読書が苦手なあなたへ

話題のビジネス書と小説を紹介します

”もしドラ”的な「アイドル」プロデュース本

2019年に出版された書籍なので、やや古いものの、内容は今の時代にも応用できそうなのが、この1冊。

 

ももクロ非常識ビジネス学』(ワニブックス)/著・小島和宏

 

ももいろクローバーZは、言わずと知れた国民的女性アイドルグループなので、

ここでは特に説明しません。

 

筆者がこの本を読もう5年前に購入した理由は、ただ1つ。

 

「アイドルのプロデュースって、どうやんの?」

 

群雄割拠といわれる女性アイドルグループ市場で、

いかに差別化し、グループのブランディングをするのか。

 

BtoCビジネスにおいて、必要なマーケティング手法が学べるのではないかと考え、

手に取ったのです。

 

だって、アイドルなんだから、みんな若くてカワイイのは当たり前。

一体、何で差をつけて、ファンを獲得していくのだろう? と不思議じゃないですか。

 

 

ビジネス書を読むのに慣れている方は、おそらく2時間もかからず読めます。

1項目につき、4ページ程度で収まるように構成されており、

本を読むのが苦手な人でも、半日あれば読めそうです。

 

さて、内容について。

 

結論から言うと、

 

アイドルが売れるかどうかは、マネージャー(プロデューサー)の個性で決まる

 

と思いました。

 

この本には、ももクロの名物マネージャーである川上アキラ氏の行ってきた

企画ノウハウが詰まっていますが、属人性の高いアイデアばかり。

 

まず、ももクロがやらなかったこと」を中心に、

第1章ではこれまでの活動の概要を説明しています。

(ここは、川上さんが書いたっぽい感じがする)

 

【主な”やらない”一覧】

・握手会はやらない

・水着はNG

・メンバーが卒業しても補充しない

・テレビに出過ぎない

・総選挙はやらない

・恋愛禁止を全面に出さない

 

 

【①我々、凡人がこの本から学べること】

 

「やらないことを決める」ことの重要性。

 

 

これは、経営コンサルタントとして世界中から慕われるレジェンド、

ピーター・ドラッカーも言っている教えです。

 

ドラッカー先生は、こう残しています。

 

「どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が必要である。

唯一の問題は、何がその決定をするかである」

 

 

本書は、

「もしも、ドラッカーがアイドルをプロデュースしたら」

というタイトルでも通用する内容ですね。

 

さて、この「何をやらない」と決めるかが、重要かつ難しいポイント。

そして、決定者による価値観や個性がダイレクトに反映するともいえます。

 

実は、いろんなアイデアがあれど「やらないことを決めた」時点で、

AKB48乃木坂46をはじめとする秋元康氏のアイドル群と差別化が生まれているのです。

 

日本のメーカーが製造したテレビやエアコンのリモコンと、

Apple製品やdyson製品の潔いリモコンを比較するだけでわかりますよね?

 

だいたい多くの人は、差別化するといえば「追加していく」考え方をしてしまいます。

必要なボタンだけ残したAppledysonに、なれないんです。

 

それは、アンコンシャスバイアス(*1)が働き、業界に横たわっている常識を無意識に受け入れてしまっているから。

 

 

真面目に仕事をしている人ほど、これに陥っていると思います。

 

川上アキラ氏が、「非常識」なプロデュースを行えたのも、

ももクロが所属するタレント事務所のスターダストプロモーションが、

アイドル事業をやってこなかったからです。

 

つまり、ももクロは新規事業で、他に所属する有名な俳優たちが「本業」で稼いでいるため、「好き放題できた」と本には書かれています。

 

 

【②我々、凡人がこの本から学べること】

 

新規事業で儲けようと欲張らない

 

ももクロの人気は、川上アキラ氏のサブカル的なセンスに加え、

 

「大真面目にバカばかしいことをする」

 

ことにありました。

 

例えば、365日分のメンバー直筆コメント入りカレンダー(写真なし)を発売したり、

ただカワイイだけの写真は撮らない、日常づかいできないダサいグッズをつくるとか。

 

儲けようという欲目が働いていたら、「カワイイメンバーの写真を入れる」だろうし、

「日常で使えるセンスのいいグッズをつくる」わけですが、

 

そうなると、他のグループとの差が埋まっていき、どんどん競合として

自分から近づいていくことになります。

 

 

さらには、

 

2014年に日産スタジアムで開催された『桃神祭』は、

巨大な神社のセットをつくるのに総額5億円もかけたとか!

(しかも、そのセットは保管できなくて破棄したという・・・)

 

1回のイベントに巨額を投じることも、悪ふざけ感が演出されていて

「面白い」となるわけです。

 

雑誌や書籍のオファーも、面白さがない企画書はソッコーで却下されたそうなので、

徹底しています。

 

 

ももクロほどの人気があれば、雑誌も書籍も編集者が頭を下げ、

依頼が殺到しているはずです。

 

表紙をジャックすれば、宣伝にもなりますが、

 

「非常識なこと(=面白いこと)しか、しない」

 

という一貫した姿勢と、スターダストからの「赤字でなければいい」との判断が、

新規事業を成功させたといえます。

 

 

ここで疑問がわいてくるのは、

 

「じゃあ、その面白いことってどうやるの?」です。

 

それがわかれば、誰も苦労しないよ・・・、って話ですが、

だからこそ、非凡な人が書いた本を読んで勉強しているわけですよね。

 

 

私の考察ですが、川上アキラ氏は、ものすごくパンクでマイルドヤンキーな感覚の人

なんじゃないかと思います。

 

つまり、「〜しない」とすんなり業界の常識の逆張りができたのも、

パンク魂があればこそ。

 

言いなりにならない!

ジョーシキなんて覆してやる!

あっと驚かせてやる!

 

こういうのも、川上氏の思想から来ている。

 

そして、「メンバーはみんな実家から通勤」させていることや、

 

(第3章参照)

・メンバーの人生を考えて、長寿グループを目指す

・スタッフがタレント化し、「全員野球」で一致団結

 

というエピソードからも、マイルドヤンキー的な思想がムンムンします。

 

男性がアイドルをプロデュースし、人気が出る時って、

なぜか「悪ノリ」が目立つんですよね。

 

「悪ノリ」というか、「トンチキ」とでもいうのでしょうか。

 

ジャニーズも、嵐のデビュー時に裸にシースルーの衣装とか、

「SexyZone」って名前つけちゃうとか、

10歳以下の子どもだけ集めてつくられた「スノープリンス合唱団」とか。

 

 

でも、これって狙ってできるものじゃないんですよね。

 

例えば、消費者アンケート調査をしても

イカれてる!!」と騒ぎたいファンのニーズが、

 

調査結果に出てくるわけがないし、

 

「こういうの好きでしょ?」

 

と提示されることをファンは何よりも嫌います。

 

<プロデューサー自身の好みがトンガっている=実力>

 

ということでした。

 

 

【③我々、凡人がこの本から学べること】

 

アイドルのプロデュースをしたい人は、

 

 

とことん、自分の変態性を突きつめろ!

 

というのが、結論な気がします。

 

 

秋元康氏は、市場のニーズを上手にキャッチしているように見えますが、

実は、彼がやっているのは「思春期の再生産」をずっとしているのだと思います。

 

 

知人に中学校の教師になった男性がいます。

彼は、その理由についてこのように述べました。

 

「教師になれば、いつまでも青春を味わえる」

 

記憶が不確かなのですが、こんなことを言っていたのです。

つまり、

 

「自分は歳をとるし、学校は卒業したけれど、教師として生徒と過ごせば

青春のかけらを少しでも味わえる」

 

 

という意味です。

彼が生徒と青春したいわけではなく、

 

 

「青春してる場所」の近くに身を置くことで、

もう決して自分がその主人公になれないことも含めて「切ない」感じが、

たまらなく好きなのでしょう。

 

なにせ、仕事にしちゃうくらいだから。

私は、秋元氏の歌詞を読むたびに、彼の発言を思い出すのです。

 

特に、乃木坂と欅坂は、「男子高生が思い描く女子高生像」であり、

「おじさんが願う思春期の女の子像」を描いているからです。

 

最初は「よく、”男子禁制”とか書けるな」と、

 

女の子の目線を書けてすごい! さすがプロの作詞家!!

 

なんて思っていましたが、視点をぐるんっと180度回転させたら、

 

「ああ、そうか。こういう女の子がいて欲しいっていう”思春期厨”か」

と気づきました。

 

 

■まとめ■

・本書はフツーの会社員にはハードル高めなアイデアばかりだが、

 非凡な人の頭の中をのぞくことで「なんちゃって破天荒」にはなれる

 

・アイドルプロデュースをするなら「変態になれ」

 

・新規事業では稼ごうとしない方が「大化け」する

 

 

 

 

 

 

 

*1:※アンコンシャスバイアスは、知らず知らずに個人の意識に刷り込まれる価値観を指します。