出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2024-10-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話 番外編その三の4 伊臣眞『観劇五十年』

鱒書房「新日本文化史叢書」の「五十年史」シリーズにちなんで、ここで伊臣眞の『観劇五十年』にふれておきたい。同書は十年以上前に入手しているのだが、著者や版元に関して、ずっと手がかりがつかめない一冊だったのである。(『観劇五十年』) 三宅周太郎…

古本夜話 番外編その三の3 鱒書房「新日本文化史叢書」と筈見恒夫『映画五十年史』

前回の生活社の「生活選書」の一冊である三宅周太郎『芝居』の「あとがき」において、前年に『演劇五十年史』を書き下ろしているので、体力が回復していない旨の告白がしたためられていた。 そこで『演劇五十年史』とは鱒書房のいずれも「五十年史」とある「…

古本夜話 番外編その三の2 生活社「生活選書」と三宅周太郎『芝居』

生活社のことは『近代出版史探索』131で書き、『同Ⅴ』913などでフレイザー『金枝篇』の版元として紹介しておいた。また「ユーラシア叢書」として復刻される書物を送り出しながら、その一方で『同Ⅴ』927の「ギリシア・ラテン叢書」といった古典の出版も試みら…

古本夜話 番外編その三の1 大和書店、新美南吉『おぢいさんのランプ』、巽聖歌

大和書店の巻末出版目録の中に、「日本少国民文学新鋭叢書」として、新美南吉『牛をつないだ椿の木』、「絵による自然科学叢書」として、寺尾新監修、中西悟堂編、辻一絵『淡水魚』、児童文化賞受賞の昆虫童画家の小山内龍『昆虫放談』などの児童書が掲載さ…

幻の企画書

「古本夜話番外編」をお読みいただき、ありがとうございます。 まだ続きがあるのですが、ここで、残された「企画書」を挟みたいと思います。 小田光雄はわずか3ヵ月に満たない闘病で亡くなったがゆえに、新年にはまだ元気で、 これから出版したい企画書を書…

古本夜話 番外編その二の6 園田一亀『韃靼漂流記』

原書房「ユーラシア叢書」34として、園田一亀『韃靼漂流記の研究』が復刻されている。これは入手していないのだが、その後、平凡社から同じく『韃靼漂流記』(東洋文庫)として刊行されているので、こちらのほうを取り上げてみる。 園田は大正半ばに満洲へ渉…

古本夜話 番外編その二の5 満洲移住協会と藤山一雄『ロマノフカ村』

原書房の「ユーラシア叢書」は生活社を中心とする戦時下の書籍の復刻である。だがそれに類する書籍は続けてふれてきた山一書房や大和書店ではないけれど、その他にも多くの版元が刊行していたと思われる。そうした一冊を浜松の時代舎で入手し、これは実に興…

古本夜話 番外編その二の4 パーカー『韃靼一千年史』と大和書店

これは「ユーラシア叢書」で復刻されていないけれど、どうして選にもれたかと思われる一冊がある。それはE・H・パーカー著、閔丙台訳『韃靼一千年史』で、やはり昭和十九年に大和書店から刊行されている。初版二五〇〇部、会計定価は四円八十銭、菊半並製三…

古本夜話 番外編その二の3 ルネ・グルセ、後藤冨男訳『アジア遊牧民族史』と山一書房

「ユーラシア叢書」のもうひとつの原本は27、28のルネ・グルセ『アジア遊牧民族史』で、これも昭和十九年に翻訳刊行されている。菊半八八二ページに及ぶ大冊で、版元は発行者を杉山栄一とする神田区須田町の山一書房である。奥付によれば、初版二千部、定価…