2回
2018/12 訪問
京都・京都駅、「総本家にしんそば 京・松葉」。【115th】
京都駅、新幹線乗り場の駅ナカで松葉さん。
四条通を八坂さんに向かって鴨川を渡ると、松葉さん。
南座に用事はなく、幼少の頃の僕にとっては松葉さんだった。
別のレビューでも書いたかも知れないが、家族の中で、僕と父親はにしんそばが苦手だった。
いや、お互い蕎麦好きでもあったし、にしんも好きであった。
それが故、と言ったら変だが、合わせ技を納得でき得ないでいた。
僕が、ホントの意味でにしんそばを食べるようになったのは、父を亡くしてからである。
深川区富岡生まれの、元来は江戸っ子であっただろう父の影響は、京にありながらも僕自身受け継いでいた部分も多い。
蕎麦好き、江戸前寿司好き、その他も知らぬ間に京の倣いと違う習性を持ち合わせてしまった。
ソレに対して、母方は4代以上京に住まいを構える。
戊辰の役で壬生から太秦に移ったと聞く。
菩提寺は西本願寺である。
僕は基本的に京の名店・名物でも、東京でいとも簡単に買えて食せるものを、今まであまり書いてこなかった。
きっと、「聖護院八ツ橋」と「俵屋吉富」ぐらいだろうと思う。
今の地元・池袋の西武や東武には、何から何までそろっている。
パッと思いつくだけでも、いろいろな京菓子はもちろん、一保堂のお茶、澤井醤油・村山造酢の千鳥酢・石野味噌・本田味噌・原了郭の黒七味などの調味料から、西利・土井・打田など漬け物の数々、麩嘉の粟麩やよもぎ麩、大市のすっぽんスープまで、いわゆる名店の名品の多くが催事でなく常時何でも買える。
実は、この松葉さんのにしんそばも、各々別売りだが、常時買えるのである。
池袋西武のデパ地下、味小路というコーナーにある。
松葉さんの生蕎麦、濃縮麺汁、にしんの棒煮である。
すべて、松葉さんがつくっているモノである。
しかし、今回、この京都駅のナカで、松葉さんの店構えを見たら、無性にそばがすすりたくなったのである。
まだ、朝だったが8時半から営業されているようだった。
「にしんそば」(1,404円) ―― 松葉さんのにしんそばである。総本家のにしんそばである。
何の変哲もないにしんそばだが、コレこそがにしんそばであり、コレ以外のにしんそばは、にしんそばではないかも知れないような気になってくる。
ムダなモノは何もない。
にしんとそばだから、にしんそば。
薬味ネギを入れると、にしんネギそばになってしまいそうで、入れるのを躊躇う。
やや柔めな〆方が、松葉さんのそば。
いや、30年前、40年前に比べたら、コレでも随分カタめになった印象なのだが…。
やや淡いお出汁の効いた汁。
コレも、以前に比べたら、随分濃くなった印象なのだが…。
はんなりすする。
何ともイイ。
年の瀬を感じる。
ごちそうさまでした。
南座のまねき上げが過ぎ、京の師走は、いよいよ走る。
(文責:京夏終空、2018.12.23)
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(※写真は、後日掲載。)
2021/07/15 更新
続・京都駅、新幹線乗り場の駅ナカで松葉さん。
創業文久元年(1861年)、「にしんそば」発祥の「総本家にしんそば 松葉」である。
前回も書いただろうが、子供の頃は苦手だった。
「そば」も好きだったし、「にしんなす(ニシンとナスの炊いたん)」も好きだったし、各々単体では好きだったのに、この合わせ技がどうも受け入れられなかった。
大人になって、わかる食べ物ってある。
そんな中の1つである。
郷里の太秦からは、祇園の本店でなく、嵐山の「松葉 本社売店」に年末に買いに行くという感じが通例だったように思う。
この食べログでも8年近く前にレビューアップしたのだが、未だに僕1人のレビューしかない。(笑)
京の名店の本社直売所なのに、やはりメディアが持ち上げない店は、抹殺される傾向が強いし、本店レビュー669件、この店428件に対して、極端な印象を受ける。
誰1人、本社直売所に足が向かないのか?関心がないのか?
総括は、また改めてしたいと思うのだが、2024年、今年は、その傾向が特に顕著になってきたように感じた1年だった。
大行列店と閑散店の二極化がどんどん進んでいる。
メディア、ネットでバズれば、右向け右。
催眠状態に陥っているのではないだろうか?
自分の足で、自分の読み物で、そういう姿勢が、極端に少なくなってきたのだろう。
言い換えれば、簡単に手に入る情報にすがるのだから、端折って楽をしているとも言える。
まぁ、年代や地域差は当然にあるのだろうが、何だかなぁという想いが巡る年頃である。(笑)
「たらそば」(1,870円)+「鰊しぐれごはん」(550円) ーー 写真の通り。
「にしんそば」じゃなかった。(笑)
コレを知ったときから、一度食べてみたかったのだ。
松葉さんの、京の味そばである。
はんなり優しくも、堂々とした「京そば」。
ソコに、ニシンでなくタラ。
味わい的には、タラの干物っぽさもあるが、うま煮である。
おぼろ昆布も入っていて、柚子片が添えられている。
タラの旨みの強さは、さすが、である。
濃縮還元されていない感じで、食べながら、還元していく雰囲気。
ほんのり淡く甘めで、塩分のしょっぱさないので、タラの旨みがストレートにくる。
うん、旨し。
にしんそばよりも、味わいの交わりが少ない分、タラを少しづつかじって、という食べ方が正解か。
ニシンのしぐれごはん。コレは、何度か食べている。
いわゆるニシンのほぐし身のしぐれ煮である。
コレを、アツアツのごはんの上にふりかけるのだから、間違いない味わいで、こうにしかならないだろうという味わい。
コチラも、やや甘め。ただ、醤油の辛さもある。
つまり、メシが進む。(笑)
「たらそば」と「鰊しぐれごはん」、良かった。
満足。ごちそうさまでした。
(文責:京夏終空、2024.12.31)
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