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5G(第5世代移動通信システム)スマートフォンなどで使う無線通信規格の特許ライセンスを巡り、米クアルコム(Qualcomm)と米連邦取引委員会FTC(Federal Trade Commission)、同社と米アップル(Apple)との間でそれぞれ争っていた裁判が、いったん決着した。その経緯を紹介した関連記事1関連記事2関連記事3に続く本記事では、公判から特許ライセンス交渉の舞台裏を明らかにする。Qualcommの強引な交渉は、Appleが米インテル(Intel)のモデム事業の買収を決めた引き金となったといえる。(日経エレクトロニクス)

 米クアルコム(Qualcomm)がスマートフォンなどで長年続けている特許ライセンス慣行について、米連邦取引委員会FTC(Federal Trade Commission)法違反との判決が2019年5月に下った(図1)。この「サンノゼ裁判」の経緯については『日経エレクトロニクス』2019年8月号で紹介した。今回、その公判から明らかになった同社と米アップル(Apple)との交渉過程と取引契約条件、判決前後に米国トランプ政権の意向をくむ米国司法省DOJ(Department of Justice)反トラスト局が提出した意見書とその背景について解説する。

図1 「サンノゼ裁判」に敗れたQualcommの本社
図1 「サンノゼ裁判」に敗れたQualcommの本社
判決でQualcommは、ライセンス契約の見直しを迫られている。(写真:同社)
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