技術責任者の@sunaotです。エス・エム・エスのプロダクト組織では、カンファレンス参加や専門書籍による学習などを強く推奨して、金銭的・時間的な支援も広く行なっています。
取組み自体はとくに最近の Web の会社では珍しいものではありません。ただ、位置付けや考え方を表明しているのはやや珍しいらしく、入社してきた人やカジュアル面談の場などで説明すると面白がってもらえることがあります。そこで、今回はその背景や考え方を説明してみます。便宜上ソフトウェアエンジニアを例に説明をしますが、基本的にはプロダクトマネージャーやデザイナーなど他の職種においても同じことが言えると考えています。
学習への投資は責任を果たしてもらうための必要経費
エス・エム・エスのプロダクト組織では、カンファレンス参加や書籍の購入といったものに会社のお金や業務時間が使えることを福利厚生として位置付けていません。では、報酬ではないのだとしたらどのような位置付けなのでしょう?
実は、これは十分なクオリティの仕事をする上で当然必要なもの、責任を果たすための過程で必要なものの一部として提供をしています。
元々、エンジニアを始め、プロダクト開発の仕事というのはタスクを終えることが仕事ではなく、一定の品質水準を満たすものを届けることが仕事の完了条件に含まれています。そして、その自律の求められ度合が高いのが特徴です。ソフトウェアは目に見えないのでぱっと見で品質の判断ができず、自律しないと手抜きができてしまいます。さらに、目の前でやる仕事が全て自分の知識の範囲に収まることは非常に少ない仕事であることも特徴です。エンジニアであれば、大体知らない技術要素であったり製品だったりが関わってきます。
そのため、成果物に対してプロフェッショナルな水準の仕事をするとなったときに「調べる・学習する」ということが仕事の当たり前の一部になってきます。そして、仕事のたびに全部を新しく調べるわけにはいかないとなると、自分の道具を磨くための学習をし続ける必要があります。
必要な品質を満たすために十分な調査・学習をしてほしい
こうした見方をしているので、今のエス・エム・エスのプロダクト組織では学習をするということに対して積極的に支援をしています。それは仕事に必要だと知っているし、明らかに投資に対してリターンが大きいからです (全部を学習し終えた人を転職市場から探して採用してくるのはとても難しくコストもかかります)。
"知らないことを調べることも仕事の内で、自身でクオリティの判断ができないうちに仕事を期限だけに対して終わらせないでほしい。必要な品質に対して調べることをしてほしい" ということもよくメンバーに対して伝えています。これも同じ理由で、それがまともな品質のエンジニアリングの仕事に必要だからそう求めています。仕事の時間を使って経験のない技術の調査をしてよいと聞くと、一見その人の時間への優しさのように聞こえますが、実はそうではなく仕事のクオリティへの厳しさゆえの方針だったりします。
直接は目の前の仕事に関係しない勉強会を仕事の時間にやっていたり、カンファレンスへの参加を業務時間に入れているのも同じ理由で、けっきょくいつ学ぶかだけの問題で、そうして積み重ねた学習がなければ必要になったときに一から全部学ぶことになってコストが高いから積極的に奨励している、という背景になります。そういう仕事だから、ですね。
もちろん、そうした学び合う環境があるほうが働いていて楽しいとか、優秀な人と学習すると刺激になって働きがいがあるとか、学習を支援している環境のほうがわいわいしていて周りの人も学ぶ気持ちになるとか、色々副次的なメリットもあるとは思っているのですが、一番の理由は「そういう仕事で、必要だから」という考え方をしています。
まとめ
この記事のまとめです。
エス・エム・エスのプロダクト組織ではカンファレンス参加や専門書籍・コンテンツによる学習を推奨し、広くその支援をしています。
これは個人の学習支援のためという以上に、そのときにマーケットやプロダクトが必要とする水準のクオリティの仕事を求めるという姿勢から来ています。それまでの経験で得た知識・スキルでできる範囲のクオリティの仕事をしていくのでなく、必要であれば都度学習しながら未知の課題にも取り組める人とチームでいるための方針なのです。