TVerはなぜユーザー数を伸ばし続けることができたのか “出会いと発見”の狙いを聞く
2024年12月に月間再生数4.96億回を記録した配信サービス「TVer」。いまやテレビに置き換わるほどに、生活に欠かせぬ存在となったTVerだが、その成長の原動力となっているものは一体何なのか? ユーザーのニーズに応える中で見えてきた新たな可能性、そして今後の展望まで、取締役サービス事業本部長の薄井大郎氏にじっくりと話を聞いた。
エンタメ領域だけではない部分でもTVerが果たせる役割
ーー2023年末に取材させていただいた際にもTVerの飛躍ぶりに驚かされましたが、2024年はそれをさらに上回る成長を続けられていることに驚愕しています。
TVerは“テレビ”を超えるのか? ユーザー数を更新し続ける独自の戦略に迫る
「しまった、新ドラマの〇〇、昨日から放送だったんだ。見逃し配信で観ておこう」あるいは「ノーマークだったけど、△△っていうドラマ、…
薄井大郎(以下、薄井):ありがとうございます。おかげさまで、かなりユーザー数も再生数も伸びており、本当にありがたいです。要因としては、2024年にジャンルを拡張できたことが大きいです。ドラマやバラエティがベースとしてあるところに、パリオリンピックがあったことで、スポーツジャンルが拡張されました。パリオリンピックの総再生数は、東京オリンピックを超える1,1億回再生を記録しました。このときに、「TVerは無料で観ることができる」とそれまで知らなかった方々にも届けることができたことも大きかったです。
ーーまさに前回のインタビューでは、無料であることがまだ実は伝わっていないというお話も出ていました。
薄井:オリンピックが終わってからの調査では、無料の認知が過去最高になっていました。もちろん、全てオリンピックが要因というわけではないのですが、少しずつ認知が広がっていることは実感しています。
ーーオリンピックのように多種多様な競技があると、テレビ局だといつどこで何がやっているのか分かりづらいと感じることがありました。その点、TVerだと検索も簡単な上に、これまで地上波では放送がなかった競技まで観ることができて、その点はいちスポーツファンとしても非常にありがたかったです。
薄井:ありがとうございます。オリンピック競技の視聴数ランキングなどを見ても面白い結果が出ていました。例えば、男子バスケットボールの試合が、日本代表戦ではない試合でも上位にランクインしているんです。地上波での放送がなくとも、観たい人はこんなにいるんだと。日本時間の朝4時頃の試合だったのですが、バスケットボールのアメリカ代表戦に一気にアクセスが集まっていたのには驚いたと同時に、可能性を感じました。
ーーオリンピックにプロ野球日本シリーズ、高校サッカーなど、スポーツファンにとってもTVerがなくてはならないものになっていますね。
薄井:そう思っていただけたら何よりです。スポーツ番組がきっかけでTVerを知ってくださった方が、ドラマやバラエティも観ていただける。逆の形もあると思いますし、まだまだジャンルは拡張していきたいと考えています。
ーーニュース番組の強化もされているように、今後はリアルタイム配信もさらに増えていくのでしょうか?
薄井:あくまで放送局からコンテンツを受け取ってTVerでも配信ができる構造ではあるので、その点は各局と話し合いながらより充実したものにできればと考えています。ニュース番組を強化しているのも、有事の際に果たせる役割が予想以上に大きいことを知ったからです。2024年のライブ配信の日別の再生数で一番多かったのが、1月1日に発生した能登半島地震に関するニュース関連のものでした。テレビを観ることができない環境にある方でも、ネットに繋げることができれば情報を把握することができる。エンタメ領域だけではない部分でもTVerが果たせる役割はまだまだあるのではと考えております。
ーーそして、2024年は12月の再生数は史上最高値を記録。やはり、『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)などの特番の影響が大きかったのでしょうか?
薄井:『M-1グランプリ』をはじめ、『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ系)「名探偵津田」の回などのバラエティー番組、音楽特番『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)、そしてドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)など、いずれも高い再生数を記録しました。
ーー『M-1グランプリ』では、真空ジェシカがネタの中にTVerを入れていましたね(笑)。ボケとしてTVerがネタになっているのも、いよいよTVerが一般化したと思える象徴的なシーンでした。
薄井:本当にありがたいです。まさか『M-1』のネタで出てくるとは思わなかったので、ビックリしました(笑)。