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米3大コメディアンが笑わなかった夜

アメリカのテレビは夜11時以降、どのネットワークも人気お笑いタレントが司会をつとめるトークショーを放送する。古くはビートルズをアメリカに紹介した「エド・サリバン・ショー」が有名だが、その流れを汲んでNYブロードウェイにあるエド・サリバン・シアターから毎晩OAするCBS「Late Show with Steven Colbert」、その裏番組として人気を二分するNBC「Tonight Show with Jimmy Fallon」、そして ABC「Jimmy Kimmel Live」。
いずれも司会の名前を冠したトーク番組で、放送の数時間後には日本でも大半をYouTubeで見られる。3大ネットワークの看板を背負う、アメリカでもっとも有名なコメディアントップ3と言っても良い。
さらに深夜にOAされるLA発のCBS「Late Late Show with James Corden」、ABC「Late Night with Seth Myers」もYouTube上で人気を集めている。
(今はどの番組もコロナ対応のため無観客・リモートで構成している)

いずれも1月6日夜のOAは異様だった。

隣の兄ちゃん風の軽快なトークで人気のジミー・ファロン。NBC伝説のコメディショー「Saturday Night Live」に長年出演して人気・実力ともナンバーワンに上り詰め、ついに毎晩OAするトークショーのホストとなった。
「きょうは、エンターテイメント番組をお送りするのは難しい日です」
と、憔悴しきった顔で語り始める。

トランプ大統領をさんざんジョークのネタにして視聴率をあげてきたスティーブン・コルベール。いつもは夕方に収録する番組を急きょ生放送に切り替え、怒りに震えながら、一人の女性が亡くなるに至ったこの暴力を、今日この事態を招いた全員を刑務所に送るべきだと強い言葉で語りかける。
トランプは「最高位の裏切り者」(Traitor-in-Chief)。
トランプの主張を支持し、選挙結果に疑義を唱えた共和党の上院議員たちの名前を読み上げ「全員この事態に責任がある」「ひねくれた卑怯者たち」「決して次の選挙で当選させてはならない」。そして過去4年間トランプを無条件に支持する言論を流し続けたFOXニュースも責任がある、と。ときにこぶしを振り上げながら語り続ける。

ジミー・キンメルは討論番組のホストのように落ち着いた口調で「今日がトランプ時代の裏切り(トリーゾン)・フィナーレだった」と、シーズン・フィナーレに引っ掛けたダジャレだが全く笑えない挨拶で番組をスタートし、議会への暴徒乱入の様子を淡々と描写しながら伝えた。

イギリス人として初めて米ネットワークのトークショー司会に抜擢されたジェームズ・コーデン。いつも、もちもちの福顔の最高の笑顔からショーを始めるのに、涙目で「今日はなんてクレイジーで悲しい日だったろう。本当にこれがアメリカなのか」と語りかける。
「アメリカは過去4年間、あるキチガイ(lunatic)とその軍隊にハイジャックされていた」「けれど2週間後には、きょう暴徒に荒らされたあの議事堂で、バイデン大統領が誕生する」「希望はある、希望こそがアメリカの本質だ」

セス・マイヤースはアメリカの選挙権の歴史をひもとき、「トランプ大統領は即刻、大統領執務室から排除されるべきだ」「全閣僚の同意を得る手続きをとるか、弾劾するかだ」と、視聴者に訴える。
「約束します、明日からはちゃんと笑える冗談をお伝えします」とも。


彼らは全員、過去4年間、米3大ネットワークの人気トークショーの司会として、トランプ大統領の言動をジョークにしながら、政治ニュースをきわめて的確・正確に伝えてきた。アメリカの政治はトークショーを見た方がニュースを見るよりもよほど理解できる。ニュースの背景や裏にある人間関係をかみくだいて面白く分かりやすく伝えてくれるからだ。

それでもトランプ岩盤支持層はぴくりとも動かなかったし、考え方を変えることもなかった。3大ネットワークの視聴者は、きっと大半が、本当に民主党寄りなのだろう。

やるせない気持ちのまま、この夜の空気を忘れないように。
久々にnoteに記録を残しました。#

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