CES2025の最重要テーマは断然「AI」だった
今年も1月7日から10日(現地時間)にかけ、米ラスベガスでCES(Consumer Electronics Show)が開催された。世界最大のテクノロジー見本市であるCESは単なる新製品の発表にとどまらず、テクノロジーの新たな方向性が示される貴重な機会だ。
最初に、本題とは少々離れるが、「CES」の呼び方について書いておきたい。というのも、日本では「セス」と呼ばれるケースがきわめて多いからだ。アメリカでは「セス」と呼ぶ人はおらず、アルファベットそのまま「シーイーエス」と発音する。「セス」は明らかに和製英語なので、筆者個人としては「シーイーエス」にこだわりたいと考えている。
今回のCESでは、人工知能(AI)がテクノロジー界の最も重要なテーマになったことが如実に表れていた。実際、約4500社・団体の約4分の1がAIに関する出展を行っていた。
AI産業の覇権を握るメガテック企業
例えばAI用の半導体やセンサーといった製品、AI活用に不可欠なクラウドやサイバーセキュリティサービス、さらにはAIの進化につながるエッジコンピューティングなどのテクノロジーや、AIを組み込んだ一般消費者向けプロダクトまで、実に多彩な展示が見られた。開幕に先立ち開かれる「テックトレンドセッション」においても、2025年の注目キーワードとしてAIを中心に据えた「デジタル共存(Digital Coexistence)」が掲げられ、AIが社会や生活の身近なところに入り込んでいくイメージが明確に示されていた。
この背景には、AIの基盤技術の外部提供が広がっている状況がある。ただしこれを別の視点で見ると、基盤となるプラットフォームの提供元はマイクロソフト/オープンAIやグーグル、メタ、アマゾン/アンソロピックといった巨大テック企業に偏っている。
しかも、これらトップランナーが提供するAIは、開発スピードでも完成度でも、またバックボーンとなるデータ量や採用するソリューションの数でも群を抜いているため、他の企業にとってはそれらを利用するという選択肢しかない。そんな雰囲気が流れていた中で、1月後半に中国のディープシーク(DeepSeek)がオープンAIの水準を凌駕するような開発をより短期間に低コストで実現したサービスを提供したことへの衝撃は大きかったわけだ。同社については本稿でも関連箇所で触れておきたい。