湾岸ミッドナイト

登録日:2009/06/11(木) 18:35:46
更新日:2024/12/24 Tue 14:35:50
所要時間:約 5 分で読めます





首都高湾岸線――
地上最速の戦闘機達が集うそこに伝説のマシンがいる

L28改ツインターボ
S30 フェアレディZ

通称『悪魔のZ』


『湾岸ミッドナイト』は楠みちはる原作の漫画で、講談社の週刊ヤングマガジン(初期の数話は小学館のビッグコミックスピリッツ)*1に連載されていた。全42巻。
一旦連載を終了し、登場人物を刷新した続編『湾岸ミッドナイト C1ランナー』が連載された。全12巻。
後に『スピリッツ』より最終章と題し『銀灰のスピードスター』の連載。
更に月刊ヤングマガジンで2016年よりその続編にあたる『首都高SPL -銀灰のSPEEDSTER-』の連載を開始。
ただし登場人物が共通する・事実上『無印』最終章の後編となっている『C1』と異なり、『スピードスター』『SPL』はそれぞれ話としての繋がりはあまりないため、留意の上で購読されたし。


◆内容

首都高の公道での文字通りの命懸けのカーバトルを描いた、頭文字Dと並ぶ人気の公道レース漫画。
なお、頭文字Dとは掲載誌やアニメ版の制作陣、声優など多くの共通点が存在しており、アーケードゲーム『頭文字D THE ARCADE』でコラボした事もある。

内容に関しては毎回主人公が変わる群像劇
最初は悪魔のZ復活編まではアキオが主人公だが、以降は話の内容に対して主人公が変わり、アキオ達は別の視点から描かれている。
ただし、メインキャラのほとんどがZに運命を狂わされたといってもよく、アキオが主人公でない話でもZは主人公である(むしろラスボスかもしれないが)。
Zとブラックバードは話のたびに新たな改造を受けて進化する。そして敗れていった者たちは例え再起できそうな終わり方でも再登場することは基本的に無く、例外は『C1ランナー』が無印最後の章の続編であるためこの章のメンバーが続投している程度。あと何故か洸一って名前のヤツが多い

乗り手たちは勿論、彼らを支えるオヤジチューナーたちの熱い語りは必見。
途中にでる作者の解釈の仕方には考えさせられるものもある。


◆登場人物

メインキャラクター

走り屋

自分達が完全な違法行為をしている自覚は一応あるが、公道での暴走行為をやめられず繰り返す人々。
「事故って迷惑をかけないようにする」「自分が事故に巻き込まれないように車線をズラして走る」といった暗黙のルールもある。
明確にそういうのない人も出てきたが、それは明確に「こっちの世界基準でもアウト」と言い切られた。

  • 朝倉アキオ
CV:小栗旬
職業:高校3年生→フリーター
車:フェアレディZ31→S30
物語の主人公。
顔がよく女子からの人気もあり、親から借金して買ったZ31でナンパをしたりとチャラついていたが解体場で悪魔のZと出会い魅了される。
その入れ込みようは凄まじく、バイトばかりでダブってしまったりしても全く意に介さず(最終的に通学している描写自体が無くなった)、ガソリンスタンドとディスコのダブルワークでZの修理費と維持費を稼ぎ、Zの状態も基本的に自分で面倒を見ている。絵とセリフがコピペでいいから途中からディスコだけになった
Zだけでなく本人にも不思議な魅力と包容力があり、女性だけでなく他のライバルやチューナーのオッサンたちをも惹きつけている。
走ることも楽しいと思って走るわけではなく、常に自分たちの行いなどを考えながら走っており、考えなくなったら乗らないとすら言っている。
公道を超高速域で走ることができかつ仕事に融通をつけやすいこともあってか高木から仕事の手伝いを要請されることも多く、また時にはアキオからチューナー、果ては車に別の形で携わる人物*2に協力を申し出ることもある。
ここで様々な人物からクルマについて学んでいるため、事実上「クルマに熱意あるおっさん」のキャラクターたちにとっては彼らの夢の代行者たるZのドライバーだけではなく職としての後継者としても見られているフシもある。
自身のZを皮切りにブラックバードのポルシェの他、モンスターマシン編では80スープラ、ガレージACE編ではR32、幻のF1タービン編ではZ32など、メイン格を務める人物に助力したことで様々な車に携わっていくことになり、アキオ自身が「ブラックバードの仕上げに携わった男」として特別視されることも。
『C1ランナー』で直接の登場はなかったが、最後の最後にミッドナイトブルーのZが一瞬だけ走り去っていく。


  • 島達也/ブラックバード
CV:三木眞一郎
職業:大病院の御曹司の医者
車:ポルシェターボ930→964(北見チューン)
免許を取って以来ポルシェに乗り続け、10年程湾岸の帝王に君臨している「湾岸の黒い怪鳥」であり、宿敵。悪魔のZに乗っていた仲間を失ったという因縁がある。
Zが再び動き出して以降付け狙っていたが、単純にZに惹かれていることを自覚していく。
常に無表情で冷静に見えるが、内心はアツくアキオ相手に軽口を叩くことも。
仲間とツルんでいたころの行きつけの喫茶店があり、アキオ・レイナと再訪してからはそこによく訪れコーヒーを飲んでいる。
『C1ランナー』ではドイツへ二年ほど留学することに決まり車をノブに預けたが、一年二ヵ月後に更に延長することが決まったためドイツに愛車を送ってもらった。
なお、ブラックバードは自称。名乗ったのは一夜限りだったが、そのまま通り名として定着した。

アニメ版CVは元祖・藤原拓海でおなじみの人。業界を代表するクルママニアゆえか。


  • 秋川零奈
CV:すほうれいこ
職業:ファッションモデル
車:スカイラインGT-R R32(ヤマモトスピードのデモカー)
本作のヒロイン。北見にもアキオでなければレイナがZに選ばれていたといわしめている。後にアキオの幼馴染だったことが判明*3
車ぐらいしか興味がないため引っ込み思案と思われていたが、湾岸でZと出会い惹かれていきどんどん明るくなっていく。

アキオとZの後ろをついて行ければそれでいいと思っていたが、走り込むうちに500馬力のR32への不満が出始め、さらにRGOデモカーである800馬力のR33でZと走ったことでZの後ろではなく前を走りたいという思うようになった。
そんなレイナの思いと、Rを手掛けた山本の「レイナのことを思ってデチューンしたが本当はもっとパワーのある車にしたかった」という思いを見抜いた北見の手によってR32は600馬力に戻され、彼女は最高速ランナーとして走り始めた。

当初はZに惹かれたがアキオにも惹かれていき最後まで見届けたいと思うようになるが、仕事のため一年二ヵ月ほどアメリカへ行くことになった。
『C1ランナー』作中で一年二ヵ月経ってるのに出てきてねーのはどーゆーことだヨ


チューナー

車を改造して速くすることを生きがいにした人々。
多くのチューナーがプライベートや下働きで腕を上げ名が売れたあと、工場兼ショップを開店している。
だが多くの客は走り屋のような車を求めておらず、多くの走り屋もまたホンモノの車を理解することができず、チューナーたちは理想と現実との乖離で板挟みに合う。
そしてホンモノのチューナーたちは、現実を見て経営者としての道を往くうちにかつての情熱を失うか、理想だけを追い続けて店を失うかとなってしまった(理想を追うからこそ店を構えている山本や太田父ですら、登場最初期は明らかに本気でチューンするつもりを失っていた)。
そんな中に現れた『悪魔のZ』と『アキオ』は、夢と情熱を失ってしまった彼らに再び理想を追い求めようと勇気を与える存在となっていく。


  • 北見淳
CV:三宅健太
悪魔のZ製作者であり「地獄のチューナー」の異名を持つチューニング業界における伝説の男。
普段は「北見サイクル」の店主であり、近所の厨坊どもにとっては「何でも相談出来る良いおっちゃん」だが、ひとたびクルマの話になったりエンジンを触ると地獄のチューナーに逆戻りしてしまう。
自身の組み上げた悪魔のZを撃墜する(Zを更なる高みへと導く)ためにブラックバードのエンジンを組む。
アキオを庇うように大破炎上した悪魔のZを直してからはL型は二度と組まないと言い、事実上ブラックバード専属のようになっている。
Zに魅入られて工場も家族も失ってしまったが、それでも自分が一番幸せだと言い切る。その姿勢について島は「誰よりもメカに対して真摯だから」と解釈している。実際、物語序盤はブランクがあったであろうにもかかわらず、フェラーリ・テスタロッサのエンジンを悪魔のZに勝るとも劣らない完成度に仕上げるほどの手際を見せた。

北見サイクルはそれほど儲かってはいないようで、自己紹介の際に「自転車操業の自転車屋」とジョークを飛ばしたことがある。自己紹介するたび言ってそう


  • 高木優一
CV:立木文彦
ボディショップSUNDAY(のちにタカギボディワークスに名前変更)の社長であり、Zやブラックバードのボディワーク担当。
そのボディーワークは「芸術」の域に達しているが、ショップは割の良い外車専門になり、自分で板金をすることもなくなっていた。
Zのボディ修復を共にしてからはアキオとは師弟のような関係になっていて、アキオの前ではカッコつけたいのか高そうなスーツを着こなしやり手社長っぽく振舞うことも。
留美先生曰く「悪人面」だが元々は泣き虫コゾーだった。
車にダメージを与えるのが嫌という繊細な理由から運転免許を取得せず、敷地内で車を移動する際すらも手で押して動かす、本作のチューナーでは異色の履歴書持ちでもある*4
チューンドカーのボディワーク等は使っていない一角にあるガレージで行っており、助手が必要な際はアキオを呼ぶ。
『C1ランナー』でも登場。ブラックバードのボディを破損させてしまったノブに自分のバイト代で直して欲しいと預けられたが、払えるわけがないと呟いた。でも直した。


  • 山本和彦
CV:志村知幸
山本自動車(のちにヤマモトスピードファクトリーに名前を戻す)の社長であり、レイナのR32担当。
一般整備をメインとしてチューンはレイナのRを最後と考えていたが、レイナやアキオとの交流、北見からのエールを受けてチューンの世界に返り咲いた。 
見た目はヒゲを生やした優しそうなおじさんといった風貌で、初登場の頃は二人称が「君」など*5実際に気弱なおじさんといった感じの描写だった。
彼のショップで手掛けた車では客が一人も亡くなっていないことを北見が褒めているなど、チューニングに関してもそれなりに現実的な代物がメインのようだが、モンスターマシン編(ケイ編)で本格的にメインキャラになった際に豹変。高速道でもないのにフルアクセル走行を行い、スピードを出してガッちゃんをビビらせるなどむしろ作中きってのデンジャラスな人物だったことが判明した。
一方で北見がレイナのRに手を加えた際には「チューナーってのは自分が一番と思っているから面白くはない」と自分の気持ちを吐露したり、レイナのRのパワーをもっと上げることができるが、自分(と仲間たち)はそれをやっていいかわからなくなっているとまで言い切っている*6
レイナの32に対するチューニングの姿勢や前述の風貌をはじめとして一見常識人に見える*7が、その昔L型*8で初めて1万回転回したのは他でもないこの山本であるほど熱烈な男。


  • 大田和夫
CV:勝沼紀義
スピードファクトリーRGO代表で、最も成功したチューナーの一人と言われる。
ロータリーエンジンのチューニングに関しては天才的と評されたものの、やはりというべきか現在ではほぼ現場には出ずかつての情熱は冷めきっていた。RGOの若い従業員は雑誌の取材などでニコニコしている彼の姿しか知らないため、少しナメられている。
だがかつての腕は全く錆び付いておらず、旧友に頼み込まれ彼が久方振りに組んだロータリーは試乗した従業員たち全員を驚愕させた。以降は経緯に応じて社長自ら出陣することも増えていき、純粋に彼を慕ったり敬意を見せたりする登場人物も普通に見られるようになった。
ロータリーEgに性的興奮を覚えた経験があるらしい。くくくッ世界は広いナ
『C1ランナー』では中心人物となっている。
あと正式なデモカーがめちゃくちゃ目立つ色をしている。


  • 山中
CV:三戸耕三
スピードファクトリーRGO現場責任者。
経営に携わっていないためかまだスレてはない。
マサキのRX-7を製作したが、公道で通用しないと厳しく叱責され考え方を改め組み直しに。
出来上がったRX-7でマサキがZやブラックバードとのバトルに挑んだ際には助手席でブースト入力を行っていたが、限界域のバトルに耐えられずRX-7はブローしてしまう。
対抗心を刺激されたこともあって今度は自身が仕上げたRGOデモカーのR33を持ち出してブラックバードに挑むも、走り屋としては未熟なことから引き際を誤り撃墜される。
自身は無傷でありクラッシュしたR33で自走して一番近いランプを降りるも、そこでエンジンは絶命しボディも再起不能な大ダメージを受けており廃車を悟る。
そこに現れたブラックバードの前では強がって平静を装うも、いなくなると大田と山本の前では男泣きをしながら「修復できないか」と懇願した。
その後、リカコの登場もあってモブ化する。
後述の佐々木元(ガッちゃん)との口喧嘩には毎回勝つ。


  • 大田リカコ
CV:田中理恵
和夫の娘で、大学生だがチューニングも手伝っている。
幼少時にエンジンを一基バラしてしまうなど若くして才能もある(作中でもS15シルビアをRGOデモカー扱いで完成、章メインキャラとなるエイジのランエボⅤを首都高向けに再チューンとあっさり複数台仕上げている)が、生真面目でスレてもないためヤバさはないと言われる。
北見が悪魔のZから手を引いて以来、Zのオーバーホールを行った唯一のチューナー。以降「リカコスピードファクトリー」を自称してほぼ専属でZの整備を担当している。
『C1ランナー』でも引き続き登場。


  • 富永公
CV:千葉進歩
トミナガスピードの代表で、エンジンコントロールユニットのスペシャリスト。
それ以前にキャブレター(の噴射口であるジェット)の調整で鳴らしたことからジェッティングの富永と呼ばれ、現代ですらコンピュータ関係で彼に及ぶ人物はいない。
ショップのデモカーのセッティングには殆ど関わっていると言われる、陰の実力者。
だが以前セッティング用のROMを売り出し、コピーされるまでは想定していたが、コピーROMを扱う店の方が優れていると吹聴される憂き目に遭っている。
実はエンジンチューンの腕も一流なのだが、世間には大田のような超一流か腕も値段もそこそこの二流しか求められていない、さらには凝り性すぎて自分には向かないと自嘲している。
データ取りも行うため、電子系制御が一切ないZのチューニングにも関わっている。
同様のチューニングができる人物はいないため『C1ランナー』でもやはり続投。

スポーツモデルに電子制御が組み込まれることが一般的になりだした時期、原作連載当時のクルマ事情を反映したキャラクターでもある*9


  • 佐々木元
CV:高橋研二
車:トヨタ セルシオ UCF10
スピードショップマッハの代表で仲間内の愛称はガッちゃん。愛車はパープルに全塗装されたデカい修復歴のある初代セルシオ。
店の代表だが仕事はエアロの図面引きがメイン(いわゆるエアロ屋、現代で言うエアロパーツ専業ショップ)で、業務に関してはもっぱら奥さんが取り仕切っており、頭が上がらない様子。何故か夫婦揃ってパンチパーマ。
ビッグマウスで山本の運転する車の助手席に座れば叫んでばかり、その一方涙もろく、おだてられればすぐに気をよくするお調子者。山中にも愛称で呼ばれている。
エンジンチューンのセンスはなく運転技術も決して高くないが*10、独学でエアロを勉強し必死になって図面を引くことで磨かれたエアロパーツのセンスと空力性能は超一流で、今では大手メーカーがパクるほど。
チューナーとしての出番は序盤のみだが、賑やかし要員として準レギュラー化。
おチャラけた面が多いガッちゃんも北見のようにシリアスに語る場面はあり、高木とサシで話したときは「まちがいなく天才」と讃えつつも「お前は信用できない」と切り捨てている。
チューナーの中では珍しくスレていない。
実は後述するアーケード版で唯一「全車種一律で北見がチューン」に変更された際に降板しなかったチューナーでもある。あれをチューニングと呼んでいいのかは別。


◆主な登場車種

悪魔のZ

日産フェアレディZ S30型

所有者:朝倉アキオ
最高出力:600馬力〜800馬力
最大トルク:80キロ
搭載エンジン:日産 L28改(ターボ含め公認)
総排気量:3134cc
タービン:三菱製TD06→IHI製 RHC6 RACING「幻のF1タービン」
登録番号:横浜33 て 53-68
ボディカラー:ミッドナイトブルー
制作者:北見淳、高木優一、富永公、大田リカコ

アキオの前のオーナーは同姓同読名の朝倉晶夫。
乗り手を拒否するかのように事故をしてきた車。
アキオが乗り手になってからも5回事故を起こしたが、安さんのトラックと接触して大破炎上したのを最後に乗り手にケガをさせるような事故は起こしていない。またここでの大修復以降はアキオ以外のドライバーが運転してなんともなかった描写も複数回ある。
楠先生が描きたいテーマが明らかに変わったせいとか言わないように*11

作中の11年前に北見の手によってチューンされて恐るべきパワーとスピードを手に入れるが、それと引き換えにするかのように北見の工場は倒産、別の人の手に渡ってもZは事故を起こしてまた別の人の元にということを繰り返していくうちに、いつしかこの車には悪魔がついている、悪魔のZと呼ばれるようになった。
実は北見は自身がチューンする10年前に初遭遇しており、当時国内では手に入らないはずのL28とライトチューン仕様(キャブと排気系のみの変更)にもかかわらずズバ抜けた速さに一発で魅了されたり、北見が譲り受けるはずの三日前に事故ってZは大破しオーナーは意識不明の重体に陥るなど、その頃から既に悪魔の片鱗を見せていた。

北見によるとワンオフパーツはクランクシャフトしか存在せず、それ以外は市販品のパーツのみで組まれている*12
原動機制御装置も全てアナログで電子系制御を一切搭載しておらず、空調も搭載していない。
ただしボディは高木による魔改造がなされており、作中では更にルーフがドライカーボン化されワンオフのアンダーパネルも装着された。
加えてリカコの手によりオーバーホールされた際に潤滑系がドライサンプに変更されており、最大重量物であるエンジンの搭載位置を限界までに下げてある(ドライサンプに変更する以前もマウントを加工して20mm下げられていたが、そこから更に40mm下げたため合計は60mmもローマウント化されていることになる)。

そして何よりも走る姿が特徴的で、
―まるで狂おしく、身をよじる様―
と描かれている。
GT-Rなどの当時最新のスポーツカーに比べると何もかもアナログなことから、ジュラ紀の恐竜に例えられたこともある。

ミニカーやプラモなどで多数製品化もされているが、恐ろしいスペックの一方で外観に関しては一般的なチューニング仕様で、某とうふ屋ハチロクと違って特徴的な文字やロゴが無いこともあり、作品の版権許可を取っていない「悪魔のZ風」な製品も多い。
(身近なところではトミカプレミアムのフェアレディZがこれに該当。ただしここはドリームトミカで正規に『湾岸』の版権をとっている)

劇中ではさも当然あるように述べられているボディカラーの「ミッドナイトブルー」だが、現実には存在しない。またコミック表紙絵を見ても、ほぼ水色の時もあれば濃い青の時もあり明確に設定されていないため、登場する媒体によって色がコロコロ変わる。例としては、
  • アニメ版・アーケードゲーム『湾岸マキシ』3まで・スマホゲーム『ドリフトスピリッツ』内のコラボモデル:シアンがかったソリッドのブルー
  • 『湾岸マキシ』4以降・中村優一主演の実写版:紫がかったメタリックブルー
  • オートアート製1/18ミニカー・大鶴義丹主演の実写版:メタリックのダークブルー

余談だが作者の前作『シャコタン・ブギ』でも登場人物の一人「清水明(アキラ)」の愛車としてフェアレディZが登場したが、そっちの方ではオーナーの方が不運なせいで2回くらい大破していた*13


ブラックバード

ポルシェ911ターボ 964

所有者:島達也
最高出力:700馬力(条件次第では800馬力オーバー)、最新作では600馬力
制作者:北見淳、高木優一、富永公、キムラカーサービス社長(最初期のみ)

KC1巻にて悪魔のZと競った際、それまで愛車としていた930ターボのエンジンブローを喫したため新たに購入した964ターボ。マサキ編以降は大きなフォグランプが特徴のいわゆる「湾岸バンパー」を装備する。
得意先の店から危険なチューンを断られたため北見チューンを受け、以降北見が面倒を見ている。

ケイ編にてボディのヤレが発覚したことから高木が補強し、高木本人が「最高のボディになった」と言うほど素晴らしい車に仕上がっていた。しかし、城島編で道路を歩いていた酔っぱらいを避けようとした際に事故り、予想以上のダメージを負ったことを機にボディをフロア以外パイプフレーム化+外装パネルを全てカーボンに置き換える大改造に着手。引き換えに『車検取得不可能のためあと一年で廃車確定』という言わば余命宣告を受ける。後々はそんな設定なかったことにされて一年以上走っている*14
エンジンが後ろにあるポルシェでボディを軽量化したせいで重心が更に後ろに寄ってしまい、超高速域で前輪の接地感がなくなるなどZに引けを取らない危険でピーキーな車に仕上がっている。
医者の島が「(収入を)全部注ぎ込んでいる」というあたり、目玉が飛び出るほど金を掛けた車であることに間違いない。

『C1ランナー』ではノブが乗るが、その際にRGOで車体全体を銀色にラッピングされている。


白の32R


所有者:秋川零奈
最高出力:600馬力
制作者:山本和彦、北見淳(エンジンのみ)

当初はガンメタのGT-Rだったが、"白いクルマは事故りにくい"*15と山本が勝手に白に全塗装してしまった。
実際に全塗装の前に一回事故っている(原因はZを追いかけたレイナの無謀運転)。
Zやブラックバードと違い、彼等を追跡する(抜けなくても必ず背後に着ける事が出来る)為だけに特化している。
生存=追跡ということからかクロモリ製のロールケージを装着、ドア内部にもビッシリ補強材が入れられた結果車重がノーマルより100キロほど増していることが北見に見抜かれており、とにかくレイナの命を守るための山本の意思が散見される。最高速や馬力はレイナの1度目の事故後やや抑えられていたが、山本の本心を見抜いた北見の手によって600馬力という本来あるべきポテンシャルを引き出された。
彼女を撃墜(オト)せばZとブラックバードの挑戦権を得られるともされているが、彼女は現役の最高速ランナーであり、アキオや島先生に並ぶ事が出来る化け物でありまず太刀打ちすらできない。
実際、Zやブラックバード以外でレイナに張り合えたのは平本のR32と黒木のR33だけであるほか、R200CLUB編での描写を見る限りそもそもレイナR32自体も単体で「特に速いやつ」として知られている模様。
レイナがアメリカに発ってからはRGOで管理している。



◆ゲーム

バンナムからアーケードゲーム化されており、2024年現在最新作の「湾岸MIDNIGHT MAXIMUM TUNE 6RR PLUS」ではストーリーを「幻のF1タービン」編(80話)までクリアする*16ことで最大840馬力のチューニングが完了する。いち早くフルチューンしたければ8000円持ってゲーセンにレッツゴー。
ただし100話全クリで開放されるカスタマイズ要素もあるのでその点にも注意。
また100プレイ毎に車の色を変更できるカラーを一色貰える。好きなカラーを選べるわけではないのでそこは注意*17
4人対戦が出来るのでアツい。但しマナーを守って戦うように。
なお、ゲーム作品では大人の事情からイシダヨシアキのフェラーリ、かつてはホンダ車が登場していない(このためにメイン格人物を務める友也がインテグラ使ってる章自体が収録されなかったことも)等多々変更が見られる*18。準主役とも言えるポルシェを使用出来なかった時代はゲンバラ、RUF社の車両として登場させていた。
ゲンバラはともかくRUFは別に消さなくてよかっただろ、とは言われてしまっている
また制作スタッフ曰く「ある程度とはいえ挙動を実車寄りにしているため、高速走行にあまりにも向かないFF車の収録は現状無しのつもりでいる」とのこと。そのため先述したインテグラタイプRのみならずシビック*19、CR-X、プレリュードといったホンダ勢はもちろん、「実車通りの」カローラセダン、*20、セリカ、FTOといったFFスポーツカーはプレイアブル車にはいない。シビックが出てくる『頭文字D』『ナニワトモアレ』も一緒に読んでた人には残念
メーカー問題については後に5DXプラスでホンダ車、6でRUF車の差し替えでポルシェ車が参戦した。

車種についていろいろネガティブな話はしたが、そうは言っても現在は現筐体*21になって以降積極的に行われるようになった対戦バランス調整、そしてなにより非常に多い旧車収録数から「ゲーセンで遊べるデジタル自動車博物館」という面もある。『3DX+』あたりのごく一部の車種以外実用性はなかったのはなんだったんだと言いたくなるほどいい作品に育っている。
なんせ今の湾岸マキシって限定入手除いてもBMW2002ターボとかトヨタ2000GTとかケンメリGT-Rとか使えるし、年内~新年にはホンダ・S660選べるようになる見込みなんで…


家庭用にはGenkiからPS2、3用に発売されている*22。それぞれ難易度がかなり高く、PS2版はライバルのブースト(追い上げ)が尋常ではないほか敵車の走行マナーが園田とかいう作中基準でもアホカス扱いの人でなくとも極悪。PS3版はエンジン負荷を可視化するゲージが存在し、アクセル操作がラフだとエンジンがブローしてゲームオーバーになってしまう。ただ、2作品とも開発会社の原作への造詣がとても深いためプレイすると『湾岸』の世界にどっぷり入り込める。
余談だが、PS3版では悪魔のZの排気量を3096ccとモロに誤植してしまっている(正しくは3134cc)。さんざんパロディしといて設定すら覚えてねぇのかテメーら*23

◆実写版

Vシネマで複数回、映画で1度実写化されている。
Vシネマ版は脚本、演出、走行シーンのすべてが冗長でぶっちゃけヒドいほか、2以降は原作を大きく離れてもはやオリジナル作品と言ったほうがいい。褒めるところと言えば当時存在したチューニングショップ・SSシノハラが制作した本当にL28改ツインターボを搭載しているS30Zを使ったところくらい。
映画版は脚本を含めて映像作品としてしっかりしており、走行シーンの迫力・スピード感は十二分にある*24ほか、ド派手なクラッシュシーンは海外で撮影している。*25アキオ、島を演じる俳優陣も若々しい美形を揃えている。俺はかーなーり速い!

91年から制作された大鶴義丹が主演のシリーズに出てくるブラックバードは現存する。
新車で購入し33年間車検を通し続けているため、○○33(○内は管轄地、個人情報につき伏字)と、分類番号が2桁という歴史を感じさせる代物。
中身は930ターボがベースで、600馬力仕様に仕上がっている。流石にパイプフレーム化はされていないが、車のなかはロールケージ*26でジャングルジム状態である。

あとこの個体とは別に「ドイツの本社ファクトリーでチューニングしたエンジンを乗せた」という本物のブラックバードのモチーフが存在したのだが、その車のオーナーが自動車とは別の所で警察にご厄介になってしまい、2019年あたりを境に行方不明となっている。

一方のSSシノハラのS30はというと、こちらは全く音沙汰無し。今もどこかで走っているのか、眠っているのか、はたまた車としての役目を終えてしまったのか…


ちなみにこちらもあまり知られていないがアニメ版も存在する。
カットされた展開や登場キャラもまあまあ多く、細かい展開変更もあるが、こちらは原作ファンからは比較的好評(上の演者記載はこれのもの)。なにより『頭文字D Fourth Stage』のスタッフやCGスタジオが担当しただけあってクルマ描写はしっかりした映像になっている*27なぜか悪魔のZのL28サウンドがあっちで池田のZ33に使い回された


実際に悪魔のZを作って所持した資産家は存在したようだが、手放してしまったとのこと。作中ですら「古い車」扱いだったS30Zなだけに、もはやジュラ紀の恐竜というよりシーラカンスみたいな存在と化した今日ではよっぽど物好きでないと作ったところで維持は付き合いきれないのは間違いない。
エンジンだけであれば当時は割と簡単に作れた部類で、クランクは日産純正のLD28用を使い、各社から出ている89mmピストンを組み合わせればOK。
更にはツインターボでなくN/AならばこれもFJ20用ピストンがドンピシャで使えたという。
今ではそれらも廃盤だし、程度のいいL28のブロック自体も出てこなくなったので相当難しい部類に入ってしまってはいるが。
…ただし作劇上モデルとなった個体はそもそもS130Zらしい*28。この個体は今でも元気に走行会で走っているとのこと。


追記OK 修正OK 
OK Z――

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最終更新:2024年12月24日 14:35

*1 (『C1ランナー』単行本で楠先生から説明があり、当時のスピリッツ編集部と方針がうまく一致しなかったため移籍した、という趣旨のあとがきが収録されている

*2 幻のFC編のメイン格・城島への同乗や運転代行、はては悪魔のZの試乗提案が好例。もっとも、とくに理由がなかったアキオもこれで城島が教えたことで「クルマへの感想をはっきり言語化する」のを学んでいるのだが

*3 ただし、その頃のお互いの面識はない

*4 他の面々は原則的に免許を持っており、かつ北見以外の多くは走り屋と兼任している

*5 ただし流石に弟(異母弟)となるユウジ相手には「君」呼びを使っているシーンもある。この章は最終章1つ前

*6 実際にケイ編でその「安全優先で本来施せるチューンをしない」をやってしまったこともある

*7 作中でもこの理由から「山本だけはもっと合法的な前職についていた経験があるのでは」「あいつは大卒ではないか」とする推測を他メンバーが述べるシーンがあり、実際にメーカー系(nismo成立前の日産?)のレースメカニックだったことを最初期のエピソードで、大卒の新卒で自動車メーカーに就職したということを前述の「ユウジ編」で述べている

*8 悪魔のZのエンジンの同型機のこと。純正だとS130Z(2代目フェアレディZ)などに搭載。

*9 『頭文字D』、同じくヤンマガクルマ漫画の『ナニワトモアレ』と一緒に読むともっとわかりやすいが、当時はまだそこまでガチガチに電子化していない車種も普通に一線級にあった。後者で描写されるVTEC…自動可変バルブシステムの圧倒的性能の話ですら、今のホンダ車の「ECUとかが読み取って変えてくれる」ではなく「メカ的な機構で直接可変させる」のがあったレベルである。

*10 軽く10台は全損させたらしく、愛車のセルシオの修復歴を省みるにたぶんヘタクソ

*11 単行本で読み比べるとわかるが、初期はレースそのものが主題だった。人間ドラマがメインになったのは修復する話が出たもう少し後から

*12 この理由から「エンジンは海外向けの2代目Zの個体から移植したのではないか」とする説がある。これはL28エンジン目当てにS130をばらす場合、海外専売のグレードから取らないと吊るしの時点ではターボがついていないため

*13 速さだけを追い求める悪魔のZとは違い、祭りのヤグラをルーフに載せたりメルセデス・ベンツのフロントマスクをくっつけるなどのトンチキな改造を数々行うヤン車(もともと『湾岸』と比べればギャグ色の多い作品である)。それでもアキラはZを愛し本職の他にバイトまでして維持し、末期にはプロによるチューンも依頼していた

*14 「RE雨宮 Greddy6」がブラックバード同様にAZ-1のキャビンを残し前後を切断、パイプフレーム化して車検を取ったという実績はある。

*15 ジンクスとかではなく、「視認性が高ければそれだけで可能性を減らせるから」というもの

*16 厳密には一部5話構成のを除き10話で1章のうち、この章79話まで。途中で負けちゃった場合は失敗回数次第ではもう少し早い

*17 もっとも純正色の大半は最初に選べる色内にある

*18 イシダはバージョンアップごとに見直されるが「収録している中で比較的現行モデルに近い・フラッグシップモデルを担当している外車」に差し替え。現在稼働中の6RR+ではランボルギーニ・アヴェンタドールを使用。友也はストーリー収録がある場合日産・180SXに変更されていたが、現在は「CPU専用車種」という形で原作通りのインテグラタイプRに変更。

*19 阪神高速環状線がある以上「環状族どものお決まりのクルマ」はさすがにホンダへの配慮として諦めるべき、という理由もあるのかも?

*20 隠し車種のあれはFFのグレードにしかない5速MTにもかかわらず4WDのグレード扱いのため

*21 『4』より。現在では12年物の骨董品ゆえの問題…老朽化によるガタが来ている個体が珍しくない、HDDの容量がギリギリでバンナム側の新要素実装にも支障しているフシがあるなどがあり、結局2023年11月の全国大会決勝の時の開発運営メッセージで「次の大型アプデは新規筐体を予定している」と宣言された

*22 厳密には上述した『マキシ』の直前に稼働していた『湾岸ミッドナイト』『同R』から引き続き担当。

*23 Genkiは『首都高バトルシリーズ』の会社でもあるのだが、あちらのお約束要素の一つが「アキオ、『頭文字D』拓海のヤンマガコンビらしきライバルがいる」だったため。なお、グッさん……

*24 走行シーンの多くは未開通の区間で撮影された模様

*25 解体所での悪魔のZが2by2だったり、Zが事故る瞬間はランサー・セレステをS30風に改造したものに変更するなど、意地でもS30Zを潰さないための工夫が各所に見られる。前述のVシネ版では制作当時S30がそれほど希少ではなかったためか、遠慮なくぶつけて凹ませている。

*26 剛性強化用のパイプ。副次的に「キャビンが潰れるのを防止することで安全性を保つ」もある

*27 実車からのエンジン音・スキール音の収録、実在チューンショップからの助言を受けるなどもあちらと同一。ちなみにR32GT-Rのモデリングも、あっちの中里車の流用ではなくレイナたち使用メンバーのエアロのものを新規に起こしているとのこと

*28 ABR細木エンジニアリングが個人オーナー向けにチューンしたものが該当するとされる。北見のモデルもABR細木の代表の方では?とも