何度か書いているが、去年の夏にオールディーズバンドにSaxで参加することが決まった。そのバンドでボーカルとギターを担当しているRさんから「自分が所属している他のバンドでもSaxを吹いて欲しい」と頼まれた。
深く考えずに「いいっすよー」と承諾していたら、いつの間にか、ビートルズのカバーバンドでもドラムを叩くことが決まっていた。え? ドラム?
アマチュアバンドがライブをやる場合、持ち時間は大抵30分から40分が一般的。そうなると演奏出来る曲数は大体7曲前後となる。
そのくらいなら、なんとかなるだろう。安易な気持ちで引き受けた。これが後に大失敗であることを知る。
ビートルズのカバーバンドのリーダーのWさん(ベース担当)から、候補曲のリストが送られて来る。なんと全部で17曲あった! え? マジか。俺は目を疑った。なんでこんなに多いの…
俺はこの時、冗談抜きに「なんで安易にビートルズのカバーバンドでドラム叩くことをOKしたんだろう」と後悔した。俺が今現在、このビートルズバンドしかやっていないのなら、まあ良いだろう。だが、それ以外のバンドでもSaxで新曲を複数覚えなくてはいけないし、ライブも既にブッキングされている。自分の中でレパートリー習得の優先順位をつけなくてはいけない。頭が痛くなった。
とにかくやるしかない。ビートルズのレパートリー17曲を音楽プレイヤーに入れ、朝の通勤電車で毎日聴いた。無論、ビートルズなので俺も知っている曲が半数以上あった。が、初めて聴く曲も何曲もあったし、一番の大きな問題点は「単にビートルズを聴く」ではなくて「この曲でどういったドラムが叩かれているかを確認する作業としてビートルズを聴く(聴かねばならない)」という聴き方をしなくてはいけないことだ。
こういった聴き方というのは、正直あまり楽しくない。当然「おっ、ここでこんなドラムのフィルイン(装飾演奏)が入っているのかー」という感嘆する部分もあったが、それよりも「ん? ここどうやって叩いてんの? よく判らん」とか「あれ? ここ綺麗に割り切れないけど、構成どうなってんだ」と頭を悩ますほうが断然多い。
俺自身はビートルズの格別なファンという訳ではないが、アンチビートルズでもないし、やはり聴けば良い曲が多いなと素直に思う。それでもドラムをどうやって叩いているのかと考えながら聴いていると、だんだんとビートルズを聴くのが苦痛になってくる。義務でビートルズを聴いている気分になっていた。こういう聴き方は間違いである。
また、俺はビートルズのオリジナル演奏を参考音源として聴いているけれども、実際にカバーバンドではどういったアレンジや構成でやっているかもスタジオに入ってみないと判らない。そこはスタジオに入って皆の演奏を聴いて擦り合わせるしかないな、と。
レパートリーの中に『Mr.Moonlight』があった。さすがに俺もこの曲は知っている。イントロでジョンが(ジョンだよね?)「みすたぁあああああ、むぅーんらいと~」とシャウトして始まる名曲だ。俺は今回じっくりとこの曲を聴くまで、この曲がドラムレス(ドラム無し)だと気付いていなかった。初めて「あ、ドラム入ってねーじゃん」と気付く。こういった発見はある意味面白いのだが、そういった面白さだけでは済まない。自分がドラムを叩けないとバンドのメンバーに迷惑が掛かる。これがバンド活動を趣味とした場合のプレッシャーとなる。
二週間ほど、毎日朝の通勤電車ではビートルズを聴いていた。17曲聴き終わると、ちょうど乗換駅に着くタイミングだった。帰りの電車ではもうビートルズは聴かなかった。聴けなかったというのが真実だ。身体が「義務で音楽を聴く」ことを拒否していた。仕事終わりでヘロヘロになった状態で「この曲のドラムはどうなっているのか?」とか、考えたくなかった。
昨日土曜日、スタジオに入って個人練習で三時間ドラムを叩いていた。毎朝聴いていたビートルズを実際に叩くとどうなるのかを確認する必要がある。バンドの全体練習前にこれはやっておかねばならない。実際に叩いてみると、「これ、絶対に他の楽器と合わないな(リズムが狂う)」という箇所がいくつかあった。こればかりはちょっともう対応している余裕がない。バンドの全体練習でなんとかしよう、腹を括った。
そして今日日曜日。バンドのメンバーとの初顔合わせ&初全体練習。メンバーのうちギターのRさん(俺を誘ってくれた人)ともう一人のギターのAさんとは顔なじみだった。だが、リーダーでありベースのWさん、キーボードのMさんとは初対面。正直、一つ恐怖だったのが、ビートルズファンの中にはいわゆる「原理主義者」ともいうべき人が一定数いて「ポールはそんなベースラインは弾いていない!」とか「リンゴのドラムはそうじゃない」とか異常に拘る人がいるのだ。
曲のコード、音程を間違える、リズムが狂うことに対する指摘ならそれは当然必要だ。だが、そうじゃなくて、音もリズムもあっているのに、本家のベースやドラムと演奏方法が違うと、狂信的にその違いを認めない人達がいるのだ。もし、WさんとMさんがそうだったら、どうしようという恐れがあった。
実際に音を合わせてみると、そういったことはない雰囲気だったので安堵した。そして、個人練習で「ここ、上手くいかなんだよなぁ…」と感じていた箇所は、当たり前の話として、やはり全体練習でも上手くいかなかった。当然である。だが、もう慌てても仕方ないのだ。来週の日曜は本番なのだ。
今日日曜に初めて顔を合わせて、初めて全体練習をやって、そして次の日曜は本番のライブだ。おいおい、いくらなんでもインスタント過ぎやしないか?
ま、でも音楽なんて良くも悪くもそういったイージーゴーイングで良いのだと思う。
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ビートルズのカバーバンドの話を今日はしたのだが、2/11(火)に別のバンド(俺の担当はSax)でライブがあるので、その告知をしておきます。(単に一度、blogでライブ告知をやってみたかっただけ)
ライブ日時
2025年2月11日 開場 12:00
ライブ会場
https://breath335.com/
バンドメンバー(右下のキャップを被ってSaxを吹いているのが俺)