「HEROMAN」第23話「SORTIE」 - 抑えた「音」が紡ぎだす極上のエモーション
いよいよ、ラストバトル編へと突入し、尋常じゃないキワキワの緊迫感と、胸を熱く滾らせるドキドキ感に溢れる「HEROMAN」。
その最後の戦いへの導入部となる第23話「SORTIE」がこれまた素晴らしいエピソードで、ハートとエモーションをガッチリと掴まれてしまったので、拙文ながらその感想文をば。
自分が触れておきたいのは、このエピソードにおいて印象的だったBGMや台詞といった「音」の使いかた。その辺りについて、今回はアレやコレやと書いてみたいと思います。
■「SORTIE」劇中での抑えたBGMの使い方
ダイナミックでスピーディーかつデティールの細かいストーリー展開や、カッコ良くてチャーミングな愛すべきキャラクターたちがファンの心を鷲掴みにしてくれる「HEROMAN」ですが、劇中における「音楽」もこのアニメを構成する非常に魅力的な要素の一つであると思います。ガールズ・メタル・ダンス・バンド「METALCHICKS」を起用したメインテーマの他にも、ロックやメタル、パンク、テクノやヒップホップといったジャンルの境界線を縦横無尽にクロスオーヴァーした音楽がBGMとして使用され、「HEROMAN」というアニメのイメージを作り上げています。
■音楽ファンにもオススメしたいテレビアニメ! - 「HEROMAN」の劇中音楽について
ロックミュージシャンのイメージをデザインに盛り込んだキャラクター、ギターを手に侵略者たちに戦いを挑むストーリー展開…といった要素を見てみても、「HEROMAN」というアニメに「音楽」は欠かせないものであるという印象を受けるのですが、こうしたBGMの数々もやはり、ロック・ミュージックが持つエネルギッシュな高揚感に満ちていて、それらは問答無用で視聴者の聴覚的なフィーリングを刺激し、「HEROMAN」をより魅力的な作品へと昇華させてくれます。
そんな「音楽」が23話の「SORTIE」では、非常に抑えた使われ方をしていたように思うのです。
これまでのエピソードが全て線で繋がり、最大最後の決戦に向けて一気に物語が進行をした前半から、ジョーイがリナに会いに行き、戦うための「決意」を胸に戦場へと向かうクライマックスまで…これまでのエピソードの数々に比べると、BGMの使用頻度は少なく、使われる音楽もモノトーンでセンチメンタルな曲調のものが使われている。

NIAの輸送機の中で、台詞や効果音をカットした画面の中を、モノトーンで静かな曲が淡々と流れる終盤のシークエンスなんかは特に印象的でしたよね。
こうした音のイメージから伝わる緊張感、そして、ヒーローマンと共に最後の戦いへと挑むジョーイのエモーション。
抑えた音楽の使い方と、これまでのカッコいいロック・ミュージックとのコントラストも効いていて、とにかくストーリーに引き込まれてしまう演出法です。
この「SORTIE」における特徴的なBGMと音の使い方、中でもそれが特に印象的だったのは、やはりジョーイとリナの「お別れ」のシーンだったかな、と。
■ジョーイとリナの別れのシークエンスでの「音」
スクラッグとの戦いを前に、リナの元を訪れるジョーイ。
ここでも、やはりBGMや効果音は無く、それでいて、どーしょーもない程のセンチメンタルが観る者に伝わってくるという名シーン。
リナとジョーイ。お互いがお互いを思いやるからこそ、少しずつチグハグになっていった感情のズレが「お別れ」の場面で遂に噴出してしまうという感傷的でエモーションに満ちた場面ですが、ここでも台詞以外はほぼ無音なんですよね。
これまでの賑々しい音楽や音の使い方とは明らかにデティールが異なる、この静穏な「音」の使い方はとにかく印象的です。

リナとの最後のやり取りも、ひたすら胸を締め付けられるようなエモーションに満ちていましたが、ここでもやはり効果的なイメージを画面に与えていたのが「音」。
リナに送ったジョーイのメッセージ。ヘリの爆音にかき消されるその声は、このエピソードの中でも屈指の美しく、切なく、強烈な印象を持って、観る者の感情を揺さぶり、ハートの深い部分まで突き刺さったことと思います。
ストイックでモノトーンなBGMや効果音の使い方、そして、届かなかった「伝えたいこと」…。ドラマティックな要素をエピソード内に与えるのに、「音」は非常に重要なニュアンスを含んでいます。
もう、こういう「音」を一つとってみても、非常に印象的かつエモーショナルな使われ方がされているのが「HEROMAN」。キャラクターやシナリオを盛り立てる、そのセンス抜群の使い方を見ていると、やっぱり、このアニメ作品において、音や音楽っていうのは大きな魅力の一つなのだな、と改めて思った次第です。
■敵地に赴くジョーイとヒーローマン! そこで流れた音楽は…
と言っても、「SORTIE」において音楽や音が感傷的なイマジネーションのためだけに使われていたわけではありません。切なさや緊張感を演出していたのが「音」ならば、ジョーイたちの戦いに希望を託していたのも、やはり「音」!
輸送機から降下しようとするジョーイとヒーローマン。その時に流れていたBGMが…。
これですよね! この曲のインストゥメンタル・アレンジ・ヴァージョン。
「HEROMAN」のBGMの中でも、西海岸のメロコア調で思いっきり疾走感に溢れたナンバー。テレビ放送の開始前から、PVの映像なんかに使われてきた曲で、ファンにとっても特別な一曲です。
そして、この曲が劇中で使われる時は…これまたいつだって特別な時でした。異星人のボスであるゴゴールを撃破した時、そして、ドクター・ミナミ操るMR-1を倒した時…ジョーイとヒーローマンが圧倒的に不利な状況を覆して強大な悪の力を打ち負かした時、この曲は勝利のファンファーレのように、ジョーイやヒーローマン、そして仲間たちの勝利を祝福してくれました。

そして、この場面でこの曲が使われた意味ですよね。この曲から湧き上がるイメージ…勝利への希望とジョーイとヒーローマンの間にある強固な信頼感。それがあるからこそ、この厳しい戦いに対しても、私たちファンはジョーイたちを信用できる。心の底から、応援できる。個人的に、「SALTY」というエピソードにおいて、使われた最後のBGMが「この曲」だったことには強い安心感を覚えました。
希望を託されたBGMに乗って、スクラッグたちの元に乗り込むジョーイとヒーローマン。果たして、ジョーイはスクラッグたちとの最後の死闘に打ち勝つことができるのか? そして、愛する人たちの元に無事に帰り、リナに届かなかった言葉をもう一度伝えることができるのか?
本当に、もうシンプル極まりない言葉しか出てこないんですが…頑張れ、ジョーイ! 負けないで、ヒーローマン!
■まとめ
BGMや台詞、効果音といった「音」の使い方が非常に印象的だったエピソード「SALTY」。自分なんかは、もう見ていて音と映像にグルングルン感情を刺激されてしまいました。本当に、本当に、「HEROMAN」には感情を揺さぶられっ放しです!
■おまけ

フルアーマー・ヒーローマン…めちゃくちゃ、カッコいいっす!!
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