きっかけ
先日とあるニュース記事を見かけました.
Google、ブラウザ向け「Chromeアプリ」の提供を2018年までに段階的に終了へ(Chromebook向けは対象外) - ITmedia ニュース
僕は今期,授業ノートを(授業中はPC開かせてくれない古い体制の大学なので)自宅に帰ってからMarxicoを使ってMarkdownで書いて整理,Evernoteに投げてタグとノートブック単位で管理,というやり方をしていました.年間$15.99程度の有料エディタなのですが,相当優秀だったのでもはや手放すのは難しいです.デスクトップアプリケーションも存在するのですが,Chromeアプリと比べると動作が不安定な気がしていたので,これを機に他の可能性も探ってみようかと.
とりあえず備えていて欲しい機能の目標として以下
- 補完機能がある
- プレビュー機能がある
- 数式が書ける
- GFM(Github Flavored Markdown)対応
- できれば.md以外に出力方法がある(pdfやhtml)
- マルチプラットフォーム
Markdownとは
知らない人も居ると思うので追記.
Markdown(マークダウン)は、文章の書き方です。デジタル文書を活用する方法として考案されました。特徴は、
- 手軽に文章構造を明示できること
- 簡単で、覚えやすいこと
- 読み書きに特別なアプリを必要としないこと
- それでいて、対応アプリを使えば快適に読み書きできること
などです。Markdownはジョン・グルーバー(John Gruber)によって2004年に開発され、最初は Daring Fireball: Markdown で公開されました。その後、多くの開発者の手を経ながら発展してきました。
日本語Markdownユーザー会より引用
要するに,文章においてのタイトル付けや強調,表の作成などをタグ付けで行うことができる軽量の言語になります.詳しい使い方はググってください.
今回はMarkdownを書く上で便利なエディタとその活用方法を探っていきます.
Marxico
とにもかくにもまずはこいつの紹介を軽くしておきます.
良いところ
- 動作が安定しており,長文を書いたり画像を貼りまくっても意外と重くならない.
- シンタックスハイライト,数式,フローチャート,シーケンスの記法に対応.
- Evernoteにプレビュー形式そのまま投げれる.画像や数式,フローチャートなどのベクター図形も埋め込んでくれる.
- CSSで自由に見た目をいじれる.
- htmlタグをそのまま記述しても良い(markdownでサポートされてない形式のタグを使える)
- マルチプラットフォーム
- markdownのくせに画像サイズを指定できる
Evernoteとのリンクが非常に強力です.タグやアップロード先のノートブックや付けるタグも@(ノートブック名)[タグ1,タグ2]
といった感じで先頭に記述しておけば振り分けてくれますし,[TOC]
による目次生成もサポートしています.
またHTMLで出力した場合も画像やベクターの埋め込みが有効です(base64で埋め込んでるのかな).
微妙なところ
Evernote側から編集できないのは,おそらく埋め込みの関係でEvernoteがわからいじると表示が崩れるからではないかと思うのですが,ちょっとした修正点を発見したときいちいちMarxicoを起動しないと修正できないのは少し不便です.
無料で使えるエディタも多数ある中で年間$15以上取るのはなかなか強気ですが,個人的にはその分の価値が十分にあると思います.課金はEvernoteアカウントに紐付けられる(作者に問い合わせて確認済み)ので,一度課金すれば他のPCでも同様にプレミアムになれます.
がっつりEvernoteもプレミアムにして使うなら年間5000円近くをほぼノート管理のためだけに使うことになるので,ここに価値を見いだせるかどうかが分かれ目だと思います.
ノートの管理方法
Evernoteと連携しているので,保存先が全てEvernoteになります.とても楽.
画像等も気にせず保存できますが,あまり大きな画像を頻繁にアップロードすると標準アカウントの人はEvernoteの上限にひっかかる可能性があります.
タグとノートブックで管理でき,Evernoteクライアントを入れておけば印刷も自由自在.共有もEvernoteの標準機能でできますが,Evernoteアカウントを持っている人同士に限られます(持ってない人は作成することで共有可能).
総評
ChromeBookを持っているなら間違いなくこれがベストだと思います(chromeアプリのサポート対象内なので2018年以降も使える).Evernoteのプレミアムを持っている人も持っていない人も,フォルダで管理するより遥かに楽になって検索もすぐできるのでおすすめです.
反面,課金が必要となるのでクレジットをもっていない人は10日のトライアル期限を過ぎると使えません.クレカを作ってPayPalアカウントを取得してください.
編集機能およびプレビュー機能はピカイチで使い勝手も良いですが,chromeアプリが消えると厳しいかもしれません.一応デスクトップアプリケーションもあるんですけどね.
Atom
言わずと知れたかのGithub製のエディターです.
良いところ
- 無料
- 豊富なパッケージ.
- 他の言語にも拡張可能.
- 軽快な動作
- GFMはデフォルトで対応
- ローカルでのフォルダ管理
とにもかくにもパッケージが豊富なのでカスタマイズが容易です.細かいところに手が届きますが,Google力が必要そう.
- markdown-writer … タグ補完
- markdown-scroll-sync … プレビュー画面とエディター画面のスクロール同期
- mathjax-wrapper … 数式周り
- markdown-preview-plus … 通常のpreviewは無効にしておくこと(Ctrl + Shift + Mでプレビュー画面を出せる)
- markdown-toc … 目次生成
今はこんな感じの追加パッケージを導入しています.フローチャートやシーケンスに関してはパッケージを発見できなかったため,使えませんでした.数式も動いたり動かなかったり…
専用のエディタと比べると最初からできることが少ないので玄人向きといったところ.
微妙なところ
- クラウドで管理しようと思うとなかなか大変
- パッケージごとの差異があり記法がよくわからない
よくも悪くも玄人向きで,エディターという存在になれていない人には不向きな印象.
ノートの管理方法
管理するとしたらローカルに保存してDropboxやGoogleDrive等のクラウドストレージで共有,でしょうか.しかし.mdを共有しても,表示される形式は共有先の環境に依存するので,同じ環境を用意できる人の間でしか共有できず,またモバイルデバイスからの閲覧も難しいです.
またファイル数が増えてくると著しく検索が難しくなるので上手くフォルダ分けすることが必要となります.
総評
既にAtomを使っている人にはお勧めですが,ノートの管理方法には一工夫が必要です.
情報学徒でなくともgithubに慣れると複数人でノートを共有しプルリクでノートの情報追加や修正ができるので,こういった使い方が本筋かもしれません.
Kobito
Qiitaの元会社が出しているエディタ.
良いところ
- 無料
- 「プログラミングに関する知識を記録・共有するためのサービス」であるところのQiitaに完全対応しているため,コード周りの表示が非常に秀逸
- ファイル管理はKobito内で独自に行われる
- Qiitaにワンタッチで記事を投稿できる
- 記法に関するドキュメントが豊富で数式記述も美しい
- 強力な補完機能
Qiitaのコード表示はGFMよりもさらに上の域にあると思います.コードを頻繁に書くならこれがオススメ.
ただしファイル管理が内部での独自方法になっており,タグの追加などで検索が容易です.エクスポート機能はあるものの使ってみると文字化けしてしまいました…(Win10において).
Macではkobito-cliが公開されており,これを使ってpdf化したりすることができるので便利かもしれません.
微妙なところ
- 間違ってQiitaに投稿してしまいかねない
- フローチャートなどは非対応
- 共有は難しい
Qiitaアカウントを持っていなくても使えるため,自分一人で使うならばこれでも問題ありませんが,やはり単体ではpdf化や印刷ができないため共有には不向きです.
ファイルの管理方法
内部での独自管理となり,共有は難しいでしょう.情報をQiitaに投げて管理するのがよいですが,アップロード時にKobito側で投稿を非公開に設定できるのかはアカウントを持っていないため確かめられませんでした.
Macではkobito-cliを使うことでpdf化できるため,Macならば一考の価値があります.
総評
- 一つの端末でしか見ない
- 共有するときはQiitaに記事として投げる
- コードをとにかく美しくわかりやすく記述したい
こういった人にお勧めです.あまり授業ノート向けでは無いと思います.
StackEdit
ブラウザベースのエディタ.
良いところ
- 基本機能は無料
- ブラウザ上で動作するためプラットフォームを選ばない
- シンタックスハイライト,数式,フローチャート,シーケンスの記法に対応
- github,Dropbox,GoogleDrive等と連携してファイルを保存可能
[TOC]
による目次生成に対応- デフォルトテンプレートの設定が可能
- 補完機能がある
描画が非常に綺麗で,動作もそこそこ軽快です.最初から拡張パッケージがたくさん入っており,これによって上記のような高機能が実現されています.不要ならば外せばさらに軽くなるのではないでしょうか.
微妙なところ
- PDF化には$5/year
- 共有は保存先に依存
- 変換確定時やFキーの動作が怪しい
- Ctrl + Zが使えない
- オンラインでないと使えない
ファイル共有は保存した先で共有リンクを発行する形になるようです.
文字入力周りの動作が怪しいのが少しストレスの溜まるところです.軽快に打っていたつもりがまちがったところにカーソルが移動していたーなんていうことが僕の環境では見られました.Ctrl+Zによる修正が効かないのが地味に痛いです.
また,授業等で電波の入りにくい場所でメモをとる必要がある場合,オンラインでないと使えないため厳しいでしょう.
ファイルの管理方法
github,Dropbox,GoogleDrive以外にもテンプレートのHTMLを利用したHTML出力(整形済みのHTMLを出力できる),markdownとしての出力,WordpressやBloggerなどへの記事掲載等かなり出力の幅がきくため,個人に合わせた管理方法ができそうです.
特に出力先にSSHサーバーを指定できるのが面白いところで,公開鍵認証には対応していないようですが自前のサーバーにアップロードすることもできるようです.
総評
ネットワーク環境が常にあるなら有力な選択肢だと思いました.入力周りの動作は今後のアップデートで改善してくれるといいですね… 課金すればログインできるっぽかったのでそれで設定の同期等が可能になるかもしれません.
課金しなくても標準機能が十分強力ですので,個人的には気に入りました.
まとめ
Sublime Textを忘れてるぞ~とかHaroopad忘れとるやんけ!とか怒られそうですが,SublimeTextはやはり課金して使うべきでそうなるとコストが高くなるように感じたのと,Haroopadはマニュアルが全部韓国語でさっぱりなので避けました.機能だけを見ればHaroopadが圧勝な気もします.
使い方は人それぞれなのですが,色々なソフトウェアが出ており選択肢も豊富なのでいくつか使って合うものを探すのが良いかなと感じました.とりあえず試してみるならStackEditはインストールも不要で無料で使えるのでおすすめです.
Markdownによる記述になれると他のやり方は煩雑に感じてしまいます.紙のノートはかさばるし邪魔だし管理も難しいので,是非電子化してみることをおすすめします.
参考にしてくれる人が居たら幸いです.
続編書きました.