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博報堂テクノロジーズのデータ活用推進とデータマネジメントとは
博報堂テクノロジーズのデータ活用推進について、大手メディア企業でエンジニア、経営企画、マーケティング、新規事業立ち上げ、グループ横断のデータ基盤の開発や組織運営など、さまざまな業務に従事してきた竹内勇希氏が語ってくれた。
株式会社博報堂テクノロジーズ
データマネジメントセンター データマネジメント部
部長 竹内 勇希氏
竹内氏が博報堂テクノロジーズに入社したのは2023年。現在は、新設したデータマネジメント部の部長として、グループを横断したデータマネジメントを実行する組織づくりを担っている。
博報堂テクノロジーズはその名のとおり、博報堂DYグループにおけるテクノロジーの専門会社だ。グループに点在していた技術やシステムはもちろん、人材や採用・育成といったリソースを集約することで、グループの力を最大化するために2022年に設立された。
同社のデータマネジメントセンターは、グループすべての役職員がストレスなくデータを利活用できる世界の実現を掲げている。
データマネジメント部のメンバーは2024年12月時点で8名。竹内氏をはじめとして全員が中途採用で、さまざまな業種でのキャリアを持っているという特徴を持つ。
経営やビジネス部門からデータを利活用したいと言われデータ基盤を作ったが、利活用されていないケースが少なくない、と竹内氏は語る。
ビジネス部門とIT部門では言語や認識などの隔たりが存在し、解決には両者をつなぐ役割が必要だ。竹内氏は「それこそがデータマネジメントと語られる手法だと考えています」という見解を述べた。
実現に向けて参考となる、データマネジメントに関する知識などをまとめたフレームワーク、「DMBOK(Data Management Body of Knowledge)」も紹介した。
一方で、DMBOKはあくまでフレームワークのため、「どこから取り組めばよいのか悩んでいる人も少なくないでしょう」と竹内氏。そこで実際に、博報堂テクノロジーズで取り組んでいる施策も語った。
まず語られたのは、「データコンシェルジュ」である。データの入手や加工に苦労しているデータ活用者など、データの利活用に関するユーザーの課題解決を、まさに名のとおりコンシェルジュのように解決していく役割を担う人材かつサービスだ。
「困ったことや分からないことがあった際、まずはデータコンシェルジュに聞けばどうにかなる。そのような存在を目指しています」と、竹内氏。そのため、ホスピタリティにあふれた、人間味のあるサービスを意識しているという。
フロント対応をメインに行うメンバーも設けているのは、まさにその証と言えるだろう。もちろん、データカタログの整備やパイプラインの構築といった技術的な内容にも対応する。
サービスの提供から1年経った現在では、データを提供して欲しいというリクエストが増えてきたと成果を述べる。
一方で、そうしたリクエストに応えるため、データリソースからETLを経てDWHにコピーするといった現在のフローでは、手間やコストがかかるのはもちろん、品質もガバナンスも担保できないと感じる課題もある。
そこで取り入れたのが「データ仮想化」である。分散型のデータアーキテクチャであるデータメッシュの技術や手法に近いと竹内氏は話すと共に、アーキテクチャの概念や、具体的なシステム構成図も示した。
実際には、大容量データへの対応といったデータ仮想化の弱点を補うために、既存のDWH製品群なども使った上で、「なるべくコピー数を減らし、迅速にデータを渡すよう心がけています」という現況も述べた。
さらにはデータ仮想化技術を使い、データの前処理加工を担うデータデリバリーサービスも提供する。まさに、コンシェルジュ的なサービスと言えるだろう。
竹内氏は、組織作りにおいても言及した。さまざまな業界のメンバーをキャリア採用しているのは、組織外の一般知を集めるためであると同時に、組織の知識や常識を知らないことで、コミュニケーションする際に優しく接してもらえる。そのような意図があると言う。
実際、コミュニティを形成したり飲み会を主催したりするなどして、組織知を集めているという。いずれはデータマネジメント組織が持つノウハウやスキルが、各部門のカルチャーレベルとして行き渡ることを目指しており、以下のように展望を述べた。
「そこまで昇華すれば、データマネジメントを専門とする組織は必要なくなるのではないか、とさえ思っています」(竹内氏)
生成AIの活用も進めている。大きくはナレッジの蓄積とSQLの自動作成であり、LLM(Large Language Model)やPrompt Chainingといった技術も活用しながら行っている。
これまでは人が行っていた業務に対して、レベルを落とすことなく、まさにコンシェルジュ品質で今後はAIに担ってもらうために、今まさにチャレンジしている最中だと述べた。
竹内氏は、紹介した3つのテーマに引き続き注力すると共に、1つのデータからさまざまな人がいろいろな価値を得る「生成AIの力を最大限活用できる世界を実現するためのデータマネジメントを追求したい」と述べ、セッションを締めた。
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
登壇セッションが終わった後は、イベント参加者からの質問に登壇者が回答する、QAセッションも行われた。抜粋して紹介する。
Q.導入のステップも含め、DMBOKを実務でどのように活用しているのか?
竹内:DMBOKどおりに進めようといった導入目的では使っていません。目の前に何か課題が生じた際、それをDMBOKで解決できないか。参考書や検討するためにスコープを絞るような地図的な感覚で利用しています。
Q.博報堂テクノロジーズの生成AIの活用も含めたデータ基盤アーキテクチャの詳細について聞きたい
竹内:それぞれのグループ会社や部門ごとに、ビジネスに応じたアーキテクチャがあり、データ仮想化の技術を使い、あたかも1つのデータ基盤のように見える体制としています。
具体的にはメジャーなクラウドプラットフォームのサービスを組み合わせたり、API連携で情報を取得したりなどをしています。
Q.ニーズが高かったデータソースや活用先は?
竹内:広告に活かすことのできる、ユーザーの興味や行動に関するデータへの関心が高いです。具体的には官公庁が出しているオープンデータや、位置・人流データなどで、現在は研究段階ですが、いずれは広告業界で活かせると考えています。