中学生の英語力、目標の「英検3級以上」は40%
文部科学省は6日、公立中高の英語教育に関する2017年度の調査結果を公表した。中学3年で英検3級相当以上の英語力を持つ生徒は40.7%と13年度から8.5ポイント増えたが、50%とする国の目標には届かなかった。公表された自治体のうち、目標値を超えたのは福井県、さいたま市など8都県政令指定都市(12%)で、地域差が見られた。文科省はこれらの自治体の取り組みを参考に全国で授業改善につなげる。

英検3級相当以上の中3が62.8%、英検準2級相当以上の高3が52.4%と、いずれも最も高かった福井県。県教委の尾形俊弘参事は「実践的な英語力を育む授業改善を長年続けてきた成果だ」と強調する。
「What are you going to do during spring vacation?」。日本人教師とジャマイカ人の外国語指導助手(ALT)が英語で手本を見せた後、生徒同士が春休みの予定について英語で話し始めた――。3月、武生第三中(同県越前市)で行われた中2の授業の一コマだ。水谷善長校長は「英語授業の2回に1回はALTが参加する。学習事項を盛り込みつつ生徒が興味を持ちやすい話題にするのが大事」と話す。
県教委によると、日本人教師も一部の複雑な文法学習を除き、ほぼ日本語を使わず授業を行う。文科省の調査では、教師の英語力も中高ともに全国1位。ALTは全ての中学校に配置され、「読む、聞く、書く、話す」の4技能を重視した授業改善に取り組んできた。このほか同県は、英検やGTECなど民間試験の受験料を補助し、県立高入試で加点できる仕組みも17年度に始めた。

文科省の英語教育実施状況調査は17年12月、全公立中高計1万2774校を対象に行った。語学力の国際規格「CEFR」を基に、中3は6段階中一番下の「A1」にあたる英検3級、高3は「A2」にあたる準2級相当以上の生徒の割合を調べた。英検以外の民間試験受験者や、教員が基準を満たしていると判断した生徒も含む。
中3で基準を満たした生徒は約42万人と、前年度から4万人増えた。高3でも準2級以上の生徒は39.3%と、13年度から8.3ポイント増えたが、50%の目標には届かなかった。
文科省は、中学では政令市分を除いた都道府県と、政令市ごとのデータを公表。東京、石川、福井の3都県とさいたま、横浜、大阪、福岡、熊本の5市が50%を上回った。高校で50%を超えた都道府県は福井のみで、富山、兵庫と続いた。

一方、中学では浜松市、堺市、高校では宮城県で3割を切るなど、自治体間で最大2倍前後の差がついた。文科省によると、成績が向上した自治体は、教員に英語力向上や授業改善を促すほか、生徒の民間試験受験に前向きな取り組みが目立ったという。下位自治体にも4技能を重視した施策も促し、英語力を底上げする考え。
政府は17年度を最終年度とした5カ年の教育振興基本計画で、中高とも基準達成者を50%に高める目標を立てていた。22年度までの次期同計画案でも、同じ数値目標を掲げている。
高校生の課題「書く・話す」
文部科学省が6日公表した中高生の「読む、聞く、書く、話す」の4技能ごとの英語力調査(2017年度)では、高校生の「書く、話す」に課題があることが浮き彫りになった。一定の水準に達した生徒の割合が「読む、聞く」の半分前後にとどまり、0点の生徒も多かった。文科省は「4技能に偏りがある。各高校に授業改善を促したい」としている。
文科省は語学力の国際規格「CEFR」に基づき、目標得点を中高の4技能ごとに設け、水準に達した生徒の割合を公表。高3で目標点以上だった生徒は「読む」33%、「聞く」33%に対し、「書く」19%、「話す」12%にとどまった。書く、話すの得点分布はいずれも0点が最多だった。
中3で目標点以上だった生徒は「読む」28%、「聞く」29%、「話す」33%、「書く」46%といずれも3割を超えた。
文科省によると、中高とも、情報を英語で書いてまとめたり感想を言い合ったりするなど、発信や対話を重視した授業に取り組む学校ほど、4技能全てで得点が高かった。