔は摘み取ったり勝手に落ちたりするが、そうすると腐敗して中から種子がでてくる。
そして顔だった何かは種子の栄養となり、新たな木が生える。光景がどうみても気持ち悪くて草も生えない


歴史

ダエーバイト文明の情報は、財団が所有するSCP-140(未完の年代記)から読み取ることができる。
この年代記、使うごとに過去改変が起きているらしいが、そのかわりに(わりかし都合よく)それまでなかった情報が出現したりする。

今回このオブジェクトに関してダエーバイトの年代記に出現したのは『中国史』。
中国はかつてからダエーバイトと戦争をしていたらしい。
(夏王朝はメカニトであり、殷王朝はメカニトともサーキックとも違うがそれらに関係する宗教を信仰していたようだ)
早ければ戦国時代には中国の兵士はこの気持ち悪い木の種子をダエーバイトから略奪したらしく、
兵士たちはこの木を育てていたらしい。そういう趣味でもあったのか、とか思うかもしれないが、別にそうではなく、
どうも兵士たちはこの頭の皮を剥ぎ(グロい)上官に「俺、敵の大将首をとってやりましたよ!」とアピールに使っていたらしい。
…有効活用っぷりが凄まじい。

この栽培していた複数の氏族は後にどうやら歴代中国王朝で大出世を果たしており、
そのため「きっとこの木は高貴な氏族の象徴なんだな!」とみなされるようになった。
まあ実際出自を考えればだいたいあってる。
その氏族の中にはなんと隋王朝の皇帝の氏族もいた。

このオブジェクトが発見された最初の場所、つまり「貴族の館」をまだ紹介していなかった。
さっきから中国の話ばかりしてきたが、このオブジェクトが財団によって発見された最初の場所は、
中国ではなく、日本の桂離宮である。
隋王朝の皇帝のひとりである煬帝は、日本からの使者、スパイダーマ…じゃなかった、小野妹子にこの種を下賜した。
小野妹子はそれを持って帰り、朝廷に渡したのだろう。
小野妹子はこの種は貴族の家でのみ見られる繁栄の象徴であると主張した。

財団がこのオブジェクトを確保したのは1945年、第二次世界大戦後である。
第二次世界大戦中、日本は国家繁栄の儀式としてこのオブジェクトの植樹をしていたらしい。


首の利用

…さて、財団も中国兵士に習ってかなんなのか、「一応たくさん取れる首」ということで、役立てようとした。

財団はSCP-2733(頭入りキャビネット)というオブジェクトを有する。
これは思い浮かべた人の首が出現するキャビネットなのだが、
生きている人を思い浮かべると首がワープする(まあどういうことかわかりますね)という性質を示す。
一応キャビネット内にいる間は生きているのだが、その後キャビネットを閉じると首は行方不明となる。
実際悲劇が起きている。

これに対して財団は「よし、お前らSCP-392の首を思い浮かべようぜ!」ということを打ち出した。
SCP-2733はあの言っちゃいけないやつ赦されないやつと同じ500語コンテスト出展作ゆえ
正直性質が対してわからないのだが、多分首を思い浮かべないとなにかしら不都合でもあったんだろう。
とはいえ誰かを殺すわけにも行かず、これを使おうとしているようだ。
もっともまだうまくいくか確かめている最中だが。


余談

このオブジェクトを執筆したのは日本大好きMrWrongさんだったりする。
中国とダエーバイトとの歴史についてなのだから別に中国で発見されても良さそうだが、
おそらくはMrWrongさんの興味から、遣隋使と繋げたということなのだろう。

三桁ナンバーながらかなり後期に執筆されたため、SCP-2000番台っぽい。
むしろ500語コンテスト出展作であるSCP-2733のほうがよほど初期オブジェクトっぽい。

氏の趣味を考えるに『三才図会』の大食国(サラセン帝国)に生える「人面樹」や『西遊記(中国古典)』に出てくる万寿山の「人参果」或いは『シャー・ナーメ』のワクワク(倭国?)に生える「もの言う木」が元ネタと思われる。

追記・修正をお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-392 - A Plant Now Found in Site-103, and Formerly Found in the Households of Nobility
by MrWrong
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最終更新:2024年06月26日 03:50