大前研一が語るアベノミクスが失敗する理由と対策が秀逸!
大前研一氏が2014年の世界の経済の総括と今後の見通し、並びに日本での対策を話した動画が非常に参考になったので、ここにまとめてみました。私と考えが違う個所もありますが、特に経済対策については是非国で実施してほしい内容です。
アベノミクスは成功するのか?
アベノミクスは、安倍総理の経済参与である本田氏、浜田氏とノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンらによる発案だが、彼らは日本の経済の実態を理解していない。アベノミクスは、あくまで20世紀型の経済対策である。
20世紀型の経済対策は、3つしかない。1.金融政策 2.財政政策 3.成長戦略である。現在の日本の状況は過去の経済史上初めての現象の為、これらは効果を発揮しない。特に、円安効果は薄く、世界中で自国通貨が安くなって喜ぶのは日本と韓国だけである。現在の1ドル120円はデメリットの方が大きい。
日本の問題点は、低欲望社会にある
今までの経済の常識では、金利が5%を切ると国民は喜んで金を借りたのだが、日本では金利1.5%でも誰も借りない。特に住宅需要のある30代は低成長社会で育ったために消費意欲が無い。日銀がどんなに紙幣を供給しても借りる人がいない為に、銀行に貸し出しできない金が100兆円以上ねむっている。
また、大企業の社長も多くはサラリーマン社長で事業戦略に大局観もポリシーもなく、内部留保がどんどん積み上がっていくだけ。企業の預金は233兆円、内部留保300兆円(うち半分が預金)となり、個人も資産1600兆円のうち半分が預金である。
なぜ低欲望社会になったのか?
失われた10年の間に全ての世代で可処分所得が減っている。そのうち30%を預金にまわしているので金を使えない、日本人は世界一資産がありながらも、世界一老後に不安を抱えている民族である。持ち家比率90%以上、且つ死亡時に2千万円の預金を持っている。その結果、最後の10年で、贅沢三昧のやけっぱち消費が起こる。
アベノミクスの現状
消費者物価指数、実質賃金共に落ちている。雇用は非正規は123万人増えたのに対し、正規が22万人減少している。賃金は年収1千万円以上の人が14万人増え、2百万円以下の人が20万人増えたために平均値が下がった。
購買力はドル換算で30%落ちている。これは輸入国日本としては、生活に悪影響が出る。GDPも中国との差が2.2倍に広がり、人口8千万人のドイツに追い越されそうな状態である。この20年間GDPが伸びていないのは日本だけだ。
アベノミクスの見通し
- 円安になっても工場は日本に戻ってこない。その理由は、既に海外で大規模工場を建設してしまっていることに加え、日本ではブルーカラー人材の確保が難しい。
- 年金基金から日本株に30兆円突っ込んだために、現在は株高になっているが、日本人は資産を株式で運用していない為に、個人消費を活性化できない。アメリカ人は資産の85%を株などで運用しているので、株価の上昇が景気に影響を与える。また、企業は人件費を削減した方が株価が上がるため、株高が最終的に雇用を支えることもない。
- 成長戦略も、実際は時間がかかる為、即効性はない。レーガンやサッチャーも同様の成長戦略の効果が出るまでに15年かかっている。また、公共事業を増やしても、人手が足りないばかりか、逆に資材の高騰を招いただけだった。
- 地方創生を政治理念に掲げているのは日本だけで、この理由は地方に票がゆがんでいるからである。高度成長期はバラマキで地方経済が潤ったが、基本的に経済対策は都市部でしか効果が出ない。地方は国家ではなく独自戦略で伸ばすしかない。
2014年の世界経済はどうだったか?
- 2014年は、国家の定義が問われた年で、独立運動はじめイスラム国の台頭など、今までの国家の定義が覆されつつある。
- 原油価格は、サウジが減産に反対し大幅に下落した。これはアメリカのシェールガスに対する警戒で、サウジが世界で一番生産コストが安い。サウジ2ドル/バレルに対し、ブラジルは100ドル/バレル、ベネズエラや米国のシェールで50ドル/バレルとなり、結果的にロシアやブラジルのような石油依存度が高い国が打撃を受けることとなった。
- 中国は7%の経済成長を維持できずに住宅価格が暴落し景気低迷が続く。
- ヨーロッパも日本もデフレのため、唯一景気の良いアメリカへ世界のマネーは向かっていく。ただし、アメリカの問題点は自国の企業がグローバル化し、タックスヘイブンを活用されて課税できていない。また富裕層が国外で資産を運用するために、同じように課税できていない。よって経済は好調だが、国家財政は厳しいままである。経済についてはドル高によるアメリカの独り勝ちが続く。
日本はどうなるのか?
日本に残された道は、増税か歳出削減だが、日本の歳費は56%が社会保障と国債のため、残りを削るとすると地方交付税や文教予算が対象となる。4%削るだけでも、学費が一気に上がったりと大出血になる。ギリシャのように40%削減となると警察官が半数になるなど、日本人は歳出削減に耐えられないのではないだろうか。よって、増税だが、消費税で20%は必要になる。それ以外の道はデフォルトかハイパーインフレである。
デフォルトやハイパーインフレはいつ起こってもおかしくない。トリガーとなりそうなのは以下の3つである。
デフォルトやハイパーインフレの影響と対策
- 年金受給者: 最も影響を受ける人達。事実上の年金額が僅かとなり生活に困窮する。対策は、キャッシュを生む資産(不動産や毎日必要なものを作っている会社の株式)を持つこと。
- 若い世代: 能力のある人は必ず給与が上がる為、最も影響が少ない。個人で稼ぐ力をつけておいたり、借金をして住宅などの不動産を購入しておくとよい。また、どんなに少額であろうと資産は分散し、外国語を学んでおくと良い。
- 企業: 現金資産を投資などに振り分ける(不動産や優良な会社の買収資金など)国内需要は縮むが、無形の消費に力を注ぐと良い。
政府がデフォルトやハイパーインフレを防ぐために出来ること
- 統治機構を変える(道州制にして、借金の半分を国が持ち、残りの半分を地方が持った上で、地方が自主再建する)
- 子供を増やすことに優遇処置をとる。また、若い人がいないと借金を返す人がいなくなるため、移民は必須。
- 税金を使わない景気対策
日本に必要なのは心理経済学(マネーサプライや金利ではなく、世界で初めて国民の心理が経済に影響を与えるもの)アベノミクス初期に景気が上向いたのは、この心理経済学によるところが大きい。
税金を使わない景気対策を一つだけ挙げるとするならば、都市部の容積率を2倍にすること
東京23区の容積率136%(山手線内の容積率は236%)に比べ、パリは350%、NYのアッパーイーストは631%、ミッドタウンは1421%である。
都市部の容積率を2倍にすると建築ラッシュと賃料などによる富が発生する。その額1600兆円。現在の容積率は国交省の役人が勝手に決めており、何の科学的根拠もないため、2倍にしても問題はない。ただし、日照権はなくなる。世界で日照権があるのは日本と韓国だけで、これは何年も前に共産党が作った制度である。このように、金脈は都市にあるのだ。
地方再生はどうすれば良いのか?
地方創生には3つのやり方がある。
日本には、イタリアの都市国家型が合っている。イタリアでは、1500の都市がこのモデルで成り立っており、社員15名以下の会社が一つの街に集まり、デザインと価格決定力で世界と戦っている。日本のように地方に独自の技術が根付いている場合はやり易いのではないだろうか。
所感
私は、デフォルトやハイパーインフレになる前に韓国のようにIMFによる緊縮財政が実施されると思う。何れにしても最終的に大前氏の予測と似たような状況になる為、対策についてはその通りだと思う。
また、都市部の容積率倍増で1600兆円を生み出せるのであれば、すぐにでも対応してほしいと思うが、多分利権でがんじがらめなんだろう。もし実現すれば、私の考えるエネルギーによる再生よりも手っ取り早い。
アベノミクスへの疑問について、高橋洋一が圧巻の回答! - 自由を求めて、世界を周る
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