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日経 xTECH IT編集長/日経コンピュータ編集長 大和田尚孝
日経 xTECH IT編集長/日経コンピュータ編集長 大和田尚孝

 日立製作所が2019年3月期の決算でひそかに快挙を成し遂げた。システム構築などを担う情報・通信システム事業部門の売上高営業利益率が10.9%と10%を超えた。アナログ計算機の研究開発を始めてから約70年、「マル情」と呼ばれる情報・通信システム事業部門が利益率2桁を達成するのは初である。それどころか、富士通とNECを含む国産IT大手3社としても初めてだ。

 「ひそかに」と書いたのは決算発表日の2019年4月26日から2週間たった今でもほとんど報じられていないからだ。記事検索サービスを使って調べると主要紙・誌に載った日立の決算関連記事はざっと20本以上。だがマル情の利益率10%超えを取り上げた記事は無かった。

 ほかに話題がたくさんあったからだろう。電力・エネルギー事業における英国原子力発電所建設プロジェクトの凍結に伴う減損、オートモティブシステム事業における構造改革、IoT事業「Lumada」の拡大、などである。日立自身が4月26日の決算発表会で「情報・通信システム事業部門の利益率が2桁に達した」などと強調することは無かった。全社の利益率が8%にとどまったこともあり、胸を張りにくかったのかもしれない。

利益率10%超えは国内IT企業の憧れ

 利益率10%超えは日本のIT企業に共通する目標であり、憧れでもある。米IBMやアクセンチュア、米マイクロソフトなどの海外大手は軒並み2桁の利益率を維持している。海外勢の利益率が高い最大の理由は、商材であるソフトやシステムを顧客別にオーダーメード生産をしないところにある。共通仕様のソフトなりITサービスなりを開発し、それを世界規模で提供している。

 マイクロソフトならクラウドのAzureなど、IBMならAI(人工知能)の「Watson」などが相当する。アクセンチュアはサービス名こそ冠していないが、金融や製造といった業種別、人事や会計など業務別にソフトやサービスを構築し、世界各地に提供するビジネスモデルを整えている。