こんにちは、バーグハンバーグバーグの柿次郎です。登山漫画『岳』に影響されて以来のコーヒー好きで、1日2杯〜3杯は飲んでいます。おしっこは1日10回は行く頻尿です。良い薬があったら教えてください。
さて、最近コーヒー業界の話題を一挙にさらっているのが“サードウェーブコーヒー”と呼ばれるカルチャーの代表格『ブルーボトルコーヒー』。2月にオープンした清澄白河店では、オープン初日に大蛇のような行列ができていました。
「もう物売るっていうレベルじゃねぇぞ!オイ!」という声が聞かれなかったのは、落ち着いた時間を求めるコーヒーファンだからかもしれません。転売もできないし。
ただ、あまり知られていない事実があるんです。
それは・・・
●ブルーボトルコーヒーは豆だけなら並ばずに買える!
そうなんです。豆だけを購入する場合、イートイン、テイクアウトと違う列で対応してもらえるため、ほとんど並ばずに買えるんです!
並ばずに買えるんです!
大事なことなので2回言いました。といっても、普段コーヒーを自宅で淹れない人にとって、コーヒー豆単体の価値はゼロに等しい……。前々からムカついていた人に「NYで流行ってるコーヒーのお菓子です。素材本来の味わいを楽しんでください」と騙して食べさせるか、公園でコーヒー好きのハトに投げ与えるぐらいしか使い道がありません。
というわけで、まずは「自宅でコーヒーを淹れるために必要なグッズ」を紹介します。
●自宅でコーヒーを淹れるために必要なグッズ
そもそも、コーヒー豆を取り扱っているお店で選べるのは「豆をそのまま」or「ペーパードリップ用に挽いてもらう」の2択です。初心者はペーパードリップ用に挽いてもらっても大丈夫ですが、挽いたその日から空気に触れて酸化し、風味や味わいが落ちてしまうデメリットがあります。毒状態のRPGご一行様みたいなもんです。
今回は「豆をそのまま」買った場合にオススメのグッズを紹介します。
- 豆を挽く「ミル」
- 挽いた豆を包む「ペーパーフィルター」
- お湯を細く均一に注ぐ「ケトル」
- コーヒーを淹れる「ドリッパー」
この4点は最低限必要。Amazonやぐるなび食市場などで気軽に手に入る商品も並べておくので、商品詳細やレビューを参考にしてみてください。
僕は2種類のミルを使い分けています。写真左は登山やキャンプなど、アウトドアに活躍する携帯用「ポーレックス セラミック コーヒーミル ミニ」。手動でゴリゴリと豆を挽く感覚は割とクセになり、電動熱が伝わらないため豆が劣化しにくいとも言われています。写真右は気軽に使える電動ミル「Melitta セレクトグラインド」。豆の粗さも調整できて、スイッチひとつで挽けるので超ラクです。
自宅で使っているケトルはIKEAの安物ですが、専用のコーヒードリップポットがあると便利です。また、コーヒー好きの中では最強とされている「ハリオV60シリーズ」は、ドリッパーとサーバーがセットになっていて約1,000円なので超お得です!
●コーヒーサーバーセット
Amazon.co.jp: ハリオ V60 コーヒーサーバー02セット BR VCSD-02CBR: ホーム&キッチン
●ペーパーフィルター
Amazon.co.jp: ハリオ V60用ペーパーフィルター 01M 1-2杯用 100枚入り VCF-01-100M: ホーム&キッチン
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●コーヒードリップポット
とりあえずコレだけ揃えればOK! 後はUCC提供「おいしいコーヒーの入れ方」を参考にすれば、一般的なコーヒーは美味しく飲めるはずです。
え……?
いきなり突き放し過ぎじゃないかって?
実は調査を進めるうちに、ある大きな事実に気づいてしまったんですよ。サードウェーブコーヒーは、これまでのコーヒーの常識と大きく違う部分があり、間違った知識で日本に広まっていると。ここからはプロの意見を聞かないと前に進めません。
●あまり知られていないサードウェーブコーヒーの真実
というわけで訪れたのは、東急目黒線「奥沢駅」徒歩1分にある『ONIBUS COFFEE』さん。3年前にオープンして以来、自家焙煎の“浅煎り”の豆にこだわり、サードウェーブコーヒーの正しい飲み方を突き詰めて提供しているお店です。
オーナーの坂尾篤史さん(31)。26歳のときに海外旅行中に出会ったサードウェーブコーヒーに感動し、そこから約2年半の修行期間を経て独立。現在は渋谷道玄坂に『ABOUT LIFE COFFEE BREWERS』も出店しているそうです。ヤリ手の経営者!!
そもそも、サードウェーブコーヒーの定義ってなんなんでしょうか?
「安価で流通できて、コーヒーが大衆に親しまれ始めたのが1970年以前の『ファーストウェーブ』。日本でいう喫茶店ブームですね。そしてスターバックスやドトールなど、“深煎りの豆”を使いロゴ付きのコーヒーチェーン店として人気が出た1970年代から2000年ぐらいまでを『セカンドウェーブ』としています。そしてここ数年の『サードウェーブコーヒー』とは、“持続性のある取引”と“透明性のある食材”を可視化できる仕組みをベースに置いた文化ですね」
要するに、日本でも産地直送野菜に生産者の写真が貼られているように「コーヒー生産者の価値を見出して配慮し、その高品質の豆を丁寧にハンドドリップで淹れて、本来のコーヒー豆の素材の味わいを楽しもう!」という認識で大丈夫です。
ONIBUS COFFEEが仕入れているコーヒーの生豆。焙煎前は白い!
「そもそものコーヒー文化に対してカウンターカルチャー的に進化させたのが“サードウェーブコーヒー”。北欧、メルボルン、ポートランド、サンフランシスコを中心にコーヒーの価値観が変化し、品質基準を担保したスペシャリティコーヒー×単一農園のシングルオリジンで土地特有のフレーヴァーを楽しむようになりました。簡単に言えばワインの文化に近い楽しみ方ですね」
さらに掘り下げるとセカンドウェーブまでの“深煎りの豆”は、大量消費を前提としているためお世辞にも高品質の豆とは言えないんだとか。そのため、苦味を打ち消すためのドリップ技術や砂糖、コーヒーフレッシュを入れる飲み方が普及したそうです。
「豆の雑味や苦味を誤魔化すために根付いたのが日本のコーヒー文化。コーヒーを飲むと胸焼けがしたり、気持ち悪くなったりして苦手という一定層がいるのは、その文化の弊害とも言えるかもしれません」。
かくいう僕も元々はコーヒーが大の苦手で、「こんな苦い黒水をよく好き好んで飲むわ!」と理解できませんでした。しかしある日、雑味も苦味もないコーヒーと出会ってから価値観が一変し、今やコーヒーを飲まないと落ち着かないほどのコーヒー中毒者となってしまいました。
●プロにサードウェーブコーヒーの淹れ方を聞いた
ようやく本題。自宅でサードウェーブコーヒーを自宅で美味しく淹れるためには、どういったやり方が適切なのか? また、従来のコーヒーの淹れ方とどういった違いがあるのか?
まずは坂尾さんに従来のじっくりと時間をかけたドリップ手法でサードウェーブコーヒーにあたるONIBUS COFFEEの「ケニア」を淹れてもらいました。
僕が自宅で実践しているのは、コーヒー豆の中心の60〜70%ほどに湯がまわるようにして蒸らし、1分ぐらい待ちます。その上で「のの字」を描くように細くゆっくりお湯を注いで、適量をドリップし終えたら終了。坂尾さんの場合、より丁寧に淹れてくれている印象です。これが普通なのでは?
味見してみると……
すっぱぁーーーー!!!
思わず10日間履き続けた苦学生の靴下を舐めたときのような顔をしてしまいました。あれ? 普段自宅で淹れたときは、ムラはあれどここまですっぱくならないんですが、浅煎りのサードウェーブコーヒーだとこうなっちゃうんですね……。
「これが豆に合っていない淹れ方です。コーヒーの『酸味』と『すっぱい』は意味合いが違って、不適切な淹れ方をすると本能的に拒絶するような『すっぱさ』が前に出てしまい、正しく淹れると香りが引き立つような『良い酸味』が出るんです。次は当店のサードウェーブコーヒーに合った淹れ方を実践しますね」
ええええええええっ!!!?
ちょっと、なにやってんのー!?!?
少しずつ時間をかけて蒸らさず、いきなりスプーンでバシャバシャしてる! こんな淹れ方で大丈夫なんですか。無理矢理、次世代のフォースウェーブコーヒーの文化とか作ろうとしてませんか!?
「高品質の浅煎りの豆を使っているので、じっくり淹れる必要はありません。ただ、しっかり蒸らす必要はあるのでこのようにスプーンでかき混ぜるのが効果的なんです。深煎りの豆は質量が少なく、お湯を注ぐと浮く性質が。一方、浅煎りの豆は質量が詰まっているのでお湯を注いでも沈んだままになるため、短時間で適量を淹れることが大切なんです。当店自慢の『ケニア』のお味はいかがですか?」
おおっ、従来のコーヒーとは全然違う飲み物だこれ! 美味い!! 色は紅茶のように薄く、ほどよい酸味が舌を刺激し、余韻でフルーティーな香りと甘みが口と鼻からフッと抜けます。ワインのような楽しみ方というのも理解できるほど。身体に優しい感じもしますね。
「この違いがサードウェーブコーヒーの大きな特徴ですね。浅煎りの高品質の豆は、コーヒー本来の素材を生かすべきなんです。ただし、自家焙煎から適切な技術を身につけるためのハードルが高いですし、小さなミスの積み重ねで素材の風味が激変してしまう恐れもあるため、シビアなコーヒーともいえるかもしれません」
なるほど、なるほど。正直、これまでのコーヒーに対する価値観が変わるほどの体験でした。従来の真っ黒なコーヒーも慣れ親しんだ美味しさがありますし、どちらかが特別に秀でているわけではないんですが、正しい知識を知っているだけでコーヒーとの付き合い方が変わりそうです。
「もう一点、従来のコーヒーの楽しみ方と違うのは甘いチョコとは合わないことですね。サードウェーブコーヒーは素材を生かしたパウンドやマフィンとよく合います。ぜひ一度、当店でお試しください」
●サードウェーブコーヒーの正しい淹れ方!
というわけで、こちらが日本ではあまり知られていないサードウェーブコーヒーの美味しい淹れ方です。気をつけるべきポイントがいくつかあるので、より正確に淹れたい方は時間と量を一緒に計れる「コーヒースケール」を活用してください。超便利!
それにしても、新しい情報と価値観が入ってきて、コーヒー好きの初心者としては衝撃がすごかったです。とはいえ、慣れ親しんだコーヒーの好みは人それぞれ。大事なのは「コーヒー豆に合った適切な淹れ方を知ること」でした。もうすぐアウトドアシーズンに入るので、山頂で淹れるコーヒーの時間にこの知識を試してみたいと思います。
以上、登山漫画『岳』でコーヒーの世界にハマった男がお届けしました。
●取材店舗
奥沢駅徒歩1分。自由が丘駅からも徒歩8分ほど。コーヒーの淹れ方教室も定期的に開催しているので気になる人はお問い合わせください。Facebookページはこちら
ONIBUS COFFEEでは一部のコーヒー豆をコロンビアで直接買い付けてきたり、自家焙煎機×パソコンという新たな方法で安定したコーヒー豆を提供したりなど、職人的な経営努力に余念がありません。
甘さの中に果実感を感じる事ができる「Onibusオリジナルブレンド」(200g=1,300円)やシトラスやベリーなどの酸味や甘みを感じられる「Kenya カロゴト」(200g=1,640円)など、約7種類のコーヒー豆を取り扱っています。
●ライター:徳谷 柿次郎
株式会社バーグハンバーグバーグのWEB編集者。「みんなのごはん」の担当編集として頑張っていたが、空前の人不足により最近記事も書き始めた。親父の月給8万円レベルの貧乏だったため、グルメに対する感情は割と強い。胃弱なのにコーヒー好き。
Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916