【宜野湾】公金を不正受給した社会福祉法人ライオンの子が運営するそらみライオンの子保育園(宜野湾市)で、末広尚希前理事長らが渡嘉敷島でのお泊まり保育で飲酒したことを問題視した調理室職員の男女2人を降格させていたことが27日までに分かった。就業規則のどの規定に基づく降格人事か明示されずに、女性は正職員からパートに、男性は調理室長から一般職への降格を告げられた。通知を受けた後、2人は退職した。
元職員らによると、23年10月の系列園合同のお泊まり保育の前日に別の職員が「末広氏の指示」で調理室に酒を持ち込んだという。男性は子どもの安全を懸念して、末広氏に飲酒をやめるよう進言した。それでも末広氏らが園児を寝かしつけた後に飲酒したと聞き、男性は上司に相談の上で園内で「勤務中の飲酒について説明を求める署名」を集めた。
末広氏に勧められて飲酒を断れなかった職員もいたと聞いた男性は園内の会議で「自分が辞めてでも飲酒をやめさせたい」などと発言。末広氏はこの発言をとらえ、会議で辞職をほのめかしたことで「信頼をなくした」ことが降格理由と男性に説明したという。
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男性は「飲酒を問題視したことが降格人事の原因だと思っている。法令違反の不当な行為だ」と話した。女性は「子どもたちを守る職員が離島で酒を飲んで子どもを放置していたことはありえない。園は変わらないといけない」と話した。
お泊まり保育での飲酒について、末広氏は本紙取材に対し「宴会ではない。園児に対応できる職員はいた。安全管理上問題があるようなことはもちろんない。職員の自由休憩の大原則に基づき、職員に自由にしてもらっていた」と説明した。
男性は「一般職への職務変更(降格)を命じる」と記された辞令を末広氏に直接手渡されているが、末広氏は降格人事については「処遇もそのままで降格はさせていない」と否定した。
「報復人事」とも取れる園側の対応について、労働問題に詳しい金高望弁護士は「公益通報者保護法の趣旨に反する。労働契約法違反の『理由のない労働条件の不利益変更』にも該当するとみられる」と指摘した。
24年11月から同法人理事長に就任した又吉亮氏は、職員への聞き取りを通じて一連の経緯を把握し「間違いだった」と述べた。24年のお泊まり保育時に飲酒があったかは確認されていない。県内で認可や認可外の保育施設7園を運営する社会福祉法人ライオンの子とライオンの子ホールディングス(HD)による公金不正受給問題を受け、末広氏は昨年11月から法人理事長とHD代表を辞任していた。
(梅田正覚)