相撲人大井光遠の妹、強力の語

登録日:2012/09/30(日) 06:46:59
更新日:2023/05/11 Thu 10:40:39
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「相撲人大井光遠の妹、強力の語」とは、『今昔物語集』巻二十三に載っている説話の1つ。

『宇治拾遺物語』にもほとんど同じ話が載っている。



昔々、甲斐の国に大井光遠という相撲取りがいました。背は低いけどガッシリした体型で、力が強い上に素早いという素晴らしい力士でした。
彼には、離れに住んでいる美人の妹がいました。


ある日、人に追われて逃げているが、1人で離れにいた妹に刀を押しあてて人質に取り、立て籠ってしまいました。

これを目撃した人は大慌て、兄光遠の家に走って行き、「大変だ!妹さんが立て籠り犯に人質に取られてしまったよ!」と教えてあげました。

しかし、光遠は何故か平気な顔をして、「なに、妹を人質に取れるのは、伝説の大力士薩摩の氏長くらいのものさ」なんて言って立ち上がろうともしません。

目撃者は不思議に思って、壁の隙間から男と妹の様子を見ることにしました。



時期は旧暦9月頃、妹は薄い綿の着物を一枚だけ着て、左手で恥ずかしそうに顔を覆い、右手で自分に刀を押しあてる男の腕を軽く掴んでいます。

男は、いかにもよく斬れそうな大きな刀を逆手に持ち、妹のお腹に押しあて、両足で妹をガッチリ捕まえています。どう見ても妹ピンチです。

ところが妹は、先ほどまで顔を隠していた左手で、すぐ近くに置いてあった竹製の矢を取って、手遊びをするように指で床に押しあて……


ボキィッ!


目撃者「……え?」
男  「……え?」

まるで腐った木を押しあてたかのように、節の部分を粉砕しました。


目撃者はやっと合点がいきました。
「なるほど、こりゃ光遠さんが慌てないわけだ。光遠さんが金槌使って、なんとか粉々にできるだろうものを、あの妹さんは素手で粉砕したよ。…立て籠った男も粉々にされちまうんじゃないかねえ」

男も似たようなことを考え、妹を置いて大慌てで逃げ出しました…が、追跡者に捕まり、光遠の元に連行されました。



光遠「お前はどうして、一旦は人質に取った俺の妹を置いて逃げたんだ?」

「普通の女だと思って人質に取ったのですが、片手で竹の矢を粉砕したのを見て、『こいつはやべぇ。俺の腕も同じ様に折り砕かれちまうgkbr』と思って逃げました…」

光遠「はっはっは!実はあの矢は、『もしも離れで一人でいるときに悪漢に襲われたら使うように。お前が砕いたように見えるから、相手がビビることうけあいだ』と可愛い妹のために用意しておいた細工物なのだ。
見事にひっかかったようだな。さて、お前をどうしてくれようか。」

男「貴方様は立派な相撲取りと聞いております。力だけでなくその優れた知恵…素晴らしいです!心を入れ替えますから、どうか私を弟子にしてください!!」

こうして心を入れ替えた男は光遠の弟子になり、力だけでなく知恵も回る立派な相撲取りになりました。
















.…「文字の色が変わっているから内容がすりかえられているんじゃないか.」ですって?
そんなことありませんよ

…「じゃあタイトルの『妹、強力』はなんなのか」?
……世の中には知らないままの方が幸せなことがあるというのに。本当はこういう話です




「普通の女だと思って人質に取ったのですが、片手で竹の矢を粉砕したのを見て、『こいつはやべぇ。俺の腕も同じ様に折り砕かれちまうgkbr』と思って逃げました…」

光遠「かっかっか!そうだな、もし妹を刺そうとしていたら、その腕を捻り上げられて、腕の骨が肩の骨を突き破っていただろうな。

だが、お前は幸運にも逃げ出したおかげで、そうならずにすんだ。これも何かの縁なのだろう。

この光遠でも、肘を取って腹を踏めば、お前を簡単に殺せるだろう。

だが妹は、俺二人分の強さだぞ。見た目は細くて普通の女なのに、俺がふざけて腕を掴むと、腕を掴み返してくるその握力だけで、手が痺れて離してしまう。

ああ、もし男に生まれたなら、敵う者などいない最強の男だっただろうに…残念なことに、女なんだよなあ…」


男はもう生きた心地がせず、泣く泣く言います。

「普通の女だと思って、こりゃいい人質だと思ったのですが…こんなにすごいお人だとは、存じ上げませんでした」

光遠「本来ならお前を殺すべきだろうが、妹を殺そうとして返り討ちに遭うはずだったお前が、賢明だったために逃げ出して命が助かったんだ。それをわざわざ殺すことはなかろう。
だがいいな?妹は、大きな鹿の角を膝に当てて、ボキッと枯木のように折る女だ。ましてお前など…言うまでもないよな?」
と言って、逃がしてやったそうです。

本当に力持ちの女だったと、語り伝えられているそうです。





この話は、強力譚という種類の、その名の通り力持ちに関する説話の1つなのだが…

アニヲタ的に解釈すると、可愛い妹を夢見るお兄ちゃんたちの幻想を竹の矢のように粉砕する恐ろしい話だとも考えられないだろうか。



妹萌えのお兄ちゃんたちを安心させるかもしれないネタバレ















妹は27・28歳である。
もしや行き遅r……ボキィッ!


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最終更新:2023年05月11日 10:40