2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧
喜田川守貞の『近世風俗志』に関して、続けて三回書いてきたので、ここでそれと同時代の、やはり百科全書的な風俗考証の書である喜多村信節の『嬉遊笑覧』にもふれておくべきだろう。喜多村は江戸後期の市井の国学者で、その随筆集成は山東京伝の『骨董集』…
前回書いたように、『類聚近世風俗志』の東京出版同志会版を入手しなければならないので、「日本の古本屋」を検索してみた。すると、東京の文生書院に一冊だけ在庫があり、幸いにして購入できた。しかもそれは『近代出版史探索Ⅲ』545の田中貢太郎の旧蔵書で…
国学院大学出版部から刊行された『類聚近世風俗志』に対して、編者の室松岩雄が「序」で挙げていた「学会若しこれによって其の闕を補ひ、其の漏を充すことを得ば、吾人の幸又何ぞこれに過ぐるものあらん」との思いは通じたのであろうか。 (『類聚近世風俗志…
前回既述したように、 久保田彦作『鳥追阿松海上新話』を読むに際し、前田愛の「注釈」を参照している。それで気づいたのだが、その主要な部分は多くが喜田川季荘の『近世風俗志』、別名『守貞漫稿』を出典とするもので、前田はそのタイトルとして、後者を挙…
野崎左文は「草双紙と明治初期の新聞小説」(『増補私の見た明治文壇』所収)において、前回の『高橋阿伝夜刃譚』のような明治式草双紙の出現は新聞連載の「続き物」を単行本化したのが始まりで、明治十年以後流行し、書肆の店頭をにぎわすことになったと述…
東洋文庫の野崎左文『増補私の見た明治文壇』二分冊には、仮名垣魯文の追善集『仮名反古』(明治三十年)も収録され、そこには「西洋道中膝栗毛の末に一言す」「明治年間に於ける著述家の面影」「『高橋阿伝夜刃譚』と魯文翁」などの魯文追悼録、及びそれに関…
三回続けて、斎藤昌三、高木文、蛯原八郎の明治文学書誌学の礎石をたどってきたが、それらの原型、もしくは最も影響を与えた資料として、昭和二年に春陽堂から刊行された野崎左文の『私の見た明治文壇』が挙げられるであろう。残念ながら春陽堂版は未見であ…
大正から昭和時代にかけての近代出版業界の成長、及び近代文学とその出版の隆盛を背景とし、大正八年に東京古書組合が発足する。それとパラレルに高木文や斎藤昌三といった近代書誌学の礎石となった人たちが出現してくる。そして当然のことながら、彼らの衣…
前回の斎藤昌三編纂『現代日本文学大年表』は先行する範があり、その「例言」で次のように述べている 。 この種の徒労的な仕事は、自分が最初ではない。曩には先輩高木文氏の『明治全小説戯曲大観』があるが、その量に於て数倍の差があるのみで、自分の体験…
すでに四半世紀前になってしまうのだが、あらためて近代文学史と出版史の関係をトレースしなければならないと考え、その最も重要な資・史料として、『現代日本文学全集』の別巻『現代日本文学大年表―(附)社会略年表』を常に座右に置いていたことがあった。…
20年7月の書籍雑誌推定販売金額は929億円で、前年比2.8%減。 書籍は447億円で、同7.0%減。 雑誌は481億円で、同1.4%増。 その内訳は月刊誌が405億円で、同5.7%増、週刊誌は76億円で、同16.5%減。 返品率は書籍が40.2%、雑誌は37.5%で、月刊誌は36.6%、週刊誌…