大阪教育大学創基150周年記念 教育とICTセミナー 2024秋
これからの学びを支えるICT活用教育 協賛講演
高校の「情報」科目への対応、
待ったなし
「情報」教育を深化するために
必要なこととは?
高校教育では「情報」教育の深化が急務になっている。2025年には大学入学共通テストで「情報I」が出題科目として追加される。スプリックスの島貫氏とNPO法人さかてらプレイスの鈴木氏が、学校現場の現状や課題、情報教育の未来について語った。
スプリックス 公教育事業部長
島貫 良多 氏
NPOさかてらプレイス代表
鈴木 和仁 氏
スプリックスは1997年に新潟県長岡市で創業し、「教育で『春』を届ける。」をミッションに掲げて教育事業を推進している。個別指導塾「森塾」、人工知能(AI)を活用した「自立学習塾RED(レッド)」、オンライン個別指導塾の運営や教材開発などを行い、付加価値の高い教育サービスの提供を目指す総合教育企業だ。
スプリックス公教育事業部長の島貫良多氏は「『教育×IT』のノウハウを駆使して、学校現場の先生方に貢献したい」と語る。
NPO法人さかてらプレイスの代表を務める鈴木和仁氏は、山形県酒田市教育委員会で2024年3月まで教育長を務めた。
酒田市内の公立高校4校が統合して2012年に誕生した県立酒田光陵高等学校の開校準備委員会に参画し、開校後は3代目の校長も務めた。同校は「地域起点」をコンセプトに、「公益」「環境」「国際化」「情報」をキーワードに、総合選択制による新たな学びを実践し、変化する社会に対応できる人材の育成を目指している。全国19校ある「専門学科情報科」を設置する学校で、2023年にはリーディングDXスクール(生成AIパイロット校)指定校、2024年にはDXハイスクールの採択校にもなった。
鈴木氏は、現在は酒田市で主体的に学ぼうとする子供たちを応援する、さかてらプレイスの代表を務めている。
高校の「情報」教育の重要性と
教育現場が抱える課題
高校の情報科目は、2022年度に教科「情報Ⅰ」が必履修科目、教科「情報Ⅱ」が選択科目になった。2025年1月の大学入学共通テストからは「情報Ⅰ」が新たな出題科目に加わる。国立大学では多くの大学が、共通テストの受験科目として「情報Ⅰ」受験を必須としており、大学でも情報リテラシーを高める教育の重要性が高まっている。
一方で、情報教育を推進する上で、学校教育が対応しきれていないとの懸念も出ている。島貫氏は「現場の教員は情報科目の教科内容や指導方法に不安を抱えています。特に時間数や教材が不足しており、情報科目を教えられる教員の人材不足も大きな課題になっています」と話した。
スプリックスが実施した調査では、86.7%の教員が「情報教育の実践に不安がある」と回答した。「生徒の理解度が共通テストのレベルに追いついているのか分からない」という回答も53.6%あった。島貫氏は「現場の教員目線に立つと、新たな教科としての整備が追いついていないことを示唆しています」と指摘する。
共通テストで新たに導入された「情報Ⅰ」に向けて、具体的な対策ができていないと感じる教員も約3割いて、生徒が自学自習できるアプリやソフトウエア導入を望む声も6割近くに達するという。
鈴木氏は、学校教育におけるプログラミング教育の重要性を語り、「情報教育を基礎教科として位置づけ、英語や国語といった基礎教科と同等の重要性を持たせるべきです」とも話した。また、多様なコンテンツを活用して学びを進めている事例を紹介した。学校では教える教科も多く、提供できる学びは限られるため、民間や地域の取り組みで補完する必要性を訴えた。
子供の学びを深めるには
学校と企業の連携が重要
教育業界全体が人手不足である点は課題だ。情報Iが必履修になる前から情報科を教えていた教員もいる一方で、人材不足でもともと数学や社会、理科の教員が教えている学校もあり、一部の教員にしわ寄せがいっているとの指摘もある。
情報教育が日本の未来を左右する重要な要素であるという点で、鈴木氏と島貫氏は一致した。現状では地域や学校間での取り組みの差が大きく、普遍的な学びの機会を提供するためには、制度や予算面でのさらなる支援が必要だ。特に情報教育を教員の負担を軽減する形で推進するには、民間による教育現場への人的・物的支援の協力が欠かせない。
全ての高校で情報教育を満足に推進できているわけではないのが実情だ。学校現場の状況を知り尽くした鈴木氏と島貫氏の提案や実践事例は、今後の可能性を示すとともに、解決すべき課題の多さを浮き彫りにした。教育現場と企業が連携しながら、全ての生徒が「情報」という新しい学びを享受できる環境の構築が求められる。
鈴木氏は「情報教育を定着させるための意識改革と制度整備が重要です。特にプログラミングを社会的に価値あるスキルとして認識する文化を醸成していく必要があります」と提案した。
これからの社会を担う子供たちの学びを深めていくには、学校と教育産業が連携していくことが重要だ。学校での情報教育を支援するため、スプリックスは教科「情報」の教材やさまざまなICTツールを提供している。提供しているコンテンツは全て自社開発している。現在、全国の高校向けに情報Ⅰの授業で活用可能な「SPRIX情報パッケージ」や、共通テスト対策となる「情報Ⅰ模試」を提供している。島貫氏は「子どもたちの学びのため、加えて先生方のご負担を軽くするため、もっと民間企業のIT人材や知見、教育技術に頼ってほしいと思います」と締めくくった。
株式会社 スプリックス
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