まず、国立青少年教育振興機構の調査結果を見てみよう。
未婚者の結婚願望について、今回(平成27年度)調査と平成 20 年度調査の結果を比較すると、「早く結婚したい」と「いい人が見つかれば結婚したい」の割合が低下する一方で、「結婚したくない」の割合が大きく伸びて17.8%になった(画像1)。
また、子供がいない人の現在の子育て願望について聞くと、「結婚したらすぐにでも欲しい」や「夫婦2人の生活を十分に楽しんだ後に欲しい」の割合は微減で、「夫婦生活が安定したら欲しい」が大きく低下するのに対し、「子供は欲しくない」は大きく上昇して21.9%になった(画像2)。
こうした「結婚願望の低下」や「子育て願望の低下」は、男女別では男性で、年収別では年収の低い層で、特に強く見られることも分かった。
また、「交際中」の人が結婚していない理由について、それぞれどの程度当てはまるか聞いたところでは、「経済的に難しい」が63.8%(とても当てはまる31.7%・やや当てはまる32.0%)で最も高く、経済的な事情も背景にあることが浮き彫りになった。
一方、東京ガスの都市生活研究所は、「65歳未満の両親と学業を終えた未婚の子供が同居している世帯」を「大人ファミリー」と定義し、そのライフスタイルについて調査を行った「大人ファミリーのライフスタイル」というレポートを公表している。
レポートによると、両親と同居している子供は、人数は1人(68.3%)、最年長の子供の年齢は25歳~29歳(50.4%)が最も多く、性別は男女ほぼ半数。また、子供の職業は「会社員・公務員」が66.1%で、契約社員や自営業、アルバイトなどを含めて何らかの形で働いしてる子供は9割以上だった。
就職した子供と一緒に住んでいる理由では、「子供が出ていかない」「経済的に非効率」といった理由が挙がり、子供と同居して経済的支援や身の回りの世話を続けていることがうかがえる結果となった。
では、こういった状態を親たちはどう見ているのだろう? 子供が家を出ていくことについて、父・母どちらも半数近くが「出ても出なくてもどちらでもよい」と回答している。
これらの調査を見ていくと、家族形態の多様化が見て取れる。
結婚したがらない若者、子育て願望の低いカップルがじわじわと増えている一方、実家から出たがらない子供にそれを許容する親もいて、大人だけが暮らす家族形態も増えている。
わが国では長い間、夫婦に小さな子供2人の4人家族を持ち家のモデル家族とする傾向があった。しかし最近では、高齢層も含めた単身世帯の増加や、ひとり親と小さな子供の世帯、親と成人した子供の世帯なども増加し、多様な家族形態が暮らすようになっている。
家全体の大きさや個室の持ち方、間取りの取り方なども、住む実際の家族形態に応じて変わっていく必要がある。例えば、高齢者を含み単身世帯が増えているので、「長く快適に住める単身世帯向きのコンパクトな住まい」の需要もあれば、大人だけの世帯では「寝るだけでなく趣味の時間も過ごせる個室がそれぞれにある住まい」、ひとり親世帯では「子供の気配を常に感じられてコンパクトな住まい」といったニーズも考えられる。
これからの住まいは、多様な家族形態を考慮した多様性や可変性が求められるようになるだろう。