『ホットスポット』“しょうもないお願い”があまりに面白い まるで“変態仮面”の角田晃広
「実は俺、宇宙人なのね」
主人公・遠藤清美(市川実日子)の同僚・高橋(角田晃広)が宇宙人という本作における最大の秘密事の解禁を持ってスタートしたドラマ『ホットスポット』(日本テレビ系)。第1話では、清美が働くビジネスホテル「レイクホテル浅ノ湖」で起こったテレビ盗難事件の犯人を、高橋の特殊な能力を使って突き止める、宇宙人の説明的回でもあった。第2話では、清美の幼なじみで、小学校の先生の葉月(鈴木杏)からの「しょうもないお願い」に高橋が応えることとなる。
それが、体育館の天井に挟まったボールを取ってほしい、というもの。子供たちに煽られる形で元々挟まっていたボールを取ろうとしたら、2つ追加で挟んでしまった葉月。そのことがすぐさま職員室内でも尾鰭をつけて広まっていき、このままだと卒業式の時まで笑い話にされてしまう。清美、美波(平岩紙)との集まりの中で、葉月は宇宙人である高橋の能力でボールが取れないかと清美に何気なく相談をするのだ。
そして「だめだよ!」と高橋が清美を一蹴するまでが第1話の天丼。だが、清美の説得が上手いのか、高橋が押しに弱いのか、高橋はボール取りを引き受けることになる。監視カメラをくぐり抜け、体育館に侵入し、天井に届く大ジャンプでボールを取るという、いわゆる『ミッション:インポッシブル』のような、またはバカリズム脚本の『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)の高橋のスリリングさの一方で、立ち会っているというていで車で待機しているだけの清美、葉月、美波のギャップがおかしくなってくる。
夜に家を抜け出してのドライブという背徳感も相まってか、3人のテンションは妙に高め。チョコにスナックとお菓子なんかも持ち合わせて、いつもの近況会の延長戦である。『ホットスポット』の前に放送されている『おしゃれクリップ』(日本テレビ系)に平岩紙が出演した際、初公開ということでオンエアされていたのが、この車内の女子トークのシーンだった。ポイントは、3人が本当にお菓子を食べながら会話を進めていること。カフェ「モンブラン」での集まりの場面も同様だが、食べ物を口に入れての会話は、セリフが聞き取りづらくなるというリスクを孕んでいるからだ。そのことを3人は意識させることもなく、自然なトークとして芝居を進めていく。