旅レポ
ブッキング・ドットコムがセレクトした京都で話題の宿泊施設に泊まる!(その1)
三井ガーデンホテルズの人気棟に1泊、てんぷらの名店を味わう
2017年6月21日 00:05
- 2017年6月1日~2日 実施
インバウンド需要が定着化し、世界的な観光地としての地位を確立した京都。歴史を守りつつ、多様化する需要に柔軟な対応を進めている。この古都を舞台に、宿泊施設予約サイト「ブッキング・ドットコム」がセレクトした話題の宿泊施設を視察してまわるプレスツアーが実施された。2日にわたって実施されたこのプレスツアーの様子をレポートする。
海外旅行か国内旅行かに限らず、すでに旅行の予約にインターネットは欠かせない。交通手段とホテルを別々に予約して、こだわりの旅を組み立てる人も多いだろう。実店舗を持たずにオンラインだけで旅行商品を取り扱う事業者を「OTA(Online Travel Agent)」と呼ぶが、このOTAにはホテルの宿泊、ツアー、レンタカー、航空券、レジャーチケットなど幅広い内容のサービスが存在している。
このOTAのほかにも、インターネット上ではそれらOTAを串刺し検索する「メタサーチ」や、自らは決済を管理せずに宿泊施設と消費者をつなぐ「場貸しサイト」など、さまざまな事業者がサービスを展開している。正直、利用者には宿泊ホテルの直販かそうでないか程度しかはっきりと分からない。「これはOTAだ」「これは場貸しサイトだ」「これはメタサーチだ」という意識はせずに、自分が使いやすいサイトを利用しているケースがほとんどだろう。
さらにこのOTAには、国内の旅行業者が運営しているサイトと、海外の事業者が運営しているサイトに分類されるが、世界的に見ると海外OTAでは「プライスライングループ」と「エクスペディア」が2大OTAとして高いシェアを持つ。そのプライスライングループの中核企業が、宿泊施設予約の大手「ブッキング・ドットコム」だ。民泊から五つ星ホテルまで全世界で約120万施設が登録されている巨大OTAである。
今回、このブッキング・ドットコムがメディア向けに京都で話題の宿泊施設の視察ツアーを実施。2回に分けてその様子をレポートする。
日本国内約1万2000軒が登録するオランダ発祥のOTA「ブッキング・ドットコム」
1日目は、ブッキング・ドットコムと、三井ガーデンホテルズから京都のインバウンドの現状についての解説からスタート。ブッキング・ドットコムの広報担当部長 岩崎健氏からの挨拶のあと、西日本地区のエリアマネージャーを務める高木浩子氏から「京都市内インバウンド最新事情」と題してブッキング・ドットコムの予約数から見えるインバウンド事情を具体的に解説した。
ブッキング・ドットコムはオランダ・アムステルダムで1996年に設立、2005年にプライスライングループの傘下となり、日本オフィスは2009年に設立した。現在は日本国内6カ所にオフィスがあり、約120名の営業担当と約200名のカスタマーサポートが勤務し、国内の宿泊施設と宿泊客のサポートを行なっているという。日本国内の参画施設数は1万2000軒弱。
「国別渡航先人気ランキング」で日本が32位から8位に上昇
京都文化交流コンベンションビューローが京都市内33ホテルの客室稼働率や外国人利用割合を調査した結果によると、インバウンドが目立ち始めた2014年と2016年を比較して、客室稼働率が約3%上昇、外国人利用割合が約4%増加したという。
訪日外国人国籍比では、日本全体では約85%がアジアからの来日なのに対して、京都に限るとアジアからは約56%。ヨーロッパや北米などの欧米比率が33%と高く、さらに年々この比率が増加傾向にあるというのが特徴だ。
ブッキング・ドットコムの「国別渡航先人気ランキング」のデータによると、日本は2012年は全世界で32位。この頃のブッキング・ドットコムの日本国内の施設登録数は1500軒程度だったという。それが2016年には施設登録数は1万2000軒に増え、ランキングも8位に上昇。送客室数実績推移を見ても、対前年比で2015年に約170%を記録し、2017年も現時点で144%を記録しているという。
過去1年に京都市内を訪れたゲストの国籍別のシェアでは、ブッキング・ドットコムのデータでも中国が21%と最多。日本人の利用者も増えているが、予約発生地で表示されているため、「日本」と表示されている分には日本人だけではなく訪日客が日本到着後に予約を行なった分も含まれているそうだ。
また、ブッキング・ドットコムでの過去3カ月の「国籍別平均単価」も公開された。これは日本国内で予約された施設の平均価格を0とした場合に、国別にどの程度の価格の施設を予約しているかをグラフにしたもの。例えば日本人が宿泊費に平均1万円をかける場合、韓国は約8000円、アメリカは約1万4000円かけるという見方になる。国別の宿へのこだわりが見えて面白い。
二極化するリードタイム。京都市内では5室以下の小規模タイプの施設の参画が倍増
さらに「リードタイム別割合」を見ると1カ月~2カ月前の予約が約20%と最も多く、さらに1/4の利用者は60日以上前の予約を探しているという。外国人客は基本的には日本国内の傾向よりも早く予約する層が多いそうだが、逆にここ数年はスマホのモバイルアプリの普及で直前予約も約25%あり、予約のタイミングは二極化しているという。
「国籍別リードタイム」では日本・韓国・中国が2カ月以内の直近に予約を入れる傾向があるのに対して、マレーシアや台湾、タイは4~5カ前から予約しているのが分かる。宿泊の平均日数も近場の日本・韓国が2泊以下なのに対して3泊以上という国も多く、訪日客の宿泊期間は長い傾向があるという。
全体的なトレンドとしては、趣向が多様化しており、リピーターが増えていること、目的は舞妓さんの変身体験などの「体験型」が増えていることなどを挙げた。周辺の奈良や和歌山などへの地方分散化も進んでいるそうだ。予約で使われるPCとモバイルの割合は半々。2年前は7:3でPC利用が多かったそうで、モバイル利用が非常に増えているのが分かる。また、メタサーチ経由で入ってくる顧客も多く、価格競争も激しくなっているのは確かとのこと。戦略的な価格設定が必要になっているという。
また、ブッキング・ドットコムの最大の特徴は、1億件以上の“口コミ”、ゲストレビューだとし、その施設を初めて利用するゲストにも分かりやすいという。ちなみに外国人のゲストは「旅行体験」の楽しさを書く傾向があるが、日本人のゲストは「評価」し辛辣な評価を書く傾向があるという。
ブッキング・ドットコムとしては京都市内の参画施設や室数確保をさらに進め、ブッキング・ドットコムの集客力とPR力でさらにインバウンドの推進に取り組んでいきたいと語った。
海外OTAの活用で平均単価が165%に増加、外国人率は5%から40%へと大幅上昇
続いて、「三井ガーデンホテルズ」の名称で全国に21店舗を展開する三井不動産ホテルマネジメントの川合氏と影山氏から、「京都インバウンド市場の取り組み」と題して京都市内3ホテルの宿泊実績推移などが解説された。
川合氏によれば、三井ガーデンホテルズは1984年に大阪の淀屋橋に1号店が開業。京都市内には、「三井ガーデンホテル京都三条」を1989年、「三井ガーデンホテル京都四条」を1997年、「三井ガーデンホテル京都新町 別邸」を2014年に開業。さらに2017年9月に「ザ セレスティン京都祇園」の開業を控えている。
京都市内の「三井ガーデンホテルズ」は、ホテルでありながら大浴場を設置。ビジネスからファミリーでの観光まで幅広く受け入れられるホテルとして展開してきたが、2013年から海外OTAへの参画を含めたインバウンドへの取り組みを強化。団体客から個人客への転換を図り、稼働率だけでなく客室単価を上げることを意識した販売を開始した。
これにより、過去5年の稼働率推移は微増させながらも、平均単価推移を2012年と2016年の比較で大幅に上昇させたとのこと。特に「京都三条」では165%に上昇した。この大幅な平均単価の上昇にはブッキング・ドットコムなど海外OTAの役割が大きかったといい、外国人比率は2012年の5~10%から、2016年度の約40%へと大幅に上昇した。
国別の比率では中国・台湾の割合が高いのはブッキング・ドットコムの調査と同じだが、日本人がブッキング・ドットコム経由で予約する割合が想定以上に多く、メタサーチなどを経由して利用しているのではないかとのこと。
三井ガーデンホテルズがインバウンドビジネスに力を入れ始めた理由としては、平均滞在日数が長く、平日や閑散期に、海外の大型連休の集客を見込めるためとのこと。実際に受け入れを開始したところ、予約のタイミングが早いという利点のほか、国内のビジネス客と違って平日でもシングル利用がないため1室単価が高いことを実感しているという。
当初は特に訪日客向けのホテルとしては展開していなかったため、ホテルマンの英語対応や館内表示の多言語化など苦労した点も多かったとのこと。現在は対応も進み、体調不良などの緊急事態の際にはタブレット越しに24時間通訳が可能なサービスを活用しているという。今後はレストランの代理予約などにも対応を進めていきたいと語った。
続いて三井不動産ホテルマネジメントの影山氏が、2017年9月7日に開業予定の「ザ セレスティン京都祇園」を紹介した。「ザ セレスティンホテルズ」はハイクラス層をターゲットに新ホテルブランドとして展開されるホテルで、この京都祇園が第1号店になる。
ザ セレスティン京都祇園
所在地:京都市東山区八坂通東大路西入る小松町572
TEL:075-532-3111
最寄駅:阪急電車京都線 河原町駅徒歩約12分、京阪電車京阪本線 祇園四条駅徒歩約10分
総客室数:157室
Booking.com価格例(1室1泊):2万5300円~ ※2017年9月18日から1泊、大人2名、朝食なしの例
Webサイト:ザ セレスティン京都祇園
八坂通沿い、建仁寺の目の前という京都らしい街並みが残る閑静なロケーションに位置し、館内には和モダンの大浴場、宿泊者専用のゲストラウンジやバーを完備。レストランには天ぷらや日本料理の名店として名高い「八坂圓堂」が入店するなど、京都らしい、高いクオリティのおもてなしが展開されるという。すでに予約も開始され、開業記念プランなども提供している。
「ザ セレスティン京都祇園」の紹介のあと、全体の質疑応答が行なわれ、インバウンドの受け入れでどのような事例があったかなどの具体的が解説された。例えば受け入れ当初は大浴場に水着を着て入るなどの事例もあったそうだが、表示の改善で今はほとんどトラブルはないとのこと。ここ数年の試行錯誤や受け入れ経験からホテル側もインバウンド客への対応にすっかり慣れ、柔軟に対応を進めている様子が理解できた。
町家風の外観で女性に高い人気の「三井ガーデンホテル京都新町 別邸」
三井ガーデンホテル京都新町 別邸
所在地:京都市中京区新町通六角下る六角町361番
TEL:075-257-1131
最寄駅:地下鉄烏丸線 四条駅 徒歩7分、阪急京都線 烏丸駅徒歩7分
総客室数:129室
Booking.com価格例(1室1泊):1万4736円~ ※2017年7月3日から1泊、大人2名、朝食なし
Webサイト:三井ガーデンホテル京都新町 別邸
プレゼンテーションの終了後、「三井ガーデンホテル京都新町 別邸」に移動。当日はこちらに宿泊した。このホテルは2014年に開業、この年のグッドデザイン賞を受け、ミシュランガイド京都・大阪にも開業から3年連続で掲載されている人気ホテルだ。
もともとここは旧松坂屋京都仕入店・染織参考館があった場所。ロビーに展示されているアート作品は小清水漸(こしみずすすむ)氏によるもので、旧店舗で使われていた古材を使い、染織参考館が所有していた小袖の意匠を文様に使ったもの。1階から5階まで各階にこのシリーズのアートワークが飾られている。
建物は5階建、総客室数129室。部屋の広さは「モデレートツイン」は22m2、「スーペリアツイン」は27m2。1階には人工炭酸泉の大浴場も備え、特に女性に人気があるホテルだという。各階とも静かで落ち着いた雰囲気。部屋には寝心地のよい大型のベッド、大型の液晶テレビ、冷蔵庫、空気清浄機、金庫、豊富なアメニティが揃い、バスルームも非常に清潔感がある。
電気ケトルや、お茶・コーヒーのパック、冷蔵庫に無料の水ボトルと至れり尽くせりで快適だ。部屋ではWi-Fiが使えるほか、有線LANも引かれており、フロントでLANケーブルの貸し出しもある。コインラインドリーも設置されているため、長期滞在にも便利だ。
1階の人工炭酸泉の大浴場は、15時から夜中25時、朝6時から9時まで利用できる。洗い場が多く、混雑する時間帯でも気兼ねなく使えた。やはり大浴場でゆっくりできると疲れもとれる。観光で歩き回る京都の宿としてはありがたい。パウダールームも広く、女性の浴室には基礎化粧品も常備されていて非常に便利だった。
館内が静かで部屋がゆったり広く、ホテルの周りには雰囲気のよいバーやお店も多いという、大人にはぴったりの場所だ。
祇園・八坂通りの名店「八坂圓堂」の京風天ぷら
続いて「ザ セレスティン京都祇園」に併設される、名店「八坂圓堂」の別店舗、「南邸」に伺った。法観寺の「八坂の塔」への参道である八坂通にある趣のある一軒家で、カウンター席、座敷、テーブル席などが選べ、イス席も多く利用しやすい。
コースでは京野菜や魚介がメインの京風天ぷらが、揚げたてで一皿一皿提供される。この日は天ぷらコース「六波羅」をいただいたが、先附の「水無月豆腐」から始まり、「えんどう豆のコロッケ」「椎茸海老詰め」「鮎」「穴子」などの天ぷら12品に、サラダと食事、水物が付き、内容も充実。最後の食事は「天茶」「天丼」「ご飯とかき揚」から選ぶことができた。
「八坂圓堂」の女将、遠藤恵さんによると、店名の「圓堂」は店主の名字を言葉遊びでひねったもので、創業は1910年(明治43年)。現在、八坂通には3店舗を構え、ザ セレスティン京都祇園に開店予定の「日本料理 圓堂」は4店舗目になるとのこと。東山には系列の「ワイン&バー 近江栄」もあり、ザ セレスティン京都祇園内にも開店が予定されている。
写真は天ぷらコース「六波羅」の一部だが、ゆっくり一品ずつ出てくることもあって食べ終わるころにはかなり満腹に。京都らしい雰囲気を満喫しながら揚げたての美味しい京風天ぷらに大満足できた。
三井ガーデンホテルズの「楽しみになる朝食」で京のおばんざいを存分に楽しむ
翌日、宿泊にセットになった朝食を1階の「居様(IZAMA)」でとった。三井ガーデンホテルズは、各店舗で「楽しみになる朝食」と題して力を入れた朝食ビュッフェを提供しており、このホテルでも京都ならではの“おばんざいビュッフェ”を提供している。朝食は6時30分から10時まで(最終入店9時30分)。このレストランは宿泊者以外にも開かれたレストランのため、朝食は「和洋ブッフェ」として2592円(税込)で提供されている。実際この日も、欧米の観光客が何組も有料のレストランを利用していた。
ビュッフェメニューが並ぶテーブルには、京野菜や魚が中心のおばんざいが小鉢や大皿で多数並び、せいろ蒸しの野菜や湯豆腐も用意されている。食べたかった京都の名物がここで一気に試せて満足度が高い。特に「お野菜たっぷり白味噌スープ」は、全国の三井ガーデンホテルズとセレスティンホテルが参加して実施された第2回「楽しみになる朝食」料理コンテストで銅賞を取った逸品で、白みその甘みとだしがたまらなく美味しい。“京都新町 別邸に帰りたくなるような一品”を目指したとのことだが、確かに忘れられない美味しさだった。
ビュッフェのメニューには洋食も充実している。パンからシリアル、サラダ、フルーツ、スイーツまで充実したセットが作れ、ドリンクも種類豊富。時間をかけてゆっくり楽しみたいビュッフェだ。
このあと、プレスツアーでは一気に4軒の人気ホテルを視察してまわった。バラエティに富んだラインアップをその2でご紹介したい。