『御上先生』が指し示す社会と教育の“闇” 松坂桃李が異能の教師に
その男は敵なのか、味方なのか? 受験シーズンまっさかりの1月19日に放送された『御上先生』(TBS系)第1話で、張り詰めた緊張感と胸騒ぎのする空気の中、異能の教師の授業が幕を開けた。
私立隣徳学院高校に赴任した御上孝(松坂桃李)。キャリア官僚の御上は、若手官僚の派遣制度で、東大合格者を多く輩出する県内ナンバー1の進学校に出向する。しかし、実態は左遷に近い。省内の天下りあっせんの責任を取らされる形で、御上は文科省を追われた。受け入れる側の学校もなにやら不穏だ。前年まで担任だった是枝(吉岡里帆)は、自分をさしおいて担任になった御上を快く思っていない。学年主任の溝端(迫田孝也)は表向き慇懃に接するが、内心では御上に反感を抱いていた。
教壇に立つ御上はいかにもエリート然としている。3年2組の生徒たちは好奇の眼差しを向ける。御上の自己紹介が強烈だ。官僚に教師が務まるのかという、ある意味当然の疑念を早々に払拭すると、今後につながる指針を示した。自分は1000人の1人のエリートで全ての試験を1位でパスした。それは「勉強の仕方を知っていたから」。傲岸不遜という言葉が脳裏をかすめる。「君たち、自分のことエリートだと思ってる?」と御上は問いかける。エリートの意味が「神に選ばれた人」であり、一般に考えられているエリートはただの上級国民予備軍だと言ってのけた。
「生成AI」みたいで官僚だから「オカミ」。現役の官僚である御上が生徒たちに何を教えるのだろうと興味津々だったが、御上のやり方は一人ひとりに真摯に向き合いながら、自分たちを取り巻く社会に目を向けさせるものだった。対する生徒の方はまずは様子見と言ったところ。その中で、報道部部長の神崎(奥平大兼)は着任早々「要注意人物」と名指しされ、御上に不信感を抱く。御上の出向の裏に天下りのあっせんがあることを突き止めると、校内新聞でスクープをばらまいた。いわゆる新任教師への洗礼だ。御上は理路整然と反論しつつ「報道で何がやりたい?」と問いかける。記者クラブで横並びの報道をする既存メディアを神崎は批判。しかし、御上は「志だけで変えられるならとっくに変わってる」と言ってこう続けた。
「君が記事にしたことは闇なんて御大層なことじゃない。ただの日常だよ」