音国史(中国史と音楽レビュー)

音楽・ゲームブログ担当(K)歴史・小説コラム担当(T)

中国でのゲーム購入事情①

今回は珍しくゲームの話題。

 

中国でゲームというとマジコンとかファームウェアをダウングレードして云々とか、そういうグレーもしくはブラックゾーンなイメージしてしまうのですが、残念ながら非常に正しいです。

だけれども一方で正規ソフトの市場もしっかりあって、転売ヤーというよりは個人輸入業者や代行業者からある程度納得できる価格で買うことができます。少なくともメルカリの輸入業者よりは良心的?

高い?安い?

中国でゲームの価格はどのくらいなのか。参考程度にどうぞ。

(送料込み云々は中国に住所がある場合です)


今年夏以降に買ったパッケージ版です。中国では主にSwitchのソフトを買っています。

『IGSクラシックアーケードコレクション』

送料込みで180元(3800円)

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左下のレーティング表示からおそらく台湾版だと思います。目的は『三国戦紀』の2作と『闘幻狂』。『三国戦紀』はカプコンがベルトスクロールから撤退した後、インディーゲームで復権するまでの10年くらいの「ベルトスクロール氷河期」によく遊びました。『闘幻狂』のほうは秋葉原のトライかどこかで見たことがありますが、出回りが悪くて未プレイ。

30元ほど高い豪華版もありますが、英語表記だったのでやめました。中華ゲームは漢字のパッケージがいい。ちなみに『闘幻狂』はこちらだと『神剑风云』というみたいですね。なんかもう一つ別の名前があった気がしますが…(調べたら『神剑伏魔录』でした)

日本では6000円くらいするようですが、中国国内で安いのは当然ですね。

『Rouge Legacy 2』

送料込み380元 8000円弱

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昔のLRGは、日本までの送料も8ドルとか大して高くなかった気がしますが、数年前から突然上がりました。それであまり買わなくなりました。

ゲーム自体が40ドル=6000円強なので送料を含めればトントン。

中国のAliExpress(淘宝)などのショップで買い物する際に、LRGのトレカを付けてくれるかどうかは聞いたほうがいいです。商品説明に写っていない場合は大半は付いてきません。要求すればつけてくれるケースもあるので交渉したほうがいいですね。中には追加で30元くらい取る店もあります。せ、セコい…。

今回のお店はカードを付けてくれなかったです。別で売ろうとしているのか、そもそもLRG以外のネットから仕入れたのかは分かりません。

③『Castle Crashers

送料込み300元(6000円)

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(まだ届いていないので他のショップの写真から引用)

本当はカナダのゲームショップから買おうと思ったのですが、カナダ国内向け、海外発送不可とのこと。送料を考えると多少高い程度の値段なので中国のネットから購入しました。1月初旬まで開発/販売のThe Behemoth公式ショップが閉まっていますし、ちょっと割高なのは仕方ないです。

昔このゲームが遊びたいがためにPSストアUSのIDを取得した覚えがあります。もう15年以上も前なのですね...現在、ゲームを遊ぶだけなら任天堂オンラインストアでも扱っているはずです。ちなみにSteam版はセール期になると148円くらいで叩き売りされています。

store.steampowered.com

Steam(PC)では12月26日現在セール中です。今でしょ!

(リンク先で値段を確認して下さい。定価は1480円ですから注意!)

④『Rusted Moss』

送料込み140元(2800円)

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ちゃんとCDと小冊子も付いてきました。

本来日本で買えばよかったんですけど、発売されていることすら知らなくて、仕方なく中国国内の個人輸入店で購入。多分元々250元(5000円)くらいで売ろうと思っていたようですが、売れ残って適正価格まで下がったのですかさず購入(笑)。

とくにインディー系のゲームは、日本盤が日本と同じくらいか下手したら格安で手に入るかもしれません。

『トップシークレット』『海腹川背』とワイヤーアクションに駄作なし(クソゲーもあった気がする)。

偽物のリスク→今のところ無し

おそらく「中国だし…偽物なんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、今のところ無いですね。

LRGやSRGのシュリンクや包装ビニールは散々触ってきているんで、触ったらすぐに本物だと分かります。再シュリンクという中古レコードの世界のような豪快技に当たったことはありますが、バレバレだし、中身は本物でした。おそらく中古品を新品扱いにしたかっただけだと思います。

偽物については、中国人自身がそういう物に対して敏感で、常に注意しているし目が肥えています。そもそも技術的にもps4世代以降のソフトは偽物を作るが困難、データー改造も含めてその使用もリスキー(永久バン等)だし、基本的に本物かと。

それだけ任天堂ソニー海賊版に対して徹底して対策している証拠です。

10年以上前ですが、XBOX360やDSの時代には偽物が横行していましたね。使うにはシステムを書き換える必要がありましたが、ここではそういう話はやめておきます。

昔中国人ゲーマー友達の家で、初代『ダークソウル』をXBOXで遊んでいたところ、マルチでやりたくなってネットにつなげようと思ったらブチ切れられた思い出があります。

 

(K)

 

 

 

Pink Floyd『Ultimate Boston 1977』(1977年6月27日)

ピンクフロイドもかなりの量のブートレグが出ています。

正直なところピンクフロイドに関しては網羅的に聴くだけの時間と予算がないので、美味しい上澄み液の部分だけをサラッと聴いて楽しみたい。

掲示板を覗いて見ると、どうやら20ショウくらいに絞れそう。

おすすめライブ音源15選

とりあえず『狂気』以降からウォーターズ脱退前までに限定すると(日付は前後するかもしれないが)大体こんな感じらしい。数種類のBBSを本当にざっと斜め読みした感じだから非常に怪しいリストだが、とりあえずの指針としては有用だと思う。

1972年9月22日カリフォルニア

1973年11月4日ロンドン

1974年11月4日エジンバラ(スコットランド)

1974年11月16日〜17日ロンドン

1975年4月26日ロサンゼルス

1975年6月18日ボストン

1975年6月28日オンタリオ(カナダ)

1977年5月6日カリフォルニア

1977年5月9日オークランド

1977年6月27日ボストン

1980年2月27〜28日ニューヨーク

1980年8月4日ロンドン

1981年6月17日ロンドン

とりあえず第一波としてはこれらのおすすめ音源を中心に収集することにしました。

もう既に1975年6月18日のボストンはブログで取り上げました。今日はもう一つのボストン、1977年6月27日の方を取り上げます。

アルバムレビュー

Pink Floyd『Ultimate Boston 1977』

音質:★★★★☆

内容:★★★★☆(激推薦!)

2年前と同じくスティーブ・ホプキンスとダン・ランピンスキーのお二人の音源。何でまたこのお二人を取り上げたかというと、この2人の録音が個人的にかなり好み。

ランピンスキーは低音が弱い“典型的”な隠し撮りなのですが綺麗に撮れた中高音。

ホプキンスも別に低音がばっちり撮れている訳ではないけどランピンスキーよりはどっしりとした録音。

ランピンスキーが好きなら76年のQueenもオススメです。勿論ボストン公演(76年1月30日)です。

77年の「In The Fleshツアー」も後半に入り、タイトな演奏を聴かせるのだが、北米名物の爆竹や大声で叫ぶ観客にロジャーがブチ切れ精神的に病んでいく頃のライブ。そういえばレッドゼッペリンも「爆竹は投げないでくれ」と呼びかけていましたね。このコンサートでも、例えば「クレイジーダイヤモンド1-5」の冒頭でも鳴っています。ライブに爆竹ってイマイチ理解できないのだけど、昔は大らかな時代だったって事なんですかね。

セトリは『アニマルズ』+『炎』+「マネー」「アスアンドゼム」という豪華なもので、前回「77年のセトリからは『狂気』全曲がなくなってガッカリ」と書いたのですが、よりロック寄りのサウンドに移行した『アニマルズ』は、ライブバージョンがアルバム盤以上にカッコいいんですね。

「Dogs」はピンクフロイドのいい部分が全て含まれてます。上質で英国的なメロディーライン、丁寧なアンサンブル、リチャードライトの幻想的なキーボードソロ、ギルモア泣きのギター。75年バージョンのロック然としたダイナミズムも魅力的でしたが、77年バージョンの完成されたアレンジには敵わない。

ロジャーウォーターズの反保守がはっきりと出た「Pigs」、サッチャーをクソババアと罵る(笑)。12:30くらいからギルモアとリックライトの素晴らしいソロが入ります。分かってはいるんだけど17:00からの盛り上がりに興奮するのは、クリムゾンの「Starlesss」と同じ。

「葉巻はいかが」のイントロは随分ハードロックなリフに変化していますね(汗)。ピンクフロイド流ブルースですが、個人的にはこの曲のリックライトのキーボードワークがかなり好きです。勿論後半にはギルモアの強力なソロが入ります。しかもラストのテープエフェクトもちゃんと再現しています(当たり前か)。

また念願の「あなたがここにいて欲しい」がセトリに入りますが、特にライブ映えする曲では無い(失礼)。あとは単純に曲が完成されていて遊びの部分が少ないから、期待したほど嬉しくは無い。スタジオテイクが完璧すぎるというのもあります。

ラストの「アスアンドゼム」は録音なのかマイクの位置が悪かったのか、もう力尽きたかようなコーラスを聴かせてくれます。何となくロジャーウォーターズがツアーに疲れ切ったのが声から感じ取れてしまう。

www.youtube.com

(ANIMALS 2018REMIX 公式チャンネルより)


『アニマルズ』からロック的躍動感がより強まっていて、ライブ音源好きには聴いていて楽しいサウンドになっています。演奏、音の良さはオークランドに勝るとも劣らないので是非聴いて欲しい音源です。

オンマイクによる素晴らしい録音、魅力的なセットリストと演奏。流石に「オススメ」されているだけあります。2枚組に収まっているコンパクトさも加点したい。

 

(K)

 

 

 

 

 

 

Rolling Stones『The Brussels Affair』Art Edition BOX

注:写真は半年ぐらい前に雑に撮ったもの(ブログ用途ではなかった)/取り直して更新するんでとりあえずご容赦を

 

Rolling Stonesがあの73年10月のヨーロッパツアーの音源を『The Brussels Affair』として公式に発売して早10数年。78年テキサスやこのブリュッセルを皮切りに75年のLA、77年エルモカンボ、81年ハンプトン、90年東京など有名音源が次々と公式リリース。欲を言えば20枚組くらいでドバ〜といって欲しいが、ちびちびとしたリリースでも無いよりマシ。

その『The Brussels Affair』BOXなんですが、僕もコロナ禍前に入手。勿論中古で、しかも激安価格でした。

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Rolling Stones『The Brussels Affair』

内容:★★★★⭐︎

梱包の大きさ:★★★★★(困っています…)

今ではさまざまなバージョンがありますが、僕が入手したものは2012年に発売された1973セット限定のオリジナル版。当時750ドルもしたそうです。これが贅を尽くしたボックスセットで、時計、リトグラフ、写真集、3枚組LP、2枚組CD。写真集にはミックのサイン付き。

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買った当時はミックのサインを確認し、CDをさっさとリッピングして“実家の子供部屋”という名の物置きに放置。今年写真を撮るためにまた引っ張り出してきたのですが、ポスターのケースを開けてみると、なんか変な(失礼)白黒写真がついています。

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えーと調べました。

どうやらこの1973セット限定版の中にもランクがあるようです。

①73セット限定の“Art Edition”

②173セット限定の“Premium Edition”

③1727セット限定の“Collector’s Edition”

さらに追加(2ndプレス?)で

④100セット限定 ミックテイラーのサイン入り7インチ付き(欲しい!)

⑤サイン等は一切無い廉価版

で、自分が購入した“変な写真”入りのは“Art Edition”で1500ドルもするそうです(汗)。よく見ると右下に写真家Michael Putlandのサインが確かに書いてあります。

173セット限定のほうは、1973年ツアーポスターにミックのサイン入り。正直そっちの方がいいんですけど…

僕のにもポスターが付いてきますが、残念ながらミックのサイン無し。(本来は)1500ドルもするんだぞ(怒)。ミックもポスターにもサインしてくれよ。

このサインの通し番号はレコード盤の限定番号と共通。29番と非常に若い番号、ということは73番までが“Art Edition”なのでしょうか。

 

内容ですが…勿論73年のストーンズが素晴らしいことを前提に述べると、あまりにも“公式盤”な音質にちょっと慣れていない。ノイズも取って楽器の粒も引き立てて、しっかりおめかししたのだがなんかまた『Nasty Music』やそれに準ずるブートの方を聴いてしまうのです。

ストーンズに限らずですが、ブートを聴きすぎて、あまりにいい音質の公式盤だとちょっと引いてしまう(笑)

ちなみに公式盤の方は2ndショウを中心に編集してある模様。昔僕が買った白いものやVGPの『Nasty〜』は1stショウを中心とした編集だったようです。

「Heartbreaker」のテイラーがいいですね。75年のロニーの時にセトリから外されてしまいますが、確かにテイラー向けの曲ですね。

「Midnight〜」はブートと同じ1stショウからのもの。オフィシャル盤はキースがしっかりと右になっているので全く印象が異なりますね。キースとテイラーの掛け合いからのミックの入りが最高(公式盤9:20)。

個人的には大好きな75年、76年と比べてしまいがちですが、改めて真面目に聴いてみるとテイラーのギターは華があってかっこいいですね。

欠点?

こんな素晴らしいライブアルバムですけど、欠点が何点かありまして...

まず馬鹿でかい。中身はそこまででもないのですが、梱包ダンボールが大きい。そこにちゃんとストーンズのロゴが入っているので「完品」条件に含まれます。だから売るつもりはないけどデカい段ボールを捨てるに捨てられぬジレンマ。

あとは値段ですね。高い。中古盤屋で何回か見かけていますが、中古盤屋も上記の①②③のバージョンについてはそこまで把握していないようです。テイラーの7インチが付いているバージョンだとユニ〇ンで10万円くらいの値がついていました。僕が買ったときは3万円強でしたが、サインなしの廉価版が2万5000円くらいで売っているのを見たことがあります。ジャガー先生のサイン付きというメモラリビア的価値も込みでのBOXだと思います。ストーンズのファンで、収納があるのであれば入手する価値は十分にあります。

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(↑所有している何枚目かのNasty Music P盤?写真はDiscogsから)

今からブート版を買うなら、ナンバリングスティッカーが付いていてリマスターされているやつがおすすめです。中古屋さんで1,500円くらいで売っています。BFの千ブー(千円で買えるブート)でもあったと思います。

 

 

(K)

 

 

私的オススメKing Crimson入門CD

クリムゾン入門!

大半のガイドブックではキングクリムゾンといえばその摩訶不思議な宮殿への入り口として『宮殿』『戦慄』『レッド』辺りが薦められていることが多い。

ちょっと捻って『アイランド』が好きだ!という人や『コンストラクションオブライト』が最高傑作だという奇特な人もいるかもしれないが、スタンダードな入門編としてはやはり前述の3作品からということになっています。

〜キングクリムゾンの歩き方〜

①サブスクでも激安CDでもいいから『太陽と戦慄』『暗黒の世界』『レッド』を10回ずつ聴く。

www.youtube.com

KingCrimsonの公式YouTubeチャンネルで、フルアルバムをタダで聴くこともできます。決して10000円くらいする「◯◯記念リマスター」に手を出さないこと。あれはマニア向けです。予算は②に取っておきます。

②『Road To Red』『Starless』のBOXを買う。聴きまくる。

ヤフオクやユニオン、フリマで安く手に入れましょう。

『Road To Red』は大体13000円から15000円くらいしますが、その内容の素晴らしさとパッケージの充実具合を加味すると安すぎるほどです。何せ20ショウ近い高音質ライブ音源が入っています。ワンショウ1000円?安すぎるほどです。ブート屋でもしこのレベルのサウンドボードを発掘したのであれば余裕で5000円は取ってきまっせ。

『Starless』ボックスのほうは中古ならちょっと安くて10000円から12000円の間くらい。なぜか知らないがBlu-ray部分の不良(変色して再生不可)に二度も当たりました。運が悪いだけ?

ユニオン限定で紙ジャケットボックスが付いてくるものもありますが、それだけで価格が10000円上がります。本来なら「必要ない」と一蹴したいところですが、この紙ジャケットがすごく凝ったものなので、購入の際に考慮する余地あり。

③お終い

その40枚強のCDにクリムゾンの全盛期がすべてパッケージングされています。擦り切れるほど聴きましょう。

飽きたら次はヘンリーカウかジェントルジャイアントを聴くべし。

 

『宮殿』?知らん!

『宮殿』を聴かないなんて北京に行って故宮に行かないようなものだとファンからは非常に冷たい目で見られそうであるが、2万円強でクリムゾンの最強ライブバンドとしての1番脂が乗っている時期を体験できてしまうのです。

あ、『宮殿』も公式チャンネルでタダで聴けるので興味があればどうぞ。

www.youtube.com他の時期を泣く泣く(?)諦めた理由ですが以下の通りです。

まず個人的にはクリムゾンを最高のライブバンドとして認識しているので、スタジオアルバムは基本的にセトリの原曲程度の扱いです。

『宮殿』期は、アルバムは一応名盤とされていますが、まともなライブ音源があまり無い。音質に難ありが多すぎて、買ってガッカリが多い。個人的には「エピタフ」「ムーンチャイルド」が苦手…というのもある。

『アイランド』期のライブは、正直マニア向け。面白いものや怒涛のライブもありますが基本的にはちょっとダレる。ちなみに『リザード』は傑作です。

ディシプリン』ラインナップのライブもつまらなくは無いのですが、もはや別バンドです。

95年のダブルトリオ期/00年のダブルトリオ崩壊期については個人的には非常に好きですが、『戦慄』期と比べると流石に分が悪い。

ジャッコクリムゾンは、絶賛されていますが…あくまで一個人の感想で、不快になる方もいるのを承知で言いますが、よく言われるように懐メロバンドのよう。ライブに行けば最高でしょうし、素晴らしい演奏も沢山あるけど、あの00年の“怖いフリップ先生とビビる生徒たち”の緊張がないのです。

太陽(期)信仰

それに比べて『太陽と戦慄』期のライブアーカイブの凄まじさはどうだ。毎回激しい演奏を繰り広げる。何よりも曲が素晴らしい。スタジオバージョンも勿論いいのですが、それをライブで強力な即興を繰り広げてくれるのですから悪いはずがない。キーマンはフリップ爺ではなくキレやすいブルフォードでもなく、ジョンウェットン。

ウェットンの涙腺を刺激する歌声が加わることによって激しい即興部分がより冴えるのです。ベースプレイヤーとしても超一流なのは言うまでもありません。

この3名を中心としたラインナップは3年で離散してしまいますが、その間に素晴らしいライブ音源が多く残されていました。昔は馬鹿高くて音も貧弱なブートレグを何枚も買いましたが、今ではこのようにBOXとしてまとめられています。やはり昔からのファンは音源の重複を余儀なくされますが...今回は目をつむりましょう。

 

この時期の曲は全部好きなのですが、敢えて数曲をチョイスするなら

『太陽と戦慄パート1』後にレパートリーから外されてしまいましたが、バイオリンが刻む不穏なイントロから打楽器が入りロックらしいメインテーマに至るまで打楽器に自由な空間を提供しています。ジェイミームーアのために作られたような曲ですが、バイオリンが先導する静かな後半パートも素晴らしい。

『ナイトウォッチ』フリップ先生の短いギターソロが泣かせる。シングル曲としても最高です。歌詞はレンブラントの『夜警』から膨らませたもので、抽象的ですがちょっとノスタルジックな雰囲気があります。

www.youtube.com

クリムゾンはよく「プログレッシブを追求うんたら」と、やたら長い連体修飾を伴って説明されますが、単に“超かっこいい”バンドといったら語彙不足でしょうか。

 

(K)

 

 

Rainbow 『Roger’s Birthday Party』(1979年11月30日)

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Rainbow

『Roger’s Birthday Party』(1979年11月30日)

音質:★★★★

内容:★★★★

グラハムボネット期のレインボーでは古くから有名な音源で、公式盤コンピ『A Light In The Black 1975-1984』にもその一部収録されています。

他にも『Down To Earth Tour 1979』という3枚組の半ブートレグにも収録。これはいつものP店盤です。

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これは昔から出回っていた音源で、今のように高音質音源がバシバシ出回っていない頃には非常に貴重でした。僕が持っていたのは黒地のジャケットでしたが名前は忘れました(汗)。

グラハム期で1番好きなのが「Love’s No Friend」。Dio期における「ミストゥリーテッド」にあたる、ギアチェンジする為の1曲。そういえば公式『モンスターズオブロック』に収録されていないと知った時はがっかりしましたね。

個人的にこの音源といえば「All Night Young」の後半の掛け合い。観客への無理強いはちょっと笑ってしまう。

個人的には随分コンパクトながらこの日の「銀嶺の覇者」がいい。ツボを押さえたギターソロ、ちょっと辛そう?だけど歌いこなすグラハム。最後に再びリッチーだが今日はいつもより長めに弾き倒す。

このP店盤のジャケットが好きです。ただこの日は様々なバージョンが出ています。

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Rainbow『Down To Earth Tour 1979』(2015):*写真はDiscogsより引用

今、CDで買うなら『Down To Earth  Tour 1979』がリーズナブル。他の音源も含めた3枚組で、安ければ2000円強で買えます。

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(K)

 

 

Stars Of The Lid『And Their Refinement Of The Decline』(2007)

アンビエントミュージックの定義

アンビエントミュージックの定義は非常に難しい。60年代から盛んだったミュジックコンクレートシーンのピエールアンリ、ザッパも尊敬していたエドガーヴァレーズ、クセナキスアンビエントの範疇にある曲を作曲しています。

ただ、確かにブライアンイーノが「アンビエント」というキャッチーな言葉で、それら過去の作品群や未来に大量生産される芸術と称したゴミたち(失礼)をも包み込んだのは一つの分岐点であったと思います。

アンビエントはブライアンイーノの定義によると

「興味深いのと同じくらい無視できなければならない」とあります(Wikipediaより)

そしてWikipediaアンビエントミュージック”項の「主なアーティスト」一覧を一部抜粋すると以下の通り。

 

アシュ・ラ・テンペル

ヴァンゲリス

喜多郎

クラウス・シュルツ

ジ・オーブ

ブライアン・イーノ

ボーズ・オブ・カナダ

 

アンビエントミュージックのアーティストなんて大半は無名ですから(失礼)、このようなリストになったのでしょうか。個人的にはアンビエントテクノアンビエントミュージックは別物の気がします。

ジ・オーブは、ダブテクノの始祖というなら頷けますが、アンビエントではないと思います。同様にボーズオブカナダがアンビエントかと言われれば、首を横に振ることしかできません。

アシュラテンペルは、反復の追求という意味ではアンビエントミュージックの構成と近いかもしれませんが、マニュエルゴッチングはジミヘンギターを弾きたがっています。

クラウスシュルツェは扱いにすごく難しい。アンビエントというには非常に映像的な作品が多い。そして彼の作品には何かしらコンセプトがあり、メロディもしっかりしているので、どちらかといえばやはりプログレっぽい気がします。エドガーヴァレーズの系譜にはいるかもしれません。少なくとも僕はシュルツェをアンビエントとして聴いたことも、聴こうと思ったこともないです。流すには緊張感が強すぎます。

喜多郎は、シルクロードで有名ですが、やはりアンビエントというよりはヴァンゲリスなどと同じくプログレフュージョン(?)に位置すると思います。

 

イージーリスニングアンビエントミュージックの境界線も曖昧です。

歯医者やホテルのレストランで流れているビートルズカーペンターズのインストカヴァーのようなものはアンビエントミュージックというには痴がましい(失礼)と個人的には思っています。

個人的にはイージーリスニングの中で、一部分の作家性の高い作品、例えば吉村弘等はアンビエントミュージックの範疇に入ると考えています。「吉村弘はもともとアンビエントだろう、イージーリスニング扱いはけしからん」とおっしゃる人もいるかもしれませんが、重なる部分は多いし、人によって境界線も異なります。昔はレコード屋でもイージーリスニングコーナーにあった気がします。

一部で注目されているISHQなんかはアンビエントとして扱うかヒーリングミュージックなのかは微妙。彼らはヨガのための音楽なんてのも作っていますし。アンビエントミュージックの一部がヒーリングなのか、そもそもヒーリングミュージックはロックもジャズも包括した、ジャンルを超えたカテゴリーなのかはここでは考えないことにしましょう。

 

個人的にアンビエントミュージックを定義すると

①ビートレス/ビートが限りなく弱い

②オリジナル作品(ポップスのカヴァーなどではない)

③聴いた瞬間にその環境の風景を変えてくれる

 

あとはもう好みです。僕はちょっとでも俗っぽいと思ってしまうとニューエイジ/ヒーリングミュージックにカテゴライズしてしまう癖があるので、このページの内容は全く参考にしないでください。

で結局ブライアンイーノが素晴らしすぎて、イーノばかり聴いているのですが、2000年代に入り突然イーノ直系の後継者が登場。

それが「Stars Of The Lid」というアメリカのブライアンとアダムによる2人組。僕が知らなかっただけで実際は1993年結成、95年にデビューアルバムを発表しています。彼らはドローン、音響、生楽器を利用した非常にポジティブなサウンドが特徴で、聴いて気持ちよし、流して無視してもよし、というようにブライアンイーノの提唱した「アンビエントミュージック」の定義に合致しています。

Stars Of The Lid『And Their Refinement Of The Decline』(2007)

内容:★★★★⭐︎

「Articulate Silences」の2曲と「The Evil That Never Arrived」は連作のようなもので非常にポストクラシカルな曲。荘厳であり親しみやすく反復の間が絶妙で、イーノの『ミュージックフォーエアポート』への30年の時を超えたアメリカからの回答と言っても良い。

「Dopamine Clouds Over Craven Cottage」も反復するテーマに微妙に変化するに金属音をいじったような音と美しいメロディが絡む傑作。

「A Meaningful Moment 〜」はドローンに透明感のあるセピア色を想起させるピアノが付随する。そこに効果的な環境音が交わり、さまざま音が鳴っているのに清涼感すら感じる。

「Daughters Of Quiet Minds」は低音が印象的。シンプルに終わるかと思いきや9分くらいから印象的な新たな低音がスピーカーを震わせる。

「The Finger Of Your Temple〜」はテーマの中に環境音が取り込まれている。このアルバム全体を通じて言えることはテーマの旋律は非常にシンプルなものです。それはアンビエントミュージック全般を通じて言えることですが、イーノと同じように低音を非常に効果的に使用しています。静かに終わる余韻がいい。

「Tippy’s Demise」はこのアルバムの中では随分大仰な曲で、最もポストクラシカルな曲です。不協和音を効果的に取り入れていて躍動的に感じます。

「December Hunting For〜」はでラストに相応しい17分の大曲です。シンプルなドローンがテーマになっていて17分間の間にさまざまな起伏を見せます。

反復のズレ、変化、印象に残る低音、美しい旋律。2時間に渡って、ドローン(持続音)を用いながらも実際は様々なアプローチを用いながらもアルバムとしては驚くほど一体感を持っています。特にCDの1枚目はまるで曲が繋がっているような印象さえ受けます。

アンビエントというには展開があり聴きやすく、音量を下げて流せば心地よい。電子音ではなく管楽器や弦楽器のドローンがメインなので非常にクラシカルな印象を受けますが、決して学術的な感じは受けず、後にLoscilなどとも契約する、Pan American からDeerhunterまで所属しているKrankyレーベルからリリースされたのは非常に納得できます。

 

(K)

 

中国旅行雑記③「夷陵の地を巡る 重慶~武漢、三峡」編(三国志)

 皆さん、こんにちは!これを書いているのは真冬、劉備が体験した酷暑でも少し憧れを感じてしまう季節です。


 さて、今回のテーマは夷陵の戦い、以前取り上げた陸抗の父である陸遜劉備を破った戦いとして知られています。
 戦史は好きですが、ここでは現地の感覚にどちらかといえばスポットを当てて記してみたいと思います。

劉備について

 さて、この戦を取り上げる前に、劉備が戦上手であったことを取り上げたいと思います、それも皆さんが思う『演義』のイメージよりはるかに。
 

 劉備は徐州を始め戦に負けて全てを放り出すイメージが強いですが、実際は曹操や騎兵隊長としての曹仁など最強クラスの武将に大量の兵力差がある時以外は結構勝っています。

 呂布に裏切られた時は兵站が切れて兵が逃亡していますが、それまでは袁術軍と拮抗しています。そもそもデビューの黄巾軍で程遠志を斬るに始まり、夏侯惇と李典の博望坡の戦いは実際は劉備が指揮していますし、漢中の戦いでは夏侯淵を斬り、曹操を撤退させています。
 孔明の北伐でも猛将といわれる魏延などを追っていくと先主即ち劉備に取り立てられたという人が出てきており、逆に孔明に取り立てられたという武将はほとんど聞きません(姜維とかは例外かもですが)。

 そんな劉備が慶州争奪戦後の関羽の弔い合戦に望んだのがこの戦い。ただ、地図を見ると苦しいなと思います。

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白帝城訪問記

筆者は劉備と全く同じルートを旅行で通ったことがあります。現在の三峡の旅行ルートですが、まずさらっと表れている左端の白帝城(奉節県)までが、重慶から遠いのです。ほぼ400㌔あり、高速が完全に通る前は8時間くらいかけて行ったと記憶しています。
因みに筆者は更にマニアックな道程で、この地図外の奉節県の隣の雲楊県にバスで行き(時間の関係でバスの便がなかったため)そこから一日一便のバスをタッチの差で逃したため、現地の人が利用する船で移動しました。確か4,5時間、小さい船で水は汚く、通路で小さい子供がおしっこを垂れ流しており、挙句の果てには現地民がたぶん食べた食料の紙の包みが上から降ってくるというカオスだったのを覚えています。

 

さて、やっとスタート地点にたどり着きました。ただ、筆者は白帝城から宜都(地図右下)までは夜行のバスに乗ったため景色を見れていません。

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白帝城

 ただ、体感120㌔位で蛇行する山道を飛ばしており、ここで交通事故で死ぬのは嫌だ、と思いつつ寝てしまったのを覚えています。更に筆者は逆コースで武漢から重慶への高速鉄道で移動したこともありますが、宜都を超えるとほぼトンネルでした。

ただ時々見える外の景色は、山間に雪が積もるきれいな景色だったのを覚えています。かなり南の方なのですが、雪が積もるくらい高度があるのです。ということで、重慶から少し、武漢から少し過ぎるとひたすら曲がりくねった山道、これを通り抜けるのは相当大変だったろうと想像します。

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 もう一つ、劉備の辛さは四川盆地の暑さにもあったと考えます。重慶の火鍋は辛いことで有名ですが、現地人は口をそろえて、盆地は暑くて湿気が高いからと言います。実際、重慶市内が夏40度に達したニュースも頻繁に見るくらいです。

 このような地理的要因で、夏になると暑さがどうしようもなくて森林などに基地を築いたとなるのは仕方ないと思うのです。

 

 因みに奉節県から白帝城まではタクシーで行き、川の中に浮いている城のため、渡し舟に飛び乗ってたどり着きました。
三峡下りの観光客と余りに違う環境に激しく虚しさを覚えたのを記憶しています。

夷陵の戦い

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さて、地図をもう一度ご覧ください。益州から荊州に行くには、上庸からの漢水ルートが魏軍にふさがれている以上(この地図の上の枠外です)、長江を下るほかありません。となると守る側も主戦地を絞りやすくなります。
 孔明の北伐でも通過ルートを変えており、不備に出づるためには複数の侵攻ルートが本来必要だと思われます。
 というわけで、劉備軍は単調な攻撃、伸びきった補給線に先ほどの暑さなどが加わり、挙句の果てに長江を水軍で正面突破され、退路をふさがれ火計を食らうという悲しい結末になってしまいました。孔明趙雲が反対したのもむべなるかな、という感じです。
 がしかし、地理的に後退するという囂々たる非難をものともせず、結果と時機を読み切った陸遜はさすがと思います。
実際江陵までは目と鼻の先であり、最終防衛ラインを突破されたら終わりという局面で、劉備相手に勝ったのは名将たる所以でしょう。こうして劉備三兄弟は関羽を始め皆非業の死や、返り討ちに遭うなど、陸遜一人に誰も勝てなかったと言わざるを得ないでしょう。

 『演義』ファンとしては大変残念です。

 

 ただ、劉備の逃げ足はさすがで、自分以外の人々が多く戦死したり、黄権のように魏に備えて駐屯していたら逃げ道を断たれたりする中で、徐州でも遺憾なく発揮された最後の逃げ足を使い無事に生き残っています。

 かっこいいとは言えませんが、最期まで劉備らしい面を見せているなと皮肉ではなく思ってしまうのも事実です。どうか全ての三国志ファンに、改めて劉備を評価しなおしつつ、愛してあげてほしいと個人的には思います。

それでは、またの機会を見て。写真が見つかったら赤壁なども取り上げていきます。

 

(T)