重装甲空母「大鳳」はなぜ魚雷1発で沈んだ? 「不沈」をうたわれた空母の一部始終

太平洋戦争期、旧日本海軍が竣工させた重装甲空母「大鳳」は、初陣にて、たった1発の魚雷がもとで沈んでしまいました。装甲は魚雷に耐えたにもかかわらず、艦内でなにが起きていたのでしょうか。「大鳳」の一部始終を追います。

脆弱な空母を重装甲化したら…?

 空母は航空機を飛ばすのが任務ですが、そのためには航空機用燃料のガソリンやこれに搭載する爆弾なども必要です。つまり空母は、艦内に大量の「危険物」を抱え込んでいるのです。

 ところが、太平洋戦争以前の空母黎明期、航空機の航続距離は戦艦や巡洋艦の大砲の射程距離よりずっと長いので、空母そのものが最前線に出ることはあまり想定されず、充分な防御装甲は施されないのが普通でした。攻撃するリーチは長いものの、いざ攻撃を受けると脆弱な存在だったのです。

Large 20190504 01
アメリカ海軍による識別リストに掲載された「大鳳」。イギリスの新型空母やアメリカのエセックス級空母と見間違えやすい、との説明(画像:アメリカ海軍)。

 現代アメリカ海軍の原子力空母は、多数の強力な航空機を運用できる巨大な攻撃力をもっていますが、やはり脆弱であることには変わりなく、護衛艦、潜水艦など多数の艦艇や航空機を配してガッチリガードされています。ミサイル防衛にも使われるイージス艦は、もともと空母護衛用に造られた艦です。

 旧日本海軍においても、飛行甲板に爆弾を1発でも受けると航空機が発着できなくなり、甲板を貫通されると致命傷になりかねない空母の脆弱性は、太平洋戦争の開戦前から認識されていました。そうしたなか、1939(昭和14)年に策定された「第4次海軍軍備充実計画」、通称「マル4計画」において、排水量2万7000トン級、防御力を大幅に強化し、飛行甲板は800kg爆弾に耐え、機関室や弾薬庫は巡洋艦の主砲弾に耐える装甲が施された「重装甲空母」が計画されました。

 これがのちの空母「大鳳(たいほう)」です。

この記事の画像をもっと見る(4枚)

最新記事

コメント

11件のコメント

  1. 要するに,設計は理論的に完璧だとしても,材料などに手抜きがあれば,完璧にはならない。原発はどうなんでしょうか。

  2. 太鳳

  3. 一層減らしたのは格納庫ではない。ミリタリーブーム以前にはよく誤解されていた説明だが、この期に及んでまだ流布されるのか。断面図を観ろとしかいえない。

    • いやどこ?

  4. ミッドウェー海戦の敗戦責任を空母飛行甲板の脆弱性に責任転嫁した結果です。

    敗戦責任は、陸用爆弾ででも果敢に先制攻撃する指導をおこなわなかったから。

    また、インド洋で失敗している爆弾魚雷の転換などを再度、敵前でやってるから。

    作戦指導が悪いのであって、空母の甲板を強化してどうするの。雲竜型の早期大量建造でいいでしょ。

    • 全くその通りですね。でも、古今東西、なかなか素直に非を認める事が出来る組織は少ない。

  5. 艦載機の着艦失敗の話は初めて聞いた。アメリカも平気で間違いを書いてるからはっきり分からないが皮肉にも換気をしようとしてファンを入れた時に出た火花だと読んだことがある

  6. 火災が主要因で雷撃は問題ではない

  7. なんちゃってミリタリーファンの者ですが、当時の大鳳の損失は本当に惜しいと思います。

     空からの攻撃に備えたら、そのウラをかかれた感じで雷撃が致命傷で撃沈されるというのは、空母信濃もそうですし、せっかくの改装で生まれた当時の日本軍には珍しい防空巡洋艦の五十鈴でさえ、雷撃により喪失してしまうという感じで、まるで不運に見舞われた太平洋戦争後期の日本軍の話しだと思いました。

     空母信濃も空母大鳳も、もし生き残っていたら、今の現代の中国に対する軍事的な備えに旧式艦ながら、それなりに改装して海上自衛隊の空母となっていたかも知れないというように空想してます。(実際は例えばエレベーターが現代のジェット戦闘機に合わないはずだから無理でしょうが・・)

    • それ以前に米軍に鹵獲されて、水爆の的になってると思うよ。

  8. 大鳳は非常に残念なかたちで戦没しましたが、太平洋戦争末期はなぜか対空性能を強化した艦艇が戦没する傾向があり、防空巡洋艦に改装した五十鈴や同じように空母信濃があり、なんか戦争の勝運気に日本がまるで見放されたようでもありました。