藤井 風、Blu-ray＆ライブCDで再発見する日産スタジアム公演の特別さ　サブスク時代にパッケージ化する意義

　藤井 風の日産スタジアム公演『Fujii Kaze Stadium Live "Feelin' Good”』を収録したLIVE Blu-ray＆CDが12月25日にリリースされた。

　8月24日、25日の2日間にわたって開催された日産スタジアム公演は、藤井にとって自身最大規模のワンマンライブとなった。また、彼が日本国内でライブを行うのはこの時が約1年半ぶりであり、本人やファンにとっても特別な2日間となった。今回リリースされたLIVE Blu-ray＆CDは、DAY2にあたる8月25日の公演を中心に記録したもの。先んじて同作の本編映像はNetflixにて配信されているが、それが今後残り続ける保証はどこにもない。気づいた時には配信期間が終わっていた……ということも往々にある。そういう意味でもBlu-ray・CDという形を持ったアイテムが半永久的に手元に残り続けることは、それだけでファンにとって大きな価値がある。

　LIVE Blu-rayのDISC 1（演出／監督：山田健人）は、ライブ本編全23曲を収録したもの。筆者はDAY1を現地で観ていたが、DAY1がそうであったように、きっとDAY2も、その日だからこその特別な瞬間の数々を観られたのだろうと思っていたため、今回の作品化が発表された時は思わず胸が高鳴った。

　ライブ会場だからこそ観られるもの、感じられるものがあることは大前提だが、一方でライブ映像ならではの魅力も大きいと今作を観て強く感じた。藤井の表情の細かな機微や、ピアノ＆サックスを奏でる時の繊細な指づかい。インタールード「CASTIG CALL」をはじめとした各映像演出に宿る緻密なこだわり。また、ステージ上に建設されたガレージの中の小道具をはじめとした美術など。このように例を挙げていくときりがないが、現地に参加した人にとっても、ライブの細かなディテールに触れることできっと新しく得られる発見や気付きが多くあると思う。藤井のビジョンを高い解像度で理解しているスタッフたちが手掛けた撮影や編集も素晴らしく、作品全編を通して、ライブ会場の高揚感や臨場感をはっきりと体感（追体験）することができる仕上がりになっている（ちなみに入場シーンや一部MCなど、Netflix版で若干カットされている部分も収められている）。

　公演の詳細については、DAY1のライブレポート（※1）に書き記しているのでここでは割愛するが、総じて、改めて思ったのは、今回の日産スタジアム公演は、藤井のキャリアに限らず、日本のエンターテインメント史にとっても非常に重要なライブになるであろう、ということだった。

　そう思った最たる理由は、エンターテインメントショーとしての圧倒的な完成度の高さだ。歌、バンド演奏、コーラス、ダンス、映像、照明、特効をはじめとした数々のプロフェッショナルたちの総力を結集させて作り出された今回の公演は、壮大な総合芸術とも呼ぶべき次元へと到達したものだった。しかも、エンターテインメントショーとしてのスケールの拡大と、細部への緻密な意匠が共存しているから驚かされる。2020年代前半の日本のエンターテインメント史の輝かしいハイライトとして後年まで語り継がれていくであろう今回の公演は、後進のアーティストやクリエイターにとってのロールモデルの一つとなるはず。だからこそ、フィジカルの作品として同公演の記録が世に残ることの意義は非常に大きいと感じた。

　また、藤井が序盤のMCパートで、「これは、僕のコンサートではありません。これは、みんなのコンサートです」「This is your show.」と語っていたことに通じるが、今作は、ステージ上だけではなく、ライブ会場にいる一人ひとりの観客の姿もしっかりと収めている。個人的には、ライブ冒頭、アリーナの中央に設置されたピアノで藤井が「summer grace」を奏で始めた時、後ろの観客が見えやすくなるように、ピアノの周囲の観客が自然と着席し始めたシーンが忘れられない。また、藤井が「満ちてゆく」を歌い始めた後、観客が次第にスマホのライトを灯していくシーンもとても感動的だった。DAY1のラストのMCで、藤井は観客のことを"仲間"と呼びかけていたが、一人ひとりの"仲間"の姿をしっかりと記録している点も、とても彼の作品らしいと思う。