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感想 僕たちの青春はちょっとだけ特別   雨井湖音 障害者の世界がリアルに描かれているミステリー主体の物語。東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞受賞作。

東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞受賞作。
知らない賞です。

障害者のことを描いたミステリーだということで読んでみました。

特別学級というのが中学にあった。
なんらかの疾患のある生徒が通う教室だった。
隔離していたので実態は知らない。

健常者から障害者は学校という世界においてすら隠されているのが現状なのです。
それは学校だけでなく社会全般においても、そうなのだと思います。


本書の舞台はそういう高校で、生徒はそういう生徒です。特別支援学校高等科というらしい。

定番のダウン症の子や、映画のレインマンを想起させるような自閉症気味の天才。人とのコミュニケーションがうまくとれない子などが描かれている。

正直、少しうざい世界です。

主人公の少年は雰囲気は幼稚園児のようなのに、彼の主観で描かれる記述は大人のような思考。そこに妙な温度差を感じました。


ミステリー主体なので読みやすいです。

障害者あるあるがリアルだった。

責められた時、心当たりがないのに反射的に謝ってしまう。
この状況を早く終わらせたいと障害者は思うそうだ。

これこそ障害者あるあるだと感じた。

自分の苦手なことがバレるのが苦痛だという深谷君の思考は興味深い。

これができないと障害者が口にすると、たいていは助けてくれる。
だが、深谷君は一見、障害者に見えない。

この場合、事情が複雑になる。
これが苦手だと口にすると、ただ、バカにされるだけならどうなのか。
それが苦手だと知られて、それで攻撃してくるとしたらどうか。

誰が見ても障害者だとわかる人を人はイジメたりはしない。
これは苦手です。出来ませんと告白すると、周囲にいる人は同情し助けてくれる。
目の見えない人に対し、後ろ蹴りをかます奴なんかいない。
無視するか、助けるかするのである。

でも、一見、障害者に見えない人が、これは出来ませんと告白すると、それはカラかいの材料になり、それでイジメられることに発展する。

このエピソードに僕は、この物語の深みを感じた。
障害者をよく知っている人にしか書けない話しなのだ。

レインマンみたいな見た目ヤバそうだけど天才もいるし
ダウン症みたいに見てすぐにわかる障害者もいる。
そういう見た目でわかる人は、他者からすると庇護しなきゃならない存在だから、ある程度のミスは許容されみんなに助けられるのだが、深谷君のような存在は複雑だ。

時計の針を読めないというエピソードが出てくるが、長針と短針がごちゃごちゃになり時間がわからないらしい。
みんなができることが普通にできない。
特別だから責められる。

これは絶対多数者の傲慢である。
差別である。
マイノリティー無視です。

差別の根幹は、こういう雰囲気にある。

普段は、高校生以上に高校生でしっかりしている彼が、こういう欠点がある。他にもチケットが買えないとか、知らない人とコミュニケーションがとれないとか知らない人にとっては面食らうことだと思う。

それがイジメに発展し、余計に病気が悪化したということらしい。
こういう複雑な世界がリアルに描かれていることが本書の魅力だ。

この賞を受賞した理由がよく理解できる。


しかし、ちょっとキャラがみんなウザすぎる。

2024 12 22



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