石破茂首相は27日、令和6年の仕事納めを迎えた。政権発足から約3カ月間がたつが、首相の信頼が最も厚いのは赤沢亮正経済再生担当相だ。首相との面会回数も衆参の政務担当の官房副長官並みで、首相官邸内に赤沢氏の部屋が用意されていることからも重用ぶりがうかがえる。ただ、閣僚としての業務がありながら、「もう一人の官房副長官」然としてふるまう姿には自民党内から冷ややかな視線も注がれている。
11月のある日の国会内。衆院本会議終了後、議場を後にしようとする首相を囲む秘書官やSP(警護官)らに割って入る赤沢氏の姿があった。しきりに首相の肩に手をかけながら耳元で語りかけた後、「よろしくお願いします」と立ち去る様子には、互いの信頼関係の強さがうかがえた。
官房長官超える面会回数
赤沢氏は首相と同じ鳥取県選出の衆院議員で、首相にとって数少ない腹心だ。首相がかつて率いた旧石破派(水月会)に在籍していた過去があり、先の自民総裁選では選対事務総長を務めた。首相の勝利の立役者の一人として、初入閣を果たした。首相の肝いりである防災庁の設置準備担当を含め、現閣僚の中では最多の8つの担当を任されている。
また、産経新聞に掲載している「石破日誌」で首相との面会回数を調べたところ、総裁選に勝った9月27日から12月26日までの3カ月間で赤沢氏は31回だった。官邸を拠点とする橘慶一郎(39回)、青木一彦(36回)両官房副長官に次いで3番目だ。林芳正官房長官の23回や加藤勝信財務相の22回よりも多い。
異例なのは閣僚にも関わらず、官邸内に自室を構えていることだ。第2次安倍晋三政権時代に安倍氏の最側近だった今井尚哉元首相秘書官が使っていた部屋で、今では「赤沢部屋」と呼ばれる。ここで連日、各省庁の官僚を集めて政策協議を重ねているようだ。
「最初から副長官になれば…」
だが、閣僚でありながら首相の最側近として党務まで幅広く関わることに疑問の声も出ている。仲間づくりが下手との評価が付きまとう首相にとって赤沢氏はまさに右腕だが、決して党内での人脈が広いわけではなく、党や政府での要職経験も乏しい。
政権中枢は「首相から頼んで動いてもらっている関係ではない」と突き放す。党内中堅も「そういう動き方をするなら、最初から閣僚より格が下の官房副長官になればよかったのに」と冷ややかだ。
これまでのところ、政権が政策面で大きな成果を上げていないことも、党内の不満が赤沢氏にも向いている一因と言えそうだ。少数与党の政権運営に苦しむ首相にとって、赤沢氏の存在は精神安定剤なのかもしれないが、赤沢氏への依存を深めるばかりで、幅広く党内の人材を活用しなければ、不満がますます蓄積しかねない。