カン/Khanだった人物サイクル(MtG)

登録日:2015/05/31 Sun 02:32:16
更新日:2024/07/16 Tue 13:51:13
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※この項目はMagic the Gatheringのタルキールブロックにおける重大なネタバレを含みます













俺は過去へ旅した。龍が死に絶える以前の過去へ・・・。
・・・そして歴史の潮目を変えた。


――――――サルカン・ヴォル









カン/Khanだった人物サイクルとは、サルカンによって歴史改変が行われる前の現代のタルキールでカンだった人物たちの歴史改変後の姿である。タルキールブロックの最終エキスパンション「タルキール龍紀伝」で登場。

サルカンは謎の声によって「扉」をくぐり、1280年前のタルキールにたどり着いた。
そこでニコル・ボーラスによって瀕死の重傷を負ったウギンを発見し、ゼンディカーで手に入れた面晶体を使って、ウギンを繭の中に保護した。
ウギンが死を免れたことによって、龍の嵐が止まないどころかかつてない激しさを増して、ドラゴンたちに更なる繁栄をもたらした。
その結果、古のカンらはドラゴンたちに敗北しタルキールの歴史も大きく変化した。
カンや氏族の存在は現代のタルキールではなかったことになったのである。
当然、かつて現代のタルキールでカンだった人物らの運命も大きく変わることとなる。
以下は、歴史が改変されたあとの現代のカンたちの姿である。

※事前に改変前の姿を読んでおくことを推奨します。




Anafenza, Kin-Tree Spirit / 族樹の精霊、アナフェンザ ()()
伝説のクリーチャー — スピリット(Spirit) 兵士(Soldier)
他のトークンでないクリーチャーが1体、あなたのコントロール下で戦場に出るたび、鼓舞1を行う。(あなたがコントロールするクリーチャーの中で最も小さいタフネスを持つクリーチャーを1体選び、それの上に+1/+1カウンターを1個置く。)
2/2

《先頭に立つもの、アナフェンザ》の歴史改変後の姿。
トークンでないクリーチャーが場に出る度に、自軍の一番タフネスが低いクリーチャーを強化する能力を持つ。

上昇値は低いものの、何のコストもなしに自軍クリーチャーが増えるだけで自分のクリーチャーを強化できるのは優秀。
ダブルシンボルなのが玉に瑕だが、2マナなので序盤に出しやすいのも自身の能力と非常に噛み合っている。

総じて白ウィニー向けのクリーチャーだが、スタンダードでは白ウィニー自体があまり強くないので、イマイチ活躍できてない。
モダンでは+1/+1カウンターと-1/-1カウンターの相殺ルールを利用し、なんと無限頑強コンボのキーカードとして活躍している。
出産の殻》がモダンで禁止されて以降下火だった無限頑強デッキを同エキスパンション内の《集合した中隊》とともに再興させた立役者でもある。
同じく無限頑強コンボのキーカードとなるメリーラと比較した場合、感染や-1/-1カウンターが置かれるのを永続的に防ぐという点ではあちらの方が上だが、自軍のクリーチャーを強化出来る分コンボパーツ以外でも活躍できるという点ではこちらが勝る。
特に無限頑強デッキではクリーチャーのP/Tが全体的に低めなので、その弱点をある程度補えるのは嬉しい。


なお、スピリットであることから勘付いた人も多いだろうが、彼女は改変後の世界で従兄弟兼部下のオレットを救うために禁じられた屍術を使ってしまい、処刑されてしまった。
しかし、彼女は自身の運命を呪うことなく、死後も氏族を守る「守護者」となった。
この際の高潔な立ち振る舞いとカードのふつくしいイラストで、一気にファンを増やしたんだとか。



Sidisi, Undead Vizier / アンデッドの大臣、シディシ (3)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー — ゾンビ(Zombie) ナーガ(Naga)
接死
濫用(このクリーチャーが戦場に出たとき、あなたはクリーチャーを1体生け贄に捧げてもよい。)
アンデッドの大臣、シディシがクリーチャーを1体濫用したとき、あなたはあなたのライブラリーからカードを1枚探してもよい。そうしたなら、それをあなたの手札に加え、その後あなたのライブラリーを切り直す。
4/6

《血の暴君、シディシ》の歴史改変後の姿。
接死と場に出た時自軍のクリーチャー一体を濫用することでライブラリーから好きなカードを一枚サーチする能力を持つ。
自分のクリーチャーを一体捧げなければならないコストはでかいが、状況に応じて好きなカードをなんでもサーチ出来る能力は強力。
特に歴史改変前の自身が主役となる【シディシ・ウィップ】では、役目を終えた《サテュロスの道探し》や改変前の自身が生成するトークンなど、濫用のコストには事欠かない。
登場してから、早速同デッキに採用されて結果を残している。

アンデッドであることからも分かるように、一度彼女は死亡している。
理由はシルムガル/Silumgarの命令を自分の利益になるように訳していたため処刑されたからである。しかし、彼女の力を買っていたシルムガルが彼女をアンデッドとして蘇らせた。
しかし、彼女はシルムガルに下剋上する気満々で、彼を倒すために自身の体内に様々な国の毒を集めている。



Surrak, the Hunt Caller / 狩猟の統率者、スーラク (2)()()
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 戦士(Warrior)
圧倒 ― あなたのターンの戦闘の開始時に、あなたがコントロールするクリーチャーのパワーの合計が8以上である場合、あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは速攻を得る。
5/4

《龍爪のスーラク》の歴史改変後の姿。
4マナ5/4と優秀なマナレシオで、自軍クリーチャーの合計パワーが8以上なら自軍クリーチャー1体に速攻を付与する能力を持つ。
合計パワー8というのは一見高そうに見えるが、自身のパワーが5なので意外とアッサリ達成できる。盤面が整っていれば自身に速攻付与も出来るので即効性もある。
4マナと比較的重くないマナコストも相まって、高いスペックに反して活躍できなかった改変前の自身の姿とはうって変わり、緑単信心や赤緑ドラゴンなどで大活躍している。
特に、ストーリーでも彼が仕えている《龍王アタルカ》とはアタルカの攻撃的な性質と相まって非常に相性が良い。

なお、歴史改変前は熊を殴り倒す程の強さだったスーラクだが、歴史改変で戦闘能力が落ちたかというとそんなことはなく、こちらの歴史では一撃でドラゴンを殴り倒している
……本当に人間かあんた。





「彼は――お前は、鐘叩き?」 彼は視線をズルゴの剣へと落とし、それが真実であることを知った。

その刃は鈍く、戦いのためのものではなく、巨大な金属の鐘を鳴らすためのものだった。サルカンが上空から見たあの人影が、ズルゴだった。


Zurgo Bellstriker / 鐘突きのズルゴ ()
伝説のクリーチャー — オーク(Orc) 戦士(Warrior)
鐘突きのズルゴでは、パワーが2以上のクリーチャーをブロックできない。
疾駆(1)(赤)(あなたはこの呪文を、これの疾駆コストで唱えてもよい。そうしたなら、これは速攻を得るとともに、次の終了ステップの開始時にこれを戦場からオーナーの手札に戻す。)
2/2

《兜砕きのズルゴ》の歴史改変後の姿。
1マナ2/2と非常に優秀なマナレシオと、パワー2以上のクリーチャーをブロックできないデメリット能力、そして疾駆を持つ極めて優秀な軽量クリーチャー。

あまりにもアンバランスだったP/Tはパワーが5も減少して非常にバランス良くなり、イラスト上の体格もスリムになった。職業は敵が攻めてきたら鐘を叩いて仲間に知らせる係の人になっている。
そこにはかつてカンだった男の面影は全くなく、当然その記憶も持たず日々の業務に励む姿に、サルカンも一気に復讐する気を失くしてしまったほどである。
かつては王として凄むイラストのカードもあったのが、新たな世界線では王であるコラガンの逆鱗に触れて逃げまわるイラストのカードが作られてしまった。
鐘突きそのものは敵襲を知らせる重要な役目であるのだが、傲慢な性格は変わっていないため、仲間には恵まれていないらしい。

ちなみに色違いで全く同一のコスト、パワー、タフネスを持つ伝説のクリーチャーに神河ブロックに登場した《今田家の猟犬、勇丸》が存在する。犬と同値……。

ストーリー上はさておき、1枚のカードとして見ると、見た目だけは凄くて実際は残念な改変前とはうって変って非常に強力。
確かに7点という打点は失ってしまったものの、上述の通りマナレシオは1マナ2/2と非常に優秀。
パワー2以上のクリーチャーをブロックできないデメリットはあるもののこのカードが採用されるアグロ系デッキでは対して気にならない。
さらに疾駆のおかげで、状況によってはすぐ相手を殴りに行ける器用さも持つ。

スタンダードでは、雷破の執政や炎跡のフェニックスとともに赤単アグロをトップメタにまで引き上げた功労者である。
最大の欠点は場に複数並べたいウィニークリーチャーなのに伝説のクリーチャーであることか。
しかし、王にならなかった方が活躍できると皮肉なものである。


ストーリー上での落ちぶれようと、カードでは大活躍というギャップは彼のタルキールブロック最ネタキャラという地位を確固たるものにしてしまった。
上述のように、赤単アグロ使いにとっては歓喜もののスペックなのだが、赤単アグロ使いの人たちでさえ歓喜する前に爆笑したらしい。
ちなみに(他のカンだった人物たちもそうだったが)伝説のクリーチャーであるのはかつて彼がカンだったころの名残であるが、それが最大の欠点というのはなんとも悲しい話である。

ちなみに開発者の方曰く、このカードのルール文章がシンプルなのは、もはやズルゴがカンでもなんでもない「ただのオークのおっさん」である点を強調するためだとか。だったら伝説のクリーチャーもはずしてやれよ。まあ伝説のクリーチャーだから許されるスぺックだが。

こうして公式からもネタキャラとして扱われてきたズルゴであったが……。

Zurgo and Ojutai / ズルゴとオジュタイ (2)()()()
伝説のクリーチャー — オーク(Orc) ドラゴン(Dragon)
飛行、速攻
このターンにこれが戦場に出たのであるかぎり、これは呪禁を持つ。
あなたがコントロールしている1体以上のドラゴン(Dragon)がプレイヤーやバトルのうち1つに戦闘ダメージを与えるたび、あなたのライブラリーの一番上にあるカード3枚を見る。そのうち1枚をあなたの手札に加え、残りをあなたのライブラリーの一番下望む順番で置く。あなたはそれらのドラゴンのうち1体を、オーナーの手札に戻してもよい。
4/4

なんと新ファイレクシアとの戦いのクライマックスである機械兵団の進軍にてファイレクシアに対抗する伝説クリーチャーサイクルの神話レア枠で龍王オジュタイとともに登場。タルキールがファイレクシアの脅威にさらされる中で派閥が違う二人がコンビを組み龍王オジュタイの背に乗り果敢に戦う姿が描写された。でも果敢は持ってない

上記でさんざんネタにされた新ズルゴだが、彼には運命再編前にはなかった隠された美点がいくつかあった。彼我の力量を的確に把握し、その事態を打開するのに適した者を見出す才能と、必要な時にはプライドを抑え込んででもその人ありと見込んだ相手に相手を説得する態度。
そしてこの事態を打開するには氏族がてんでばらばらで動くよりもひとまとまりで動いたほうがいいと察した彼は龍王の中で最も理知的で懐も深いオジュタイを訪ね説得。オジュタイのほうもズルゴの意見に理解を示し、共闘の証として彼が自分の背中に乗ることを許可。
タルキールに模範を示した彼らは迎撃成功の原動力となるのだった。





龍たちは生き延びてきた――いや、繁栄してきた。氏族もまた。

薬瓶砕きはその証拠だった。

別の時歴史では死の運命を迎えた彼女が、ここでは生きていた。

そこまで考えてサルカンは息を飲み、翼は羽ばたきを止めた。

もし薬瓶砕きの運命が変わっているなら、ズルゴの運命が変わっているなら、

そして龍王たちの運命もというなら、同じことは他の者にも同じく起こりうるだろう。

同じこともまた・・・ナーセットに。


Narset Transcendent / 卓絶のナーセット (2)()()
プレインズウォーカー — ナーセット(Narset)
[+1]:あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。それがクリーチャーでも土地でもないカードであるなら、あなたはそれを公開してあなたの手札に加えてもよい。
[-2]:このターン、あなたが次にあなたの手札からインスタント呪文かソーサリー呪文を唱えたとき、それは反復を得る。
[-9]:あなたは「あなたの対戦相手はクリーチャーでない呪文を唱えられない。」を持つ紋章を得る。
6

《悟った達人、ナーセット》の歴史改変後の姿。かつてカンだった人物サイクルでは唯一の混色である。
4マナに対して6という高い忠誠度が特徴。

1番目のプラス能力は、デッキトップを確認してクリーチャーと土地以外のカードなら手札に加える能力である。
不確定ではあるが、忠誠度を増やしながら手札を補充することが出来る。
青はクリーチャーよりも打消し呪文やドロースペルを多くデッキに入れることが多いので手札を増やせる確率は高い(ただし、土地も多く入れるので過信は禁物)。

2番目の小マイナス能力は、この能力を発動した後に唱えたソーサリー呪文かインスタント呪文に反復(手札から唱えた呪文を一度追放し、次の自分のターンにもう一度追放領域からマナコスト払わずに唱えることが出来る能力)を付与する能力。
一度唱えた呪文をもう一度マナコストなしで唱えることが出来るのは非常に強力。
同ブロック内の《宝船の巡航》に使うと1マナで6ドローできると考えれば、その恐ろしさが分かる。

奥義は、相手にクリーチャー以外の呪文を唱えることを禁止する紋章を与える能力。
この能力を使われたら、コントロールデッキやクリーチャー以外のパーツに頼るコンボデッキは投了ものである。
しかし、自身と相性がいいコントロールデッキをメタるとはいかがなものか。

登場当初は4マナに対して6という高い忠誠度や強力な能力で非常に注目を集めていた。
しかし、登場時の各環境ではそれほど活躍できてない。
主な原因は1番目の能力が不安定であることと、単体で盤面に触れる能力がないため、仕事せずに除去される可能性が高いからである。
1番目の能力は上述の通りコントロールデッキなら手札を増やせる確率は上がるが、土地も多く入るため、確実ではない。
メインとなる2番目の能力は非常に強力であるが、4マナ払ったあとで連続して呪文を唱えることは厳しい。
そのため、2番目の能力を唱えるのはこのカードを唱えた返しのターンになるが、相手に1ターンの猶予を与えるため除去される可能性が高い。

シングル価格は一時期1枚6千円代にも上ったが、現在は価格が1500円代まで暴落した。かつての《イニストラードの君主、ソリン》を思い出させる。
しかし、2番目の能力が強力であることには変わりなく、今のところはなんとヴィンテージの「エターナルブルー」でターン追加呪文を使いまわすのに使われてるんだとか・・・。


歴史改変前では灯に火が灯ることなく命を落とした彼女だったが、改変後の世界ではついに火が灯りプレインズウォーカーとなった。
歴史改変後のドラゴンが支配するタルキールに歓喜するも、同時に自分を覚えている人物がいないことに絶望するサルカン。
彼は、改変前に救うことを誓ったナーセットを探すもオジュタイ(旧ジェスカイ)氏族のテイガムからは彼女は死亡したと伝えられ、ウギンからも彼女は存在しないと告げられる。それでもサルカンは諦めずに彼女を探した。
そして、ついにウギンの峡谷でサルカンはナーセットに出会った。

ナーセットはサルカンのことを「覚えて」はいなかったが「知って」はいた。
彼女は知識を求めるあまり、古の書物からタルキール歴史改変の真実を知ってしまった。
サルカンの名もそこで知ったのである。
彼女がサルカンと出会ったのは更なる謎を求めてタルキール中を巡る旅の最中であった。
サルカンはそんな彼女の何よりも知識を求める姿は自分の知る「ナーセット」と同じであると知り、微笑んだ。

尚、ナーセットの灯の覚醒のきっかけは「師匠の龍王オジュタイが自身を氏族の始祖と騙って歴史の真実を隠していたと知り愕然とした」から。
しかしその後も歴史の探求を続けた結果「オジュタイが歴史を隠蔽したのは龍以外の生き物も悟りを学ぶ環境を作れるようにするためという彼なりの配慮だった」*1からと悟り、放浪中に再会した師匠オジュタイにそのことを告げるとオジュタイは満足そうにうなずき更なる精進に励むよう導きを感謝した彼女を激励した。
プレインズウォーカーに覚醒した経緯としては、信じていたものが丸々ひっくり返されるという点で彼女も相当の衝撃を受けて覚醒しているが、死別など直接的な別れなどが無い辺りは恵まれているといえるかもしれない。

後にラヴニカ3部作でラヴニカに呼び出されたPWの一人として再登場。ラヴニカの味方として戦慄衆などへ立ち向かった。
この時《覆いを割く者、ナーセット》としてカード化され、その強力な能力からアンコモンながら注目を集めた。
ラヴニカ後はイコリアなどにも登場している。




「アニヲタwikiをまた離れることは考えていないのか?」

サルカンは尋ねた。

「探検すべき多くの世界があるし、その全部を見ることすらできないくらいだ」

「いつか、そうすると思う」

肩越しに振り返ってナーセットは言った。

「だけど、このwikiにはまだ沢山の未作成の項目がある。今はまだ......私は、このwikiを追記・修正したい」

サルカンは微笑み、ツンドラの彼方へと目を向けた。遥か遠くに、龍たちが舞っていた。

「ああ。君が何を言いたいかは、よくわかっている」


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最終更新:2024年07月16日 13:51

*1 一方の狡猾と欺瞞と残忍の象徴ともいえる龍王シルムガルはかつてのスゥルタイ群の名残をゾンビ化させて徘徊させることで自分に反逆した者の末路を示して恐怖で統治している