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勉学のみならず、公務をはじめ、帝王学を学ぶためには、無理のない選択だったが、「東京大学だけはガチンコの忖度なしでなければ行ってほしくない」という東京大学を特別視した意見や「一般入試で国民と同じ土俵で競うべきでない」「A0入試は忖度があったと受け取られるから一般入試以外で東京大学を目指すべきでない」などという人もいて八方ふさがりだった。
また、「学習院は皇族のための学校であり、皇族のために忖度をしていいのは学習院だけ」という歴史的にも法的にも実態的にも誤った主張が流布されて、多くの国民もそれを信じ、自由な選択を妨げたのも気の毒だった。
眞子さん、佳子さまは国際基督教大学(ICU)に転じ、愛子さまは限定的にしか通学されず、キャンパス・ライフも楽しまれなかった。3人の内親王に良い環境を提供できなかったのだから、私は秋篠宮家が忌避するのは当然だと思う。
● 筑波大学進学で懸念される 通学面における課題
愛子さまが学習院大学に登校されたのは、4回生の時だけで、ゼミなど限定的なものだった。だが、その際には、数台の車列を組み、教室の入り口に1人、建物の出口に3~4人、歩かれる方向に数人の合計8人ほどが警戒していた。現在の日本赤十字社への通勤も同様の態勢だ。
皇位継承権者でない愛子さまに比べ、危険が大きい悠仁さまの場合、より厳重な態勢が必要だ。赤坂から筑波までは片道1時間半程度かかり、しかも、東京から埼玉・千葉県を通って茨城県に入るので、警視庁と埼玉・千葉・茨城県警の連携が必要になるし、動員する車も人数も増える。
一方、筑波に住まわれて必要に応じて東京と行き来されるなら、警備上も知事公邸クラスの宮邸に類するものが必要だ。あるいは、塀のある敷地内に建つ警察の官舎などの一角を充てて、警官や侍従と同じ棟に滞在いただくことは可能かもしれないが、いずれにせよ、準備に時間も費用もかかるし、費用については批判が出るだろう。
筑波大学のキャンパスは塀がないし、広いから、警備は楽ではない。また、「イスラム教を冒とくしている」として問題になった小説『悪魔の詩』の翻訳者殺害事件が1991年に起きたこともある。警備を手厚くすべきだ。
私は「京都大学に進まれて、京都御所に隣接した大宮御所にお住まいになったらいい」と提案し、関係者にも勧めたこともある。大宮御所は老朽化しているし、外国の賓客を招くにも適当な場所でなく、いずれ大改修が必要なので、良い機会だから改修して住まわれたら警備もやりやすい。だが、必要に迫られての秋篠宮邸改修ですらあれだけ誹謗されたのだから、ひどい批判が予想された。ともかく、筑波大学へはまずは車で通学されて、夏休みごろに再検討するのだろう。
● 筑波大学の研究レベルは高いが ご学友とお妃探しに難しさも?
ただ、偏差値的には早稲田・慶応大学ほどには高くない。筑波大学附属高校で中位あたりの生徒は、早慶あたりに進学するケースが目立つ。悠仁さまの成績は高校で良くも悪くもないといわれるから、筑波大学であれば、余裕のある学業が送れそうだ。ちなみに、筑波大学附属高校では筑波大学は人気がなく、今年は4人(うち現役は3人)だけが進学した。
筑波大学合格者の都道府県別の内訳を見ると茨城県内が約15%で関東が60%だ。都道府県人口に対する比率でも上位は茨城、千葉、群馬、栃木で、北関東のローカル色が強い。また、公立高校からの進学者が多いため、地方のいわゆる一般家庭の学友とのふれあいは、良い財産となるだろう。
ただ、頭脳明晰で悠仁さまに刺激を与えるとか、将来の指導者層になっていきそうとか、親が有力者や教養人だとかいう家庭に育った学友は求めにくいから、中学や高校時代の学友との付き合いも大事に育てていく必要がある。私は、中学や高校時の同級生を全員宮邸に呼んでパーティーくらいしたらいいと思う。同級生が窮屈な思いをしながら支えてくれたのだから、そのくらいのお礼はしてもいいだろう。
しかも、日本の国民は上皇后さまや、皇后さまのように、経済的にも知的にも高い水準の家庭に育った知力、教養、語学力があるお妃を望んでいるのが現実だし、皇室外交などの即戦力になる必要もあるので、学内で見つけるのは難しいかもしれない。
秋篠宮殿下は、12月1日の誕生日に先立つ記者会見で、海外留学の必要性を話されたが、ぜひとも、卒業を待たずに海外へ行かれることをお勧めしたい。ただ、筑波大学では早慶などの私立大学などに比べると交換留学先の選択肢が狭い。
● 悠仁さまへの誹謗中傷が 続くのは政府にも責任
悠仁さまは成績が悪くてひ弱などという情報を信じて、「将来の天皇にふさわしくない」という人もいる。しかし、お茶の水女子大学附属中学校が悠仁さまの卒業式の日に行った記者会見では、優秀な成績で友人関係も順調だったと説明している。
世界中、どこの君主国でもご一家を政府がしっかり守っている。それは内閣の最重要な仕事のひとつだ。かつて英国のジョンソン元首相に「どのくらい天皇陛下に会うのか」と聞かれた安倍晋三元首相が「数回だ」と答えたところ、ジョンソン元首相は「それは素晴らしい。俺は毎週会わなくてはならない」と言ったという。
戦前の首相は、頻繁に天皇陛下に会っていた。しかも、昔は内大臣という閣僚級の側近も天皇の側にいた。また、エリザベス女王を君主として厳しく育てたのが、ウィンストン・チャーチル首相だったことはよく知られている。石破茂首相も常に皇室に目配りして、陛下や皇族をしっかりとお守りすべきだと思う。
(評論家 八幡和郎)