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宮﨑聡所長が議長を務めた国際光工学会

2024年8月22日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2024年8月29日

国際光工学会(SPIE)の天体望遠鏡と観測装置に関するシンポジウム Astronomical Telescope + Instrumentation(SPIE ASTRO)は、天文学に関するプロジェクト、望遠鏡、観測機器、基盤技術等の情報を共有するため2年に一度開催されています。これまで北米と欧州で交互に行われてきましたが、2024年6月16日から 21日の6日間、アジア初の SPIE ASTRO が横浜で開催され、宮﨑聡 国立天文台ハワイ観測所長が、米国宇宙望遠鏡科学研究所の Sarah Kendrew 氏と共に、シンポジウムの共同議長を務めました。

宮﨑聡所長が議長を務めた国際光工学会 図

図1:全体集会でウェルカムトークを行う宮﨑聡所長。(クレジット:国立天文台)

日本の研究者が大活躍

シンポジウムでは、12 のテーマに分かれたセッション(分科会)が平行して行われました。すばる望遠鏡観測装置の現状と将来計画、観測開始を目指して最終調整が進められている超広視野多天体分光器 PFS、補償光学素子のアップグレードにより性能を向上させた太陽系外惑星の直接撮像装置、次世代補償光学による広視野高解像赤外線観測装置 ULTIMATE-Subaru、ソフトウェア開発など、ハワイ観測所の研究者が様々なセッションで講演し、参加者と活発な議論を行いました。国立天文台からは、臼田知史、本原顕太郎 両教授がセッションの座長を務めたほか、国内の研究者がセッション世話人として関わりました。また、毎朝行われた全体集会では、月曜日に国立天文台 TMT プロジェクトの臼田知史教授と嘉数悠子特任専門員が、火曜日に常田佐久国立天文台前台長が、木曜日に田代信 埼玉大学教授が基調講演を行いました。

宮﨑聡所長が議長を務めた国際光工学会 図2

図2:全体集会で基調講演する常田佐久 国立天文台前台長(左)と、田代信 埼玉大学教授(右)。TMT の基調講演については、TMT ブログを参照。(クレジット:国立天文台)

将来計画として会場で大々的に宣伝されたのが、NASA 主導の次世代宇宙望遠鏡ハビタブル・ワールズ・オブザバトリー(HWO:Habitable Worlds Observatory)です。HWO には宮﨑所長が HWO START(NASAが組織した、衛星仕様を検討する科学者の集まり)に JAXA 代表の一人として参加するなど、日本の研究者も検討に参加しています。HWO 日本チームと NASA 関係者で3時間の実りあるミーティングが行われました。

宮﨑聡所長が議長を務めた国際光工学会 図3

図3:HWO ミーティングで講演する NASA の Mark Clampin 宇宙物理部門長。(クレジット:国立天文台)

展示会場

大ホールには研究機関や企業のブースが並びました。国立天文台ブースでは、すばる望遠鏡、TMT、アルマ望遠鏡、太陽観測ロケット実験 CLASP などの観測装置のための試作品や部品を展示しました。連日多くの参加者が、すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ HSC(ハイパー・シュプリーム・カム)に搭載された CCD 素子、開発中の高速読み出し可能な CMOS センサー、すばる望遠鏡3D模型などを楽しみました。

宮﨑聡所長が議長を務めた国際光工学会 図4

図4:国立天文台ブース。(クレジット:国立天文台)

一般向け講演会

SPIE ASTRO 会議に先立ち、6月15日にはパシフィコ横浜会議センターで、「宇宙科学・天文学の最前線」一般向け無料講演会が開催され、150 名以上が参加しました。講演は、国立天文台 YouTube よりライブ配信され、オンライン参加者もあわせて 200 名以上が講演を楽しみました。宮﨑所長は「宇宙加速膨張の謎に挑むすばる望遠鏡」というタイトルで宇宙の加速膨張の鍵をにぎるダークエネルギーについて、そしてその謎に挑むための HSC の開発と観測成果について講演しました。講演後には会場から多くの質問があり、楽しい時間となりました。

宮﨑聡所長が議長を務めた国際光工学会 図5

図5:一般向け講演会ですばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ HSC を紹介する宮﨑所長。(クレジット:国立天文台)

すばる望遠鏡は今年 2024年で初観測(ファーストライト)から 25 周年の節目を迎えます。SPIE ASTRO はすばる望遠鏡のこれまでの成果を振り返り、将来計画、ひいては日本の天文学の将来を国際コミュニティに発信する実り多き会議になったと言えるでしょう。

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