サンドリオンの解散を惜しまずにはいられない 佐藤純一(fhána)×鷲崎健が“音楽ユニット”としての稀有な魅力を語る
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声優ユニット サンドリオンが、昨年12月25日開催のワンマンライブをもって約8年におよぶ活動に幕を閉じた。2017年3月10日に結成。メンバーの卒業・加入がありながら、黒木ほの香・小峯愛未・小山百代・汐入あすかの4名体制で2023年には日本コロムビアからメジャーデビューし、テレビアニメ『星屑テレパス』『ワンルーム、日当たり普通、天使つき。』と順調にタイアップを重ねていたタイミングだったため、突然の解散の報に驚いたファンも多かったのではないか。
解散ライブを行った12月25日には、オールタイムベストアルバム『SoundOrion Memorial BEST !!!!』とソロコレクションアルバム『サンドリオン Solo collection BEST』を発売。リアルサウンドでは、サンドリオンに楽曲提供/作品制作にて関わった佐藤純一(fhána)、ラジオ『鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト』で度々共演しているパーソナリティの鷲崎健の対談インタビューを行った。メンバーとの思い出を振り返りながら、サンドリオンというグループの音楽性/ユニットとしての魅力をたっぷりと語ってもらった。(編集部)
鷲崎&佐藤が振り返る、サンドリオンの第一印象
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ーーまずはお二人とサンドリオンの接点についてお聞かせください。サンドリオンのメンバーとの最初の出会いは?
鷲崎健(以下、鷲崎):僕がやっているラジオ番組にゲストで来ていただいたのが最初でした(※『鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト』2019年11月28日オンエア回に黒木ほの香・小山百代が出演)。たしかもよちゃん(小山)が、小峯(愛未)さんと初めて会ったときにボールペンを借りパクされて一緒にやっていけるか不安に思った、みたいな話をしていた気がする(笑)。その後もメンバーには何回かゲストで出てもらっているんですけど、もよちゃんと汐入(あすか)さんには『ヨルナイト』のマンスリーアシスタントをやってもらったこともあるので(※小山は2021年12月、汐入は2024年3月のマンスリーアシスタントを担当)、特に接点が多いのはその2人ですね。
佐藤純一(以下、佐藤):僕も初めて会ったのは小山さんでした。fhánaで『アニサマ』(『Animelo Summer Live 2019 -STORY-』)に出演したときに、スタァライト九九組(※小山が出演しているコンテンツ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』のユニット)にご挨拶したのが最初だったので、僕の中で小山さんは“レヴュースタァライトの人”という認識だったのですが、その後、「再生讃美曲」(『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』EDテーマ)を楽曲提供したときにご本人からサンドリオンというユニットをやっていることを聞いて、マネージャーさんから誘われてライブを観に行ったこともありました。その後にサンドリオンの1stアルバム『märch』(2022年)のマスタリングを担当することになって、その詰めの作業にメンバーも全員立ち会ってくださって。その流れで「星のLarme」も提供させていただくことになりました。
鷲崎:アルバムのマスタリングのみをお願いされることってあるんですか?
佐藤:いえ、その時が初めてでした。当時、サンドリオンはスターダストプロモーションの自主レーベルから作品をリリースしていたのですが、その頃に音楽ディレクターを担当していた小早川(慎一郎)さんという方が、自分でチケットを買ってfhánaのライブを観に来てくれていたくらいのファンだったみたいで。僕がマスタリングしたfhánaや自分の作品の音を聴いて声をかけてくださったらしいです。
鷲崎:佐藤さんがアルバムのマスタリングを担当したという話を聞いた時は結構びっくりしたんですよね。全曲をマスタリングしてもらうということは、音楽としての筋を通す作品を作ろうとしているんだなと思って。素人みたいなことを聞きますけど、やっぱりマスタリングはやる人によって全然変わるわけですよね?
佐藤:そうですね。写真を撮影した後にフィルターをかけたり、レタッチして整えたりすると思うんですけど、それのサウンド版みたいな作業がマスタリングで。あのアルバムは色んな作家の方が楽曲を提供されていて、スタジオで録音された楽曲もあれば、DTMや宅録で作られた楽曲もあるので、楽曲によって質感が全然違うんですよね。それをひとつの方向にまとめていくのはかなり苦労しました。
鷲崎:でも、すごく面白かったです、あのアルバム。表現が難しいですけど、都会的とも違う、マジカルなものがあって。それもたまたまマジカルなものを手に入れたというよりは、マジカルなものにしようと思って作ったんだろうなとも伝わってきたし。
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ーーメンバー個々についてはどのような印象をお持ちですか?
鷲崎:もよちゃんはすごく明るい人に見られがちですけど、初めて会った時から暗そうだなと思ったのを覚えています(笑)。これはラジオで聞いた話なんですけど、彼女は子供の頃にセーラームーンに憧れて、地元の北海道の小さな劇団に所属していた時、記念受験で受けたオーディションに合格して、10代で夢が叶ってしまうんですよね(※小山はミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で水野亜美/セーラーマーキュリー役を担当)。で、それが終わって札幌に戻った時に、何をしていいのかわからなくなって無為な生活を送っていたらしいんですよ。それに起因するものなのかわからないですけど、初めて会ったときから心のどこかががらんどうだなと感じました(笑)。別に普段は暗いわけでもないけど、きっと内に抱えるものを触媒にしてステージで輝くタイプなんだと思います。
佐藤:確かに僕も明るいイメージはあまりなかったです(笑)。番組や大勢いる場所でのやり取りを見ていても、バランサータイプと言いますか、自分が会話の中心になるのではなく、周りの様子を見てパスを出したりするタイプ、控えめな人というイメージがありますね。
ーーリーダー気質なんでしょうね。
鷲崎:汐入さんはメンバーの中ではかわいい担当と言うか、“かわいいマッスル”“かわいい筋シックスパック”みたいな人ですけど(笑)、実は発想力がおもしろくて大喜利力があるんですよね。サンドリオンだと小峯さんと黒木さんがその役割を担っているイメージが強くて、何かの言葉に対して瞬間的に一番遠いところまで行ってタッチするゲームがあるとしたら、黒木さんがメンバーの中で一番長けていると自分でも思っているだろうし、実際に面白いですけど、意外と汐入さんがその能力を持っていることは広く伝えたい。
佐藤:汐入さんは話しやすい方ですよね。
鷲崎:それと小峯さんとは実際に会う前に他のメンバーから「いやあ、ここに小峯がいたら」「そこは小峯がすごいんですよ」みたいなことをずっと聞いていたので、周りからすごく愛されている人なんだなって思っていました。「小峯はおもしろいからコーチャーズボックスに置いとこうぜ」みたいな(笑)。僕はこの4人になってからのサンドリオンしか知らないので、それ以前の関係性はよくわかってないですけど、いいバランスだなって思います。だから解散は大変残念です!