南田洋子、滝田裕介、山田吾一がゲスト回の『鬼平犯科帳』「おかね新五郎」(1995)を見直した。おかね(南田洋子)*1が心を寄せる原口新五郎(滝田裕介)との間にできた娘を弥助(山田吾一)に殺され、その仇討ちをするのを長谷川平蔵(中村吉右衛門)と(平三と高杉道場の同門であった)原口新五郎が手を貸す話なのだが、いつも悪役の滝田裕介(1930-2015)が善人の役をやっている。*2
第6シリーズ 第10話|過去の作品|鬼平犯科帳 - フジテレビ
時代劇は悪役がいて成り立つ訳だが、悪役俳優も初めから悪役をやりたかった訳ではないだろう、善人役をやる時はうれしい気持ちがあったのではないだろうか。長く続いた『暴れん坊将軍』シリーズもそういうケースがしばしばあった。『暴れん坊将軍』はエンドロールの主題歌で悪人役の俳優が一人で名前が出ていて、同じくうれしい気持ちがあったと想像するのだが、制作側の気持ちを感じる。
悪役が善人をやった心に残るものを思い付くままにいくつか挙げる。山形勲(1915-1996)の『剣客商売』(1973)の主役秋山小兵衛、一心太助シリーズ(1958〜1963)の松平伊豆守、『家光と彦左と一心太助』(1961)の鳥居土佐守成次。*3中野誠也(1938-)の『風雲江戸城 怒涛の将軍徳川家光』(1987)の幡随院長兵衛。浜田晃(1941-)の『魔界転生』(2003)の木村助九郎(紀州藩士の柳生新陰流の高弟)。田中浩(1934-1993)の『龍の忍者』(1982、日本・香港合作)の福佐。また、斬られ役のベテラン大部屋俳優福本清三(1943-2021)が『探偵!ナイトスクープ』、『徹子の部屋』出演後、『ラスト サムライ』(2003)に出演し、晩年は『太秦ライムライト』(2021)で主役香美山清一を演じたことは有名であろう。
大人になったらわかることだが、悪役を張れる方はハンサムだと理解できる。例えば、上記、田中浩は怖い顔をしているが、*4名優高倉健(1931-2014)にも似ている。
*1:平三も相模の彦十(江戸家猫八)もすあい(行商の仕事をしている流しの娼婦)のおかねに苦い、後ろめたい気持ちがあることが仇討ちを助けようとする一つの伏線になっている。
なお、後年、江戸家猫八が亡くなった後、相模の彦十役は南田洋子の夫長門裕之が引き継いだ。
*2:滝田は洋画の声優でも活躍していたが、例えば、「スターウォーズ」シリーズ前期3部作のオビ=ワン・ケノービ(アレック・ギネス)の吹き替えは滝田である。
*3:山形勲は『水戸黄門』シリーズの柳沢吉保役など数多くの悪役を演じているが、子供の頃に見ていた『ウルトラマンA』にもゲスト出演している。第14話「銀河に散った5つの星」(1972)だが、山形はゴルゴダ星で捕えられているウルトラ兄弟を見殺しにすることを主張するTAC南太平洋国際本部の高倉司令官を見事に嫌な感じで演じている。ちなみに、作中で高倉長官は堪忍袋の緒が切れたTACの竜五郎隊長(瑳川哲朗)に殴られ、作戦室の外に出される。
*4:我々の世代には「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」の丸大食品のCMでも有名だと思う。なお、「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」『ヤマトよ永遠に』(1980)を劇場に観に行った時、暗黒星団帝国聖総統スカルダートが仮面を剥いだ顔は田中浩に似ていると子供心に思った。