繰り返しになりますが、このランキングは僕が個人的に収集した615のデータが元に作られた統計の結果に過ぎません。音楽だいすきクラブの誰かが順位付けしたものではないし、順位付けする意図もありません。そんなものは人それぞれが勝手に決めればいいことだし、音楽好きの中にもこのランキングをなぞるように聴いている人は一人もいません。多分だけど。
なぜそのようなものを作るのか。忘れてしまうからです。いつか2016年という一年を思い出すために、あくまで記録としてこのランキングを作っています。もちろんそのことは読んでくださる方々には何一つ関係ないことだし、「音楽好きって馬鹿だねー!」とか「こんなの全然音楽好きなんて言えないよ!!」と馬鹿にしていただいても構いません。むしろランキングってそうやって楽しむものだと思います。
今年から洋楽も含めたものになりました。実際に調査する前は邦楽に偏る懸念もありましたし、実際にトップ150枚では6:4、もしくは7:3程度に邦楽に偏りました。ただ、おそらくこれが現状なのだと思います。
最後の50枚です。後に下の「ルール等」のページに例年と同じ邦楽のベスト150、洋楽のベスト100のリストも掲載しました。レビューを含め、このページが読んで下さる方々の音楽ライフの手助けになれば幸いです。(ぴっち)
→ルール、ノミネート作品の一部等はこちら
50. スカート『Call』
49. C.O.S.A. × KID FRESINO『Somewhere』
→「Swing at somewhere feat. コトリンゴ」 Apple Music/Spotify
48. LUCKY TAPES『Cigarette & Alcohol』
→「TONIGHT!」 Apple Music/Spotify
47. 坂本慎太郎『できれば愛を』
46. STUTS『Pushin'』
→「夜を使いはたして feat. PUNPEE」 Apple Music/Spotify
45. Danny Brown『Atrocity Exhibition』
→「When It Rain」 Apple Music/Spotify
一週間続いた風邪からやっと立ち直った午後に、初めてこのアルバムを聴いた。正直、風邪がぶり返したように感じた。躁と鬱を行き来する忙しなさ。それだけならまだいい。だけどテンションがどこかおかしい。くぐもったり粘り気を帯びたりするトラックのせいで、熱に浮かされているみたいだ。よくわからないところに連れていかれたかと思えば部屋で一人汗をかいて目を覚ます、気味の悪い感覚が蘇る。数時間前には友達と遠出の計画を立ててたし、さらにその前には立食パーティにも参加してた。その時は平気なフリしてたけど実際寒気が止まらなかったよなぁ……って何の話だっけ?
要は周りのイメージと実態は往々にして違うってことなんだ。Danny Brown本人だって、本作をリリースするまでにここまでヒップホップが盛り上がるなんて思っていなかっただろうし、自分が祭り上げられることに違和を覚えることもあっただろう。「相変わらず荒んだままさ、ジロジロ見るなよ見世物じゃないぜ」と口にする代わりに、彼はこのアルバムを作ったんじゃないかな。なんてことを考えながら次に聴いたのは、Joy Divisionの2nd、その1曲目だった。
まっつ(@HugAllMyF0128)
44. A Tribe Called Quest『We got it from Here... Thank You 4 Your service』
→「We The People....」 Apple Music/Spotify
43. BOOM BOOM SATELLITES『LAY YOUR HANDS ON ME』
→「LAY YOUR HANDS ON ME」 Apple Music/Spotify
42. Special Favorite Music『World's Magic』
そもそもこのバンドを初めて知ったときはNOKIES!というバンドのクメユウスケのソロ・プロジェクトとして私は認識していたのだが、去年の2ndEPである『ROMANTICS』以降、完全にSpecial Favorite Musicという1つのバンドとして機能し始めたように感じる。
そんな彼らの1stフル・アルバムは梶井基次郎の小説『檸檬』をモチーフとして、居場所のない私たちを"ここではない何処か"へ音楽の力で連れて行く作品だ。楽曲全体を緩やかなテンポでアンサンブルに重きをおいたアンビエントなサウンド作り、そして辛い現実や日々の一コマを切り取らず、そんな日常から抜け出してユートピアへと旅に出ていこうとする歌詞など、全体を通して"今いるこの世界を忘れさせる"ことに尽力している。居場所がなく"ここではないどこか"に自分を置きたい時にいつでも"いるべき場所"を提供してくれる作品、それが『World's Magic』だ。
ゴリさん(@toyoki123)
このアルバムの内容を説明するのにはジャケットを見てもらうのが一番。キラキラしたポップな音像。伝わるよね? そしてそれをうっすらと覆いつくす空虚な雰囲気も。とても楽しくて歌いたくなっちゃうのに深く深く潜っていってしまうようなダウナーで不思議な感触。そして多彩な楽器の音が重なりあうポップで華やかな感じと思いきや、音圧は低く、靄がかかったようなローファイな音像だったりと一貫してこのアルバムに横たわるのはその2面性。煌びやかな"表"と行き場のない虚無に包まれた"裏"である。
「Magic Hour」で《2トントラックの追い越し 体が飛びそうな国道 このままはみ出してしまいたいのに》と歌われる夜の大きな国道。車がものすごいスピードで騒音とともに通り過ぎた後の自分だけ取り残されたような一転した静けさ。この曲の凄まじい情景描写力でここから一気にアルバムに入り込んでしまう。そして「Dribble」「Future」「Ghostopia」とノスタルジーに浸ったり、深く深くモノクロのような世界に潜ってからの一気に世界が色づく最強ポップソング「GOLD」。こんなもん最高に決まってるでしょ!!
ひいもと(@TbaEric)
ファンタジーの世界へ誘う「Baby Baby」から「Magic Hour」の導入部分。色とりどりな中盤を経て届けられる「Gold」、「Today Tonight」の多幸感。そして現実へ着地させるラスト「World’s Magic」と、曲順も完璧なこの作品は目の前の現実が違う景色に変わるような35分を与えてくれる。音楽をたくさん聴くこと、または人に対して「現実から逃げている」と否定的な意見を唱える人をよく見ることがあって、それも一つの意見だとは思う。でも音楽を聴いている時だけでも、夢のような気分に浸りたくて。夢に浸ることで、これから先に、たまにでもワクワクするような出来事に出会えるんじゃないかって、現実を夢に塗り替えさせてくれるんじゃないかって思わせる素敵な作品。
のすぺん(@nosupen)
41. ラブリーサマーちゃん『LSC』
40. RADWIMPS『人間開花』
39. Whitney『Light Upon the Lake』
→「No Matter Where We Go」 Apple Music
Whitneyの話をするとなると、まずはMax Kakacek、Julien Ehrlichが元いたバンドであるSmith WesternsやUnknown Mortal Orchestraの話をしないといけないし、本作のプロデューサーであるJonathan Radoの話もしないといけない。となると自動的にFoxygenの事やし、同時期にプロデュースしたThe Lemon Twigsにも触れないといけない。あと、彼らの彼らが愛着を持つAbner JayやJim Fordといった60~70年代のミュージシャンの話や、本作が影響を受けたというAllen Toussaintの『Southern Nights』の話、そして、ソウル・ミュージックとカントリーを横断する意義についても話をしたい。あと、このWhitneyの名前の由来や「NO WOMAN」の事、そして、本作が「不滅の愛」という意味を持つ赤黒いバラをあしらったジャケットなのかも話す必要があるだろう。でも、そんな話したら文字数がいくらあっても足りないので、1つにまとめる。
とにかく歌がいい。以上。
ゴリさん(@toyoki123)
38. [Alexandros]『EXIST!』
出てきた当初はそのビックマウスさで反感を呼びまくってた彼らだけど、大舞台を次々と通り過ぎてしまって、既にビックマウスどころか舞台相応な立場に登りつめちゃってる気がしてる。フェスの小さいステージでGt白井さんが膝怪我したアクシデントとか見てた僕としては、ロックスターへの階段を自らの足で駆け上がっていく姿をリアルタイムで追いかけられたことはすごく嬉しいし、誇りに思う。
スケール感という点では「ワタリドリ」が到達点だと思ってたけどさらに進化していて、緻密でおしゃれポップな「Feel like」でも「Kaiju」「Aoyama」見たいな横ノリでも大舞台を掌握できるくらいの奥行きがあるし、「Nawe,Nawe」なんかもうアメコミ映画の劇伴かと思ったくらい。完全にスタジアムバンド仕様。ほんとどこまで行っちゃうんだろう。そのうち、東京ドームすら収まりきらなくなるんだろうか。
はっちゅ(@colorfulwhite)
37. GRAPEVINE『BABEL,BABEL』
音の重さや説得力は従来そのまま、しかし格段に風通しが良く軽快な仕上がりという方向性は前作から受け継いでる部分だけど、バンドセッションで形作られた曲&今回も炸裂しまくってる亀井節、といういつものバインと「EAST OF THE SUN」など計4曲プロデューサーとして加わった高野寛氏との化学反応や、バイン史上初の4つ打ちダンスチューン「Golden Dawn」辺り更に進化・挑戦してます。歌詞も滅茶苦茶(褒めてる)な言葉遊びの中に時々ど直球投げ込んだり、田中和将さんここにきて不惑っぷり全開ですね。
はっちゅ(@colorfulwhite)
36. ザ・なつやすみバンド『PHANTASIA』
幼少期の夏休み、呆れるほど田んぼ以外に何もない父方の祖母の家によく泊まりに行っていた。花火でもしようものなら、その光以外に世界を照らすものは何もない。人ならぬ何かが潜んでいるようなその漆黒の闇に、子どもながら覚えた畏怖の念を未だに覚えている。郷愁、田舎、幼少、御盆といったモチーフを素朴な音遣いで操り、我々をなつやすみの渦に引きずりこんでダラダラさせてしまうのがザ・なつやすみバンドの魔力だ。そしてこの3枚目のアルバム『PHANTASIA』には、未知なる世界に対しての高揚感もまぶされている。暗闇に対する不安感もそうだが、空想は時に現実を超えて僕らの心を掴んで離さない。大人になるにつれいろいろなことを知り、どんなに頭を良くしたって辿りつけない"すこしふしぎ"な世界の秘密。なつやすみバンドは誰の記憶にも薄っすらと残るファンタジーを拾い上げ、いつまでも浸っていたくなるノスタルジーの海のようなアルバムを作り上げてしまった。
月の人(@ShapeMoon)
35. Negicco『ティー・フォー・スリー』
→「矛盾、はじめました。」 Apple Music/Spotify
昨年でデビュー13年であったNegicco。今作は、今の年齢で3人が歌うこと、そしてこの先歌い続けていけるような、耐久年数の高い普遍的なポップスが並んだ一枚。メインコンポーザーconnieさん楽曲を軸として、王道アイドルポップス「ねぇバーディア」、ソリッドでクールなギターリフが印象的な「江南宵唄」、シンプルな8ビート縦ノリロックンロール「SNSをぶっとばせ」、アーバンなまさにシティポップ的な「矛盾、はじめました。」などなど、どの楽曲も提供者からのNegiccoへの愛がひしひしと感じられて、それはもちろん3人の人柄、これまでやってきたことの賜物だよなって考えたりして、そして「RELISH」聴いたら《こんな世界が君を待ってたなんて素敵だと思わない?》ですよ。もう涙腺崩壊。
アイドル界隈もかなり「落ち着き」を見せ始めた2016年、初のNHKホールでのワンマンを大成功させた一方、原点回帰と銘打ってNHKホールの1/4にも満たない小規模のホールツアーを組むなど一貫して地に足を付けた活動を続けているNegicco。3人に次はどんな素敵な世界が待っているんですかね。末永くこのアルバムの楽曲を歌い続けてほしい。
ひいもと(@TbaEric)
宇多丸さんがAOI(アダルト・オリエンテッド・アイドル)と評していた通り、大人である(≠エロい)ことが渋谷系とかジャズとか色んな要素を含んだ曲調を過不足なく綺麗に表現しきっているように思う。「RELISH」のハードオフの店内BGMみたいなシンセブラスの音色とか「江南宵歌」の異国感とかも含めて。それは完成度の高い楽曲を初々しい女の子が歌う化学反応感、というこれまで出てきた「楽曲派」アイドルの特徴とか少し違う魅力を感じた。
「Good Night ねぎスープ」「SNSを吹っ飛ばせ」辺りは確実に20代後半に差し掛かった今から歌いにいける曲。女性アイドルにとって「歳をとる」ことは呪いだったけど、Negiccoにとってはそんなことなかったみたい。
はっちゅ(@colorfulwhite)
34. Weezer『Weezer(White Album)』
→「King Of The World」 Apple Music/Spotify
さわやかだけど厚みのあるアルバム。前作『Everything Will Be Alright In The End』が感動大作だったのに対して、今作『The White Album』はすーっと過ぎていく風みたいな感じ。でも聴き終えたあとに残るのは確かな満足感。前作も今作もはっきり言って曲がすごく良い。最高。ということは次作にも期待しないわけにはいかない。やっぱり俺たちのweezerは最高だぜ!!
三角(@skmts)
33. My Hair is Bad『woman’s』
色恋沙汰の指南書とは。少女漫画を読む?違う。じゃあ恋愛映画を見ること?それも違う。では何か。そんなもの、レコ屋に行ってMy Hair is BadのCDを聴くこと。これ以外にないだろ。理屈じゃない、出し惜しみなしの現実よりもリアルなドキュメンタリー。彼らを女々しいとはよく言ったもので、なかなかどうして僕には男らしさの塊にしか聞こえない。男だって、男だからこそ、2人でいたいと思うし、手を繋ぎたいと思うし、貴女の犬でありたいと思う。かっこ悪さこそ、男の本懐。弱さと脆さが、男の本質なのだ。ドラマみたいだろ。でもドラマなんだよ、男だもの。しっかりついてきて欲しい。woman's。全部こっからなんだ。これから先もずっと。いつまで最高速でいられるかなんてわからないもの。だから言ったろ、ドキュメンタリーだって。新潟県上越、My Hair is Bad。
かんぞう(@canzou)
32. ストレイテナー『COLD DISC』
31. Bruno Mars『24k Magic』
→「24K Magic」 Apple Music/Spotify
ブルーノ・マーズに関してよくマイケル・ジャクソン化と言われているが、僕はマイケルより、クエンティン・タランテーノに近いように感じる。タランテーノと言えば映画でのサンプリング手法や映画館での70mmフィルム上映会、グラインドハウス体験等を行っているが、それは彼が好きだった"あの頃の映画体験"をその頃に観たことない人にも味わってほしいということが芯にあって出来ることだ。
そして、それはブルーノ・マーズも同じであり、彼がする格好、そして彼がサウンドのサンプリング元から考えてると、80年代~90年代前半、すなわち彼が赤ん坊の頃に子守歌みたいに流れていたアメリカン・ポップスの体現をポップ・スターになった今、やろうとしているのではないだろうか。このように書けば彼の事を"紛い物"と言う人もいるかもしれない。確かに彼のやる事は誰かがやった紛い物だが、その紛い物の集積の果てに"いつか本物の音楽にたどり着ける"と彼は本気で考えている。だからこそ彼の音楽でディスコで踊ったことのない人でも、踊ったような懐かしさを思い出す。『24K Magic』はまだ序章だ。ここから本当の意味でポップ・スター、ブルーノ・マーズが始まる。
ゴリさん(@toyoki123)
マネーとパーティーとセックス!小難しいことはなんにも必要ない。なんだかいろいろシンドい中、「これが今必要なのさ!」と言わんばかりの新作は希望そのものだった。さっき挙げた三つの要素、プライベートでもその全てにおいて充実している(であろう)男がやるべきことをやったらこうなる。マジガチのバブリーなパーティーピーポーの体現、本作ではそれに徹している。
実際のところはわからない。ものすごく考え抜いて作られたのかもしれない。80'sファンクリバイバルをどこまで意識したかだって定かじゃない。ただこのアルバムは、そうした理屈をぶっ飛ばしたところで本能的に作られたんじゃないかと思う。だってとてつもなくフィジカルに訴えかけてくるんだもの。ほんとはいつでもハッピーがいいけどそうもいかない。だからこそ、僕らには彼と、彼の音楽が必要だ。
まっつ(@HugAllMyF0128)
30. 岡村靖幸『幸福』
29. Blood Orange『Freetown Sound』
→「Augustine」 Apple Music/Spotify
28. AL『心の中の色紙』
→「花束」
andymoriなら『andymori』が1番好きだ。なぜなら、小山田壮平が誰よりも自由で情熱ある音楽を奏でているからだ。だから『革命』以降、観客の前では明るく振舞いながら、どんどん不自由になっていく姿を観るのは少しつらかった。しかし解散するまでの4か月間はまた再び自由さを取り戻し、本当に音楽を楽しんでいる彼らの姿があった。それはSWEET LOVE SHOWERでの「もう一回やろう」という小山田の言葉に集約されていたように感じるも。そのように考えれば、ALがandymoriを支えたバンドメンバーであった藤原寛、後藤大樹、そして自分のことをよく知る友人である長澤知之で構成されているのも納得がいくし、本作の「北極大陸」で一度首をくくってこの世を去り、「HAPPY BIRTHDAY」で軽快なロックンロール・サウンドにあわせて、生まれたことへの幸福を歌にするのは自然の流れだと感じる。過去を振り返り、今を駆け抜けるALは僕が一番好きだった頃のandymoriよりも自由で輝いている。
ゴリさん(@toyoki123)
27. OGRE YOU ASSHOLE『ハンドルを放す前に』
最近のOGRE YOU ASSHOLEに小難しいというイメージを持っている人もまずこのアルバムを聴いてみてほしい。一度聴き始めると時が止まってしまったような感覚に陥るデッドで乾いた音像、意外なほど前に出ているボーカルトラック(今回のアルバムの「音」は総じて過剰に輪郭がはっきりしている)、ループする聴けば聴くほどクセになるメロディーに導かれてモノクロで、無菌室のようなクリーンな世界でのチルに浸れる42分間。あれ?結局小難しそうになってしまった。もうちょっと雑に書くと、各楽器の音、しっかり聴こえるボーカル、スルメなメロディー、その一つ一つも重なりあうバランスも全部気持ちいいよってことだ。今作はオウガのディスコグラフィの中でも屈指の聴きやすいかつ聴き応えのあるアルバムだってことだ。さあ存分に浸ろう!
ひいもと(@TbaEric)
26. BABYMETAL『METAL RESISTANCE』
25. 大森靖子『TOKYO BLACK HOLE』
→「TOKYO BLACK HOLE」 Apple Music/Spotify
2016年12月31日新宿LOFT、ハイパーカウントダウンライブ。轟音が鳴り響くなかで大森靖子は「音楽の魔法が使えることを2017年は証明する」みたいなことを叫んでいた(他の楽器の音が大きくてはっきり聞き取れなかったので曖昧)。『TOKYO BLACK HOLE』は魔法みたいに素晴らしいアルバムだった。綺麗なメロディーラインにたくさんの闇を乗せて、闇鍋みたいに様々な感情が渦巻いていて、すべての曲がとにかく濃厚だった。特にM13「少女漫画少年漫画」の破壊力が凄まじかった。ライブでは弾き語りで披露され、CDには壮大なアレンジで収録されている曲だが、どちらを聴いてもその世界観に魂を抜かれてしまう。大森靖子の斃し続けるパワーに圧倒された一年だった。
三角(@skmts)
世に蔓延る生き辛さが強い重力を持ちはじめ、光さえも脱出できず飲み込まれてしまう時代。大森靖子はその時代を丸ごと変えようとはしない。そこにある生き辛さを肯定し、歌う。ブラックホールを形成するエネルギーの、その粒子の一粒一粒に目を向けて歌うのだ。その集積がアルバム1枚分貯まったのがこの作品だ。曲の中には"人"が生きている。その"人"に合わせ、お似合いのアレンジを配した楽曲たちの音楽的レンジは凄まじい。しかし、放つ全てがポップミュージックを選んでしまう素質を持つ大森靖子の手にかかれば、その楽曲を集合体は巨大なモザイク画のように一塊のエネルギーを持つことになる。
「愛してる.com」という曲が大好きだ。《君のオススメに面白いものは一つもなかった それでもついていきたいと思った たのしい日曜日》というフレーズでいつも泣いてしまうのは、きっと僕がこの歌の中に生きている人間だからだろう。大好きなあの子を思う時、いつもこの歌が頭に流れてくる。
月の人(@ShapeMoon)
24. Anderson .Paak『Malibu』
→「Come Down」 Apple Music/Spotify
23. THE NOVEMBERS『Hallelujah』
本当に美しい物に触れた時、人は言葉を失う。そして一度そこから離れてしまうと、今度はその仔細を思い出せなくなる。最後には『美しかった』という、感想と言うにはあまりに大味な概念だけが頭に残り、それ以外の何物も像を結ばない。その時僕らはどうするか?また出会おうとするのだ。再び思い出すために。
L’Arc-en-CielのHYDEのヴォーカリゼーションが嫌でも浮かぶ「黒い虹」のサビの絶唱、「1000年」のとぐろを巻くようなベース、シンセとホーンのシンフォニックな響きが印象的な「いこうよ」……個々の楽曲のテイストは非常に豊かであるが、向かうベクトルは"美しさ"のただ一点。"美しさ"とは何たるかを、それこそ思い出そうとするように一音一音が構築されていく。ふとした瞬間に頭から消えてしまう『美しさ』。それを追い求めたこのアルバム自体があんまり綺麗だから、うっかりしてると僕らもその様子を忘れてしまう。そんなときはこのCDをかけて思い出そう。何度でも、爆音でやり直そう。
まっつ(@HugAllMyF0128)
22. 蓮沼執太『メロディーズ』
21. never young beach『fam fam』
まったくディスるつもりではないのだが、never young beachの安部勇磨を見てると「ちゃらんぽらんだな」と思うことがある。ライブ中のMCで着地点が不明なまま最終的にグダッとした感じで終わる所や、メロウでありながら全く力の入ってない歌い方など、どこか"無責任さ"みたいな物があふれているように思う。そして、そんな彼が歌うからこそ僕は本作が好きだし、何度聴いても泣ける。「夢で逢いましょう」で《言わないよ 淋しいなんて/僕なら 元気でいるよ/手を振る また逢えるから》と、ここではないどこかにいる愛する人へ思いを伝えたりや「お別れの歌」で彼女との別れをエモーショナルに声を枯らして歌う姿は嘘も、誇張もが感じられない。あるのは真実、そして何よりもドラマチック、それが『fam fam』という作品で……おっと、大事なことを忘れていた。「お別れの歌」のPVに出てくる小松菜奈、5兆点。
ゴリさん(@toyoki123)
20. the HIATUS『Hands of gravity』
19. ANOHNI『Hopelessness』
→「Drone Bomb Me」 Apple Music/Spotify
18. UNISON SQUARE GARDEN『Dr.Izzy』
→「アトラクションがはじまる(they call it "NO.6")」
極めて理知的な視点から、とことん本能的なロックンロールを追求する。若気の至りを叩きつけるような時期はとっくに通り越しているはずなのに、この目が醒めるような色鮮やかさ。考えることで生まれる瑞々しさがあることをアルバム全体で証明している。「シュガーソングとビターステップ」の大ヒットが巻き起こした狂乱の中、冷静に舵を取り、選び抜いた言葉はいつもよりグッと明快に。ひねくれたり怒鳴ったり軽妙洒脱に流したり、時に陰ながら見守ってくれたりしながら、聴く者をこっそり肯定してくれる。シーンをやや斜めから分析したような楽曲が増えたが、その分前向きなエネルギーもくっきりと浮かび上がってくる。
しかしあくまでユニゾンはユニゾン。僕らと共依存関係になることなどはなく、彼らは彼らの美学で突き進んでいるだけ。ユニゾンが放った音楽を受け止めた後、生活とどう向き合っていくかは僕ら次第。どこまでも乱暴で、果てしなくやさしいロックバンドが変わらないまま強靭になった。ただそれだけのことがとんでもなくカッコ良い6台目のアトラクション。
月の人(@ShapeMoon)
フェスで4つ打ちが人気な理由って何だろうと考えて見たところ、最初の1小節を聴けばすぐノリを把握できるからであり、スタンディングエリアで浮いたりしなくて安心するから。そう思うとユニゾンって「エアリアルエイリアン」は異様にリフレインの尺が長いし、曲の展開が突然激しくなったり複雑だし、歌詞も超難解だし、安定してカオス。超受け取り辛い。だからユニゾンは"どう受け取っても構わないから自由に楽しんで"という、やさしいんだか厳しいんだかわからないスタンスなわけで。受け身の姿勢で単位取るのは超厳しいけど熱心に質問したら親切に指導してくれる大学教授、的な?「シュガーソングとビターステップ」から入った人は面食らいそうだけど、そういうバンドなんです。ベースが暴れてるのもきちんとリズムには合わせてるし、意味があるんです。多分。
はっちゅ(@colorfulwhite)
17. The Avalanches『Wildflower』
→「Because I'm Me」 Apple Music/Spotify
"ネットの音楽オタクが選んだ"ランキングなんだから、当然この作品だってランクインされるわけだ。なぜなら、彼らこそ「過去の膨大な音楽アーカイブの中から編集して自分たちの曲を作る」といった究極の音楽オタクなのだから。前作『Since I Left You』以降、音楽の海を16年間ものの長きの間、航海をしてできた本作がどの様な作品と言えばジャケットに見られる Sly and the Family Stone'sの『暴動』の引用や、白人警官が黒人に対して暴力を振るった歌詞からもわかる通り、Black Lives Matterを経由した今のアメリカをサンプリングした作品なのだ。しかし、サウンドに使用されているサンプリングが1960年代のサイケデリックやディスコ・ミュージックからきていることから考えると、本作が切実に現実に向き合う作品ではなく、そんな現実からトリップをする作品だという事がわかる。受け入れがたい現実があっても、ひとたび音楽を鳴らせば、そこからはどこまでも華やかでドリーミーな音楽が私たちを包み込む。まるで、こんな受け入れがたい現実すら夢に変えるかのように。16年経過しながらもはタイム・ラグを一切感じさせず、前作を更新したThe Avalanches。彼らの目は今もまだ力強く燃えている
ゴリさん(@toyoki123)
16. ASIAN KUNG-FU GENERATION『ソルファ(2016)』
→「リライト(2016ver.)」 Apple Music/Spotify
『ソルファ』とは青春の終わりだった。衝動の季節を抜け、"君と僕で繋いだ世界"を離れていく姿が刻まれたアルバム。生活者として社会に接続した作品が次作「ファンクラブ」以降は続いていく。楽曲制作の苦悩、解散の危機、そして原点回帰を経た2016年のアジカンがこの作品を再び鳴らすことで、青さを丸ごと包み込むように仕上がった曲もあれば、よりシャープになったバンドサウンドで焦燥感に磨きをかけた曲もある。際立つのは、若き日の後藤正文が綴った今に至るまで一貫した思いだ。「振動覚」で歌われる《特別な才能を持たずとも君の閉じる闇を打ち抜く》という僕らを鼓舞する宣誓や、「ループ&ループ」での自分たちこそが《最終形のその先を担う世代》であるという時代の背負い方。激動の日々と共に行われた制作における後悔が『ソルファ』の再録に至った大きな理由だが、彼の言葉はどの瞬間にも常に未来を向いていた。 ストリングスを絡め、柔らかく紡がれた再録「海岸通り」で告げられる青春の終わり。2004年の後悔も、そこからの紆余曲折も、すべてやさしくそっと未来へ運ぶメロディ。アジカンはこれから『ファンクラブ』とは異なる『ソルファ』のその先を描きはじめるはずだ。
月の人(@ShapeMoon)
15. Beyoncé『Lemonade』
Beyonceの『LEMONAD』は前作の『Beyonce』と同じように1時間以上にも及ぶ映像作品も同時に収録されているビジュアルアルバムであり、本作の楽曲に呼応したした短編映画のようでもある。その映像作品の「Don’t Hurt Yourself」でマルコムXのこんな引用が差し込まれる。
「アメリカで最も評価されていない人間は黒人女性だ。アメリカで最も危険にさらされている人間は黒人女性だ」
この言葉こそ本作の主題ではないだろうか。確かに内容からすれば夫JAY-Zの不倫を告発するような作品であるが、後半以降は自立した女性が描かれており、「Forward」でもマイケル・ブラウンやトレイボン・マーティン、そしてエリック・ガーナーという、白人、ヒスパニックの警察やその地域の見回りの人たちに撃たれて命を落としてしまった若き黒人男性たちの母親を出演している事からもそれは明白である。ポップ・スターとして地位を築いたビヨンセがその栄光を捨て、すべての黒人女性を代表して闘う女性として覚悟を決めた作品、それが『LEMONAD』である。
ゴリさん(@toyoki123)
14. The 1975『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』
→「The Sound」 Apple Music/Spotify
『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』と、どう考えてもback namberの歌詞みたいなタイトルなのだが彼らがやっているのはback namberではなく、どちらかと言えばSEKAI NO OWARIに近い。去年、解散するかを思わすコメントしかり、その後のロゴが黒からピンクへと変更し、サウンドもダーティーな物からより煌びやかでポップな装いをまとったイメージチェンジはメジャーデビューするにあたり名前や"死と生"という世界から"御伽噺の世界"へと音楽をシフトしたSEKAI NO OWARIと同じことだと思うし、これだけバンドが売れない時代に彼らは売れに売れまくっている。それは、常に何物にもとらわれずオルタナであり続けようとする精神と観客に対してわかりやすく提示するサービス精神があればこそ成しえる事だし、だからこそ常に変化していく彼らに僕たちは目が離せられない。これから私たちをどう裏切っていくか楽しみで仕方がない。
ゴリさん(@toyoki123)
腰から躍らせるようなリズムの上にキラキラした音がのっていてスケール感が増している。後半のアコースティックな展開も音楽への真摯なスタイルだと感じる。彼らはきっとインディのシニカルな畑の中からロックスターを超えポップスターになるのだろう、自覚的に。軽やかさと華やかさに溢れた快作。
ぼん・のい〜る(@noyl)
13. きのこ帝国『愛のゆくえ』
前作『猫とアレルギー』で、明るく踏み出したきのこ帝国。それに比べれば、今作は以前のように、少し内省的にシューゲイザーよりのほうに戻った感じ。でも、初期のような殺伐とした雰囲気や、ダークなムードはあまり感じられない。90年代の終わりのほうの音楽の匂いはするけれど、あの時のような退屈感も怠惰もない。
《だから泣かないで 笑って見せて ずっと君の味方だから 10年後も100年後も君のそばに》と佐藤千亜紀は歌う。言葉だけを見れば、月並みなラブソングのようにも聞こえるけど、私は勝手に、この"君"が佐藤千亜紀そのものであったらいいのに、と思って聴いていた。《復讐から始まって 終わりは一体なんだろう》で歌を始めた人の愛のゆくえが、そうであったら素敵なのに、と思う。どちらにしても、"君"の不安定なところもひっくるめて愛し始めたきのこ帝国が鳴らしている音楽は、なんというか、うん、無敵です。2016年にこの音楽が鳴っていて本当に良かった。
神秘性の中に格別の柔らかさを湛えた歌声、夜に溶け出すような轟音ととろける程に耽美なメロディ。きのこ帝国のこれまでの音楽的トライアルがこの一枚で結実したように思える。持ち前の澄み切った音像は更に純度を増し、横揺れのリズムは楽曲をどこか蠱惑的なものにしている。様々な愛のゆくえを描き集めた短編集のような本作の、その悲恋中心な物語を、サウンドが劇的に彩っている。
しかしラストに収められた2曲は少し毛色が違う。ただひたすらに穏やかな日々を願う「死がふたりをわかつまで」、愛しき新たな命へ贈る「クライベイビー」、どちらも歌を引き立てる飾らないアレンジが光っている。ヒリついた少女性をぶち撒け、どこか破滅的な未来を望んでばかりだったソングライター佐藤千亜妃の言葉が、この2曲を紡いだことの美しさに涙が出る。きのこ帝国の作品とは、彼女の精神性の変遷が刻まれたドキュメンタリーでもあるのだ。
月の人(@ShapeMoon)
一曲ごとに違う表情をしていてそれぞれがお話のようになっていてきのこ帝国はやっぱりとても素敵。表情といえば、ギターのあーちゃんの表情が良い。演奏もコーラスももちろん良いのだけど、ライブ中、表情を見てるだけで曲のニュアンスが伝わってくる。体全身で表現できる楽器みたいな人。
三角(@skmts)
《21gを愛だとしよう その21gはどこにゆくのだろう》愛の形が様々であるように、愛の行き先もそれぞれである。故に、愛がこれからどこに向かい、どのように形を変えるかは誰にもわからない。あくまでもフィクションでしか表すことができないものだ。《復讐から始まって終わりはいったいなんだろう》と歌っていたきのこ帝国は《君と日のあたる庭で そっと息絶えたいのです》まで辿り着いた。もちろんこれは愛が向かう先の一つに過ぎない。時間と共に変化を遂げた佐藤千亜妃のもつ喪失感という感情こそが『愛のゆくえ』を輝かせる重要な役割を担っている。
きのこ帝国には不思議と一度表現したサウンドを彼らの色に変え、まるできのこ帝国という一つのジャンルに染めてしまうような力がある。今回の表現がどのように形を変え武器になっていくのかとても楽しみだ。
さこれた(@bewith0301)
12. METAFIVE『META』
→「Luv U Tokio」 Apple Music/Spotify
11. Galileo Galilei『Sea and the darkness』
10. Perfume『COSMIC EXPLORER』
前作『LEVEL3』で意図的に使わなかったEDMテイストを、ブームの山が過ぎた今あえて本格的に採用した上、Youtubeやらサブスクやら一曲単位で音楽を聴くのが主流の今あえて14曲59分の間、常に説得力に満ちた音が止まらない。という敢えてに敢えてを重ねて誰にも真似できないレベルまで来てしまった本作。これまで存在していた"近未来感""ロボット感"みたいなフェイクと"等身大な女の子"というリアルの2面性がほぼ完全に融合した、Perfumeとしての冒険譚としても無敵。完全にオーバーキルです。参りました。一生WE ARE Perfumeします。
はっちゅ(@colorfulwhite)
9. サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』
個人的に00年代後半くらいから目撃していることだけど、復活を遂げるバンドがいくつかあった。大抵彼らは復活した年に大々的にツアーを敢行して多くのお客さんを満足させた。そのことは何の異論もない。お金目的だといくら言われようがやらない善よりやる偽善だ。ただその一方で、大々的に活動した次の年から手詰まりになる人たちが多いようにも思えた。もちろんツアーだけで目的を果たしてしまう人もいただろう。でもそれ以上に、新しい作品を生み出すことに意義を見出だせないのがほとんどではないのだろうか。たとえ技術的に昔を凌駕していても、才能が滾り肉体的にもピークだった頃以上の衝動を維持するのは容易いことではないからだ。
ところが曽我部恵一は自ら運営するレーベルの運営を傾けてでも、メンバーが倒れていなくなっても、延々と終わらないレコーディングを繰り返し、狂気に満ちたアルバムを作り上げてしまった。ビートルズとベン・ワットとダフト・パンクの匂いがする屈指の名盤がここにある。「解散したのはこの作品のために?」と思うような。でも僕らが再結成に求めるものは本当はこれ。生きててよかった。
ぴっち(@pitti2210)
8. D.A.N.『D.A.N.』
パーフェクトなデビューアルバム。ミニマルなリズムセクションと浮遊感の強いボーカル。早すぎないBPMとシンプルであり、少ない音数の演奏で色気すら漂わせている。アルバムとしては少ない曲数も次の展開への期待感を漂わせる。
ぼん・のい〜る (@noyl)
足元を揺らす波に浸っていたら心地良くて、いつの間にか胸元まで水が満ちてきていた。ひやりとした透明な水に柔らかく抱擁されていた。そのまま、たゆたっていたいと願った。ループするフレーズのアイデアを元にダンサブルなグルーブをイチから立ち上げてゆき、じわじわと大きな渦を作り出していくD.A.Nの音楽は、僕をそんな体験へと誘ってくれた。アルバム序盤の曲が、徐々にBPMを上げて行くように配置されているのがとてもニクい。短い時間に目まぐるしく展開を詰め込んだり、フェスで乗れるように速いテンポで4つ打ちを繰り出したりするトレンドが、過去のものとして決定的に相対化された気がした。
グレート紫(@Apteryx_Iwk)
7. Bon Iver『22, A Million』
→「33 "GOD"」 Apple Music/Spotify
良作の1st、インディーのままグラミー賞すら受賞してしまった10年に1度の傑作の2nd、そして絶賛のジャパンツアーからこの3rdアルバム。傑作の後の駄作、凡作といった事例はいくらでもある中、ジャスティン・バーノンがこれをどうするか世界中が注目していたはず。ところが彼は期待に応えるどころか、さらに深化した世界を創世し神々しいまでの圧倒的な美しさを表現した。エレクトロな世界の中で響き渡るゴスペル。これ以上美しいものはない。
ぼん・のい〜る(@noyl)
6. スピッツ『醒めない』
まもなく結成30年を迎えるスピッツ。晴れ渡る空のように突き抜けたアルバムが届きました。1曲目の「醒めない」で力強いロック宣言をしていて、ああ、まだまだスピッツとともに生きていけると安心しました。「ヒビスクス」に背中を押され、「雪風」や「みなと」でちょっとセンチメンタルになったり、「ガラクタ」や「こんにちは」で一緒に力強く歌ったりと、人生に寄り添ってくれるアルバムです。余談ですが、『醒めない』には生き物がたくさん出てきます。子グマにネコにハチにゲンゴロウに、さらに謎の生物モニャモニャまで。でも、それがとっても自然で必然性さえ感じさせます。他にも登場する生き物がいるので、これから聴く方はぜひ探してみてください。
かえで(@kaede_lily)
5. Frank Ocean『Blonde』
昨年、庵野秀明の『シン・ゴジラ』を観ていた時に「これ、日本人以外はどこがおもしろいかさっぱりわからないと思う。気の毒だな」と思った。それと同じことがこの作品でも起こった。何か得体の知れないものがここにはある。その美しさの断片はわかる。でも僕はその全貌を捉えることはできない。それを楽しむための素養を持ち合わせていなかったのだ。ただ、それはこのアルバムと付き合いながら身につけていけば良いことなのだ。国籍も人種も異なるけど、どこか椎名林檎の『加爾基 精液 栗ノ花』、もしくは清竜人の『MUSIC』に近い作品に思えた。そんなふうに出発した。
ところがあれから「この作品を理解しないやつは馬鹿」みたいなスノビズムが広がりはじめた。豊かな音楽がいくつも発表されて、それに湧く海外のメディアと不況が長く続く日本の雑誌文化の激しすぎる落差がそうした焦りをもたらしたのかもしれない。でも僕はもっと気楽にフランク・オーシャンに耳を傾けたかった。今頃言うのもなんだけど、アルバムの最後で彼は死んじゃってる気がするんだよね。2016年はほんとそんな人ばかりだった。
ぴっち(@pitti2210)
4. Chance The Rapper『Coloring Book』
音楽ってすばらしい。チャンス君の『Coloring Book』について話をしたい時、真っ先にそのことが浮かんだ。音楽を聴くのって楽しいんだよ。そんな当たり前な事をどこか忘れていたのかもしれない。2016年の音楽を振り返った時、自分でも無意識ではあったのだけど、純粋に「音楽って楽しいな」と思えるアルバムが自分の中の多くを占めていることに気付いた。それはきっとチャンス君のアルバムを聴いたからだと思う。社会について、生活について、どちらもとても大切で音楽はそういった僕らの日々とくっついてしまう時がある。難しい話をしたいわけじゃないんだよ。ただ、音楽に対する意味や役割を考えすぎてたのかもしれないってこと。だからこそ優れたアルバムがあるのもわかる。でも僕はもっと楽しみたかったんだと思う。チャンス君が『Coloring Book』で何を伝えたかったのかはわからない。でも今はわからなくて全然いいんだよなって思っている。チャンス君の音楽はすごくチャーミングで自由だ。音楽が好きで、それ以外のことなんて必要ないよねーって、言葉もわからないのにそんなことを言われてる気がしたんだ。ほんとありがとね。
うめもと(@takkaaaan)
3. David Bowie『★』
→「Blackstar」 Apple Music/Spotify
ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』に影響を受け、ダニー・マッキャスリンやマーク・ジュリアナなどニューヨーク・ジャズの実力者集めながら、インダストリアル・ロック、フォーク、ヒップ・ホップまでも横断した本作はボウイの最期の作品としてふさわしいもであった。しかし、そんな傑作を僕は十分には楽しめていないのだと思う。
「作品は観衆がそれを見に来て、自身の解釈を付与して初めて完成する。そして、その芸術作品は、そこに至るまでのグレーの領域を表現しているんだ」
こんな事を以前、ボウイは語っていた。だとしたら、この作品は明らかに語りすぎだ。なぜなら、誰もが『★』="ボウイの死"と結べ付けてしまうのだから。しかし、これがボウイの死ぬ前なら話は別である。私が言いたいのは、本作は彼の生前に本作を味わい自身の解釈が出来上がった上で、死後に別アングルから楽しむという命を取り込んだ作品ということである。彼の狙いは完璧だったが、最大の誤算は本作が発売された2日後に自分自身がこの世を去ってしまったことだ。そう、本作を味わうにはあまりにも時間が短すぎた。今日もこの原稿を書きながら『★』を聴いているが、今もまっさらな状態で楽しめない自分がいる。
ゴリさん(@toyoki123)
2. Radiohead『A Moon Shaped Pool』
→「Daydreaming」 Apple Music/Spotify
「Daydreaming」でトムは《空想家 彼らは決して学ばない 取り返しがつかない》《もう遅すぎた ダメージを受けてしまった》と歌った。最初は2015年の彼の離婚についてだと思った。2人の子に恵まれた彼らの結婚生活は23年続き、そして終りを迎えた。ところが昨年12月、元妻が闘病の末に亡くなったことが報じられた。ゲスな僕が思ったことは「彼は妻が亡くなることを知った上で離婚したのか?」ということだ。
もちろんそれはトムにしかわからない。ただ、『In Rainbows』でレディオヘッドはある意味完成を迎え、意欲的な『The King of Limbs』やAtoms For Peaceの活動を経て再び集ったこのスーパーバンドにしては、このアルバムは何かが終わっている感じが出すぎていた。もちろん細部に渡る音楽的な探求はこれまで通りだったと思う。でも全体的にはバンドの残滓を見せられている気がして、それゆえに報道を目にした時に深く納得してしまったのだ。もちろん作品の内容は身内の不幸とは関係ない。でも本当にそう言い切れるのだろうか?音楽とはそこまで作り手の人生を切り離して説明できるものなのだろうか?
ぴっち(@pitti2210)
1. 宇多田ヒカル『Fantôme』
2010年の「WILD LIFE」のライブビューイングを仕事帰りに観に行ったことを今でもよく覚えている。12月の寒い日、普段は行かない映画館なので、とてもドキドキした。悲しいんだけど、でも落ち着いた気分だった。その時点で結婚と地方への引っ越しが決まっていたので、仕事帰りに映画館なんてこともできなくなるなあと頭の片隅で思いながら聴いた「Goodbye Happiness」はとても切なかった。そこからもう6年も経ったのかと驚いてしまった。凛とした声も響きの美しい歌詞も厚みのあるコーラスワークもそのままだけど、今回は宇多田ヒカル自身の感情がたくさん詰まっているアルバムになっていた。基本的に通販でアルバム買うんだけど、今回はダウンロードにするぐらい発売してすぐ聴きたかった。8年待っててよかった。
かえで(@kaede_lily)
ネットの音楽オタクが選んだ2016年のベストアルバム 50位→1位
1. 宇多田ヒカル『Fantôme』
2. Radiohead『A Moon Shaped Pool』
3. David Bowie『★』
4. Chance The Rapper『Coloring Book』
5. Frank Ocean『Blonde』
6. スピッツ『醒めない』
7. Bon Iver『22, A Million』
8. D.A.N.『D.A.N.』
9. サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』
10. Perfume『COSMIC EXPLORER』
11. Galileo Galilei『Sea and the darkness』
12. METAFIVE『META』
13. きのこ帝国『愛のゆくえ』
14. The 1975『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』
15. Beyoncé『Lemonade』
16. ASIAN KUNG-FU GENERATION『ソルファ(2016)』
17. The Avalanches『Wildflower』
18. UNISON SQUARE GARDEN『Dr.Izzy』
19. ANOHNI『Hopelessness』
20. the HIATUS『Hands of gravity』
21. never young beach『fam fam』
22. 蓮沼執太『メロディーズ』
23. THE NOVEMBERS『Hallelujah』
24. Anderson .Paak『Malibu』
25. 大森靖子『TOKYO BLACK HOLE』
26. BABYMETAL『METAL RESISTANCE』
27. OGRE YOU ASSHOLE『ハンドルを放す前に』
28. AL『心の中の色紙』
29. Blood Orange『Freetown Sound』
30. 岡村靖幸『幸福』
31. Bruno Mars『24k Magic』
32. ストレイテナー『COLD DISC』
33. My Hair is Bad『woman’s』
34. Weezer『Weezer(White Album)』
35. Negicco『ティー・フォー・スリー』
36. ザ・なつやすみバンド『PHANTASIA』
37. GRAPEVINE『BABEL,BABEL』
38. [Alexandros]『EXIST!』
39. Whitney『Light Upon the Lake』
40. RADWIMPS『人間開花』
41. ラブリーサマーちゃん『LSC』
42. Special Favorite Music『World's Magic』
43. BOOM BOOM SATELLITES『LAY YOUR HANDS ON ME』
44. A Tribe Called Quest『We got it from Here... Thank You 4 Your service』
45. Danny Brown『Atrocity Exhibition』
46. STUTS『Pushin'』
47. 坂本慎太郎『できれば愛を』
48. LUCKY TAPES『Cigarette & Alcohol』
49. C.O.S.A. × KID FRESINO『Somewhere』
50. スカート『Call』