決してカレー屋ではない「夜のインド料理店」の楽しみ方を本気でプレゼンしてみる(1回目)

インド料理=カレー、そして外食のカレーは昼に食べるもの、というのが一般的な認識だとは思います。しかしこの記事ではイナダシュンスケさんがあえての提言。「インド料理店には夜に行け!」そして「インド料理店=カレー屋ではない!」というもの。イナダさんによると実は夜のインド料理店は、居酒屋やイタリアンにも負けない料理コンテンツの宝庫。でも日本ではインド料理=カレーのイメージが強すぎてそこに気付いていない人が圧倒的なんだとか。これはもったいない! というわけで、今回こちらの記事では「夜のインド料理店」の楽しみ方の一例をプレゼンしていただきましょう!(銀座のグルメカレー

決してカレー屋ではない「夜のインド料理店」の楽しみ方を本気でプレゼンしてみる(1回目)

タンドリーチキン

皆さん、インド料理といえばまず何を思い浮かべますか?

なんて質問するまでもないですね。インド料理といえばカレーです。

「インド料理店=カレーを食べに行くとこ=カレー屋さん」というのが、一般的な認識だと思います。

日本人はみんなカレーが好きです。でも、外食のカレーってお昼に食べることが圧倒的なのではないでしょうか。インドカレーも例外ではなく、どこのお店も、お昼はお客さんでいっぱいだけど夜はガラガラということが多いようです。

しかし! ここで僕はあえて主張したい。

 

「インド料理店には夜に行け!」

 

「え~」、という声が聞こえてきそうです。「夜にカレーはちょっと……。せっかく外食するならイタリアンとかフレンチとか焼き肉とか居酒屋とかがいいなぁ」

その意見もわかります。しかしここであえてもう1つ主張したいことがあります。

 

「インド料理店=カレー屋ではない!」

 

どういうことか。実は夜のインド料理店は、居酒屋やイタリアンにも負けない料理コンテンツの宝庫なのですが、日本ではインド料理=カレーのイメージが強すぎてそこに気付いていない人が圧倒的です。これはもったいない! というわけで、今回は「夜のインド料理店」の楽しみ方の一例をプレゼンして行こうと思います。

 

この記事でご紹介するのは銀座博品館の6階にあるインド料理店「カーン ケバブ&ビリヤニ」さんです。カーンは社長さんのお名前。写真左の方です。

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社長さん自身が料理人で「スパイスに関することはなんでもお手のもの」とのこと。頼もしいですね! そして店名の中に「ケバブ」と「ビリヤニ」。推し料理はこの2つってことですね。

インド料理でケバブとは、タンドール窯などを使って焼くスパイシーなグリル料理の総称。有名な「タンドリーチキン」はこのバリエーションの1つということなんです。今回はこのケバブを中心にメニューを組んでいこうと思います。

もう1つの推しが「ビリヤニ」。インドの長粒米とお肉をスパイスで炊き込んだ豪華な炊き込みご飯の1種です。

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こちらのお店のビリヤニ、店名に冠するだけあって絶品なんですが、今回は起用を見送ります。なぜならビリヤニはとてもボリュームがあってそれだけでお腹いっぱいになってしまうので。そしてこのビリヤニは実はランチメニューでも食べることができるので、また次の機会にということにしましょう。ビリヤニを外す代わりに、前菜をしっかり楽しみ、ケバブで盛り上げ、その後少しはカレーも食べ、デザートで締めようという魂胆です。メンバーはこの日のためにしっかりお腹を空かせて臨んだ食いしん坊の男2人。インド料理は1皿のボリュームがしっかりあるので2人でシェアしながら進めていきます。

 

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ナプキンが飾られた席のセッテイングでいきなりテンションが上がります。安くてボリュームたっぷりの料理がこんなビっとしたレストランの雰囲気で優雅に楽しめるのも、夜のインド料理店の魅力の1つです。本当だったら男2人ではなくデートで楽しみたいところですが、無い物ねだりは身を滅ぼすのでその気持ちはそっと心にしまいます。

 

【プレゼンメニュー】

 

 

【冷前菜】スターターの「ライタ」は少し残しておく

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ライタというのは簡単に言うと「スプーンで食べるヨーグルトサラダ」です。塩とクミンなどのスパイスで軽く味付けされたヨーグルトにトマト、きゅうり、玉ねぎなどの細かくカットされた野菜が入っています。上品なタルタルソースという趣もあるヘルシーな前菜はスターターにぴったりなのですが、ライタはあえてここでは全部食べきらず、少し残しておくのがコツ。この後続くスパイスの波状攻撃の合間に口中リセット要員としていい仕事をしてくれます。

 

【温前菜】繊細で豪快、「マッシュルームサグパコラ」がビールに合う

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大きなマッシュルームの間に鮮やかな緑のほうれん草、そして赤く色付けされた衣。ランチタイムのカレープレートではまず出会えない優美な世界がここにあります。

衣が小麦粉ではなくひよこ豆の粉というのがインド式フリッター「パコラ」の特徴で、これだけ厚くても油っぽさはなく、衣自体に単に香ばしいだけではない滋味深い味わいがあるのです。その衣の中でジューシーに蒸されたマッシュルームとほんのりスパイスが香る刻みほうれん草。繊細さと豪快さが同居する一品です。

 

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インド料理の前菜は揚げ物が重要な一角を占めています。ビール派の僕としてはこれがたいへん嬉しい。ビールに揚げ物、しかもそこにスパイスが効いているなんてもはやこの時点で天国ではないですか! 今日はインドビールと共にいただきます。インドのビールは基本スッキリ系が多く、スパイスを洗い流しながらまた次のスパイスを迎え撃つ、そんな楽しみ方ができます。

 

【グリル一品目】「ハリヤリチキンティッカ」はインド本来の複雑で立体的な味付け

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こちらのお店の推しであるケバブ系のメニュー、これだけズラリと並んだ中から選ぶのはタイヘンです。うれしい悲鳴です。が、今回はまず僕がこの店で個人的に一番好きな料理のひとつをチョイス。それがこのハリヤリチキンティッカです。チキンをミント、パクチー、スパイスなどで漬け込んでタンドール窯で焼いた料理。

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ハリヤリチキンティッカはインド料理店の定番メニューの一つなのですが、残念ながら日本はハーブの代わりにほうれん草ペーストが使われるレシピが定番化してしまっています。なのでこちらのお店のようにミントもパクチーもガンガンに効かせる本来のスタイルはとても貴重。パクチーのペーストはタンドールでしっかり火が入ることで青臭い刺激臭が飛び、甘美な芳香だけを残しています。そこにミントの爽やかさとスパイスの底味。複雑で立体的な味わいに蕩然となります。

 

【グリル二品目】世界水準の真の「タンドリーチキン」の旨味

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グリルもう一品を何にすべきか、ハゲ上がるほど悩みました。羊肉もいいし野菜系も捨てがたい……。しかし今回は初回のプレゼンという点も考慮しつつ、あえてのド定番に。

ああタンドリーチキンか、と思うかもしれませんが、こちらのタンドリーチキンは一味も二味も違います。タンドリーチキンというとインド料理店のランチのプレートにもよくおまけ的に乗っかってくる硬くてパサつき気味のやつとか、インド関係ない店でなぜか出てくるカレー味の焼き鳥みたいなやつを思い浮かべるかもしれませんが、これはまったく違います。

チキンは旨味を湛えたまましっとりと柔らかく、骨の際まで複雑なスパイスが浸透しています。ヨーグルトとレモン汁でしっかりと酸味を効かせて漬け込まれているのも特徴。そしてタンドール窯ならではの炭焼きの芳香。このタンドリーチキンを食べれば、タンドリーチキンという料理がなぜ世界中で有名な人気料理なのかがはっきりわかるんじゃないでしょうか。

そして僕はここでワインに切り替えました。このどっしりとしたチキンとスパイスの旨味を、しかと受け止めよ、赤ワイン!

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【カレー】インドカレーの真髄ここにあり!「ベイガンバルタ」と「ロティ」

ここまでで既にかなり満足なのですが、折角なのでカレーもお迎えしましょう。

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インド料理店のカレーというと、なんとなく誰もが「バターチキン」などのチキン系やキーマカレー、あるいはインドカレーが少し好きになり始めた人ならマトンカレーあたりをチョイスしがちですが、夜来たらその辺りは無視しましょう。なぜなら夜のインド料理店には昼には食べられないスペシャルなカレーがたくさんあるからです。

特にお勧めしたいのは野菜系のカレー。極論すればインドカレーの真髄はベジ(菜食)カレーにあり!です。チキンカレーやマトンカレーがおいしいのは言うなれば当たり前。野菜だけのカレーと聞くと「物足りない味なのでは」と心配になってしまうのが日本人の感情かもしれませんが、こちらのようなお店であれば絶対にそんなことはありません。はい、言い切った! スパイスの力をもってすれば野菜だけでこんな圧倒的な満足感が創出されるのか!というミラクルがそこにあります。

今回はそのミラクルがとても伝わりやすいカレーとして、焼きナスを刻んで玉ねぎやトマトと共に仕上げた「ベイガンバルタ」をチョイスしました。こちらのベイガンバルタにはそこに揚げたナスまで加わってさらにゴージャスです。そして野菜だけなのにすごいコク。これがまた赤ワインに抜群に合います。今回は中盤でしっかり肉料理のグリルを堪能したので、野菜によるこの別ベクトルのコクが満足度を最大値まで跳ね上げてくれるのです。

そしてこういうカレーにはやっぱりナンじゃなくてロティですね。ナンと違って甘くもオイリーでもなく、全粒粉と塩と水だけのキッパリしたリーンなおいしさが、こういう時にはぴったりです。

 

【ダメ押し】胃がパンクするのを覚悟で骨付きマトンシチュー「ニハリ」

などとさんざん野菜推しをしておきながら、我々はバカなので丼いっぱいに出てくる肉料理もさらに追加してしまいました……。

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ニハリは言うなれば骨付きマトンのシチューです。ほら、あれです、さんざん飲み食いした後にこってりした豚骨ラーメンで締めたくなるあの感じです。とろける羊肉と共に濃厚な汁をズズっと啜って、もはや豚骨ラーメンを超えて二郎です。

普通の人は真似してはいけません。胃がパンクします。ニハリもビリヤニ同様ランチメニューとしても楽しめますので、皆さんは日を分けてまたの機会にどうぞ。

 

【デザート】スパイス満載料理の終着駅「グラブジャムン」と「マンゴークルフィ」

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どちらもインド料理の定番デザート。特にキャラが強いのがグラブジャムン。揚げたドーナツのシロップ漬けです。これを食べるのが初めての同行者に散々「甘いですよ」と脅しておいたのですが、同行者氏は「そんな甘くないですよ。むしろちょうどいい」とバクバク食べてます。満腹感とスパイスで完全におかしくなってます。でも、まさにこの感覚なんですよ! スパイス満載の料理から続くこの甘さが天国の終着駅。後はアツアツのチャイをすすりながら放心して腹をさするだけです。

 

という感じで、夜のインド料理店では昼とは全く別次元のこんな楽しみ方ができますよ、というお話でした。

そしてそれはフレンチやイタリアン、和食などのコースともまた違う、新鮮な魅力に溢れています。皆さんもぜひ体験してみて下さい!

 

 

紹介したお店

カーン ケバブ ビリヤニ 銀座店
〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-11 博品館ビル
2,200円(平均)975円(ランチ平均)

 

著者プロフィール

著者 イナダシュンスケ

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鹿児島県出身。京都大学卒業後、食品メーカー勤務などを経て円相フードサービスを設立。多ジャンルの飲食店を経営する傍ら、食文化に関する著書も手がける。最新刊に『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社刊)

イナダシュンスケ「みんなのごはん」過去記事はこちら

                             
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