「定番お好み焼　豚玉」、「ふうわり焼　たこネギ（ハーフ）」 : ここやねん 山科駅前店

　お好み焼店「お好み焼はここやねん」は、京都府を中心に、滋賀県、岐阜県、三重県、和歌山県、奈良県、大阪府、兵庫県へ25店舗を展開している。
　週末の夜、山科駅前店を一人で訪れた。
　客席は、多数のボックス席と4席のカウンターテーブル席。後者へ通された。おそらく全席鉄板付きと思われる。
　店員さんは、お若い方ばかりだったようにお見受けした。
　注文は、客席備え付けのタブレット端末で行う。

・「瓶ビール」（620円）
　サイズは中瓶。銘柄はアサヒスーパードライ。

・「赤玉サワー」（440円）
　俗に「赤」と呼ばれることも多い京都名物。サントリーが明治40年から発売している「赤玉ポートワイン」（「赤玉スイートワイン」「赤玉パンチ」など名称の変遷あり）を炭酸水やサイダーで割ったもの。京都で盛んに飲まれている。焼酎を足してアルコール分を強化して「ばくだん」と称して出すお店もある。こちらではおそらく炭酸水だけで割っていると思われる。

・「黒胡椒ポテトサラダ」（380円）
　お好み焼が焼き上がるまでにいただける早く出るメニュー。生タマネギスライスが添えられ、黒胡椒が振られ、ポン酢ベースと思われるドレッシングがかかっていた。しっかりした味付けながら、後味が意外にさっぱりした一品。

・「定番お好み焼　豚玉」（880円）
　お店の方が調理する。調理台はカウンターテーブルから分離されており、調理の様子は覗えなかった。
　混ぜ焼。小麦粉は滋賀県産と謳われている。キャベツは粗めに切られたせん切り。ネギと紅生姜も少量混ぜ込まれている。玉子も入っているのだろうが、存在感は大きくない。
　自家製ソースとマヨネーズがかかった状態で提供された。客席備え付けの青海苔を振りかけ、食感を損ねやすい花かつおは控えておいた。
　ソースの量が多すぎるので、鉄板へ垂れて苦い焦げを作りコテに粘り付いて始末が悪い。
　ソースの味は、甘さが強いのが特徴。続いて強い塩鹹さも覚え、それがどんどん厭になっていった。客席に用意された辛口ソースを足してみると、ピリッとした唐辛子系の辛さが加わり引き締まった。塩分も増えたはずなのに、不思議なことにあまり気にならなくなっていった。
　躯体は厚い。粉の量が少なめではないが、がっしりしたキャベツの骨格を潰さず内部に細かい間隙を保持しているらしく、食感は比較的軽快。口中でホロリと容易に崩壊し、キャベツの粗めの粒状感とソースやマヨネーズのとろみとを感じる。
　豚肉は、上面に貼り付ける様式。反転状態で焼いている際に鉄板に触れさせて焦がすのだろう。縮んで硬くなっている。コテを挿し入れるとこれが切れず本体から剥がれて分離し、一体のものとして味わいにくい。ソースとマヨネーズにまみれた焦げて縮んだ豚肉だけを口に入れることになってしまう場面が幾度かあるのはやや惨めだった。

・「ふうわり焼　たこネギ（ハーフ）」（580円）
　ふうわり焼なるものについて「たこ焼生地を平鉄板で焼きました」とお品書き上で説明されている。昔、お好み焼の派生種として窪みのある鉄板を用いたチョボ焼だのラヂオ焼だのが生まれ、やがてたこ焼へと発展していったらしい。それを踏まえると、「平鉄板」という文言に、窪みのある鉄板との対比が意識されていることが感じられる。
　基本が「ふうわり焼　プレーン」。このたびは、たことネギが入る「ふうわり焼　たこネギ」のハーフサイズをいただいた。
　提供されたふうわり焼は、半月状を成していた。緩く溶かれた生地を鉄板に円く流し、下面が熱で固まり始めたら二つ折りにして、固まっていないドロドロ部分を封じ込めたようなものだろうか。
　お品書きに記載されたお奨めの食べ方に素直に従っていただいてみた。
　まずはコテで小さく切ってそのままいただく。表面は固まっているとはいってもかろうじて中身が流れ出さない程度の固まり方であり、口にすると、カリッとかサックリとかいった歯触りは無い。極めて柔らかく、しっとりしており、それでいて香ばしさはあるというもの。内部はトロットロ。生地に出汁が効いていてそのままで十分おいしい。そして、たことネギがおいしさを向上させている。
　次に、出された温かい和風出汁に潜らせていただく。明石焼風に、と説明されている。出汁単独で啜ってみたら塩鹹さが目立つものだったが、これに潜らせたふうわり焼はそれが気にならず、汁気と旨みとが増していっそうおいしかった。
　そして、客席備え付けの辛口ソースをかけていただくことも試してみた。これも変化がつき、違うおいしさが味わえた。
　出汁に潜らせる食べ方がもっとも好みだったので、残りはその食べ方でいただいた。
　こちらの「ふうわり焼」は、兵庫県姫路市でいただいたことがある「喃風 姫路本店」の「どろ焼」、「お好み焼三木」の「ねり焼き」、「お好み焼き みえ」の「ぐじゃ焼」といったお好み焼群によく似ていると思った。このような播州独特の柔らかくおいしいお好み焼群はもっと他所でも食べられていいのではないかと思っていたが、思いがけずこんなところでそんな感じのものに巡り合った。とくに、明石焼よろしく和風出汁に潜らせて食べるという食べ方まで「喃風 姫路本店」の「どろ焼」と共通していたのがなんとなく嬉しく感じられた。

　お勘定は2,900円。多種のキャッシュレス決済に対応していた。