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滋賀医科大学の「性的暴行事件」に関する異常な判決について


1. 異常な判決

2024年12月18日、滋賀医科大学の男子学生2名が性的暴行の罪に問われていた事件について、大阪高等裁判所の飯島健太郎裁判長は逆転無罪の判決を言い渡しました。

1審の大津地方裁判所(谷口真紀裁判長)は、女子学生の証言の信用性を全面的に認め、片倉さんに懲役5年、男性に懲役2年6か月の実刑判決を言い渡し、2人が控訴していました。

18日、大阪高裁(飯島健太郎裁判長)は、「女子学生は自身に不利な行動を隠す供述をしていたのに1審は十分な検討をせずに信用できるとしたのは不合理である」と指摘。

片倉さんの主任弁護人をつとめた秋田真志弁護士は、「1審判決は明らかに不当な有罪判決だった。高裁では証拠について正当な評価をいただいた」とコメントしています。

判決理由で飯島裁判長は、女性が被害申告した主な目的は「(行為を撮影した)動画の拡散防止にあったことは明らか」とし、その目的達成のために「状況を誇張するなど虚偽供述をする動機があった」と被害供述の信用性を疑問視した。

飯島裁判長は判決で、女子大学生が動画の拡散防止を警察に相談していたとし、「目的達成のため誇張して説明する動機があった」と指摘。

 一審の大津地裁は2024年1月、「被告人らの供述は信用できない」として、男子学生Aについて「直接的な暴行や苛烈な脅迫を加えていないものの、女子学生の意思を無視して性的暴行に及んだ」として懲役5年、男子学生Bについて「性的な接触をしていないが、動画撮影や共犯者を煽る発言をし犯行実現に影響を与えた」として懲役2年6か月を言い渡しました。その後、男子学生A・Bは控訴しました。

 18日の控訴審判決で、大阪高裁は「女子学生は当初、無理やりの性行為だと信じてもらうため警察にあえて話さなかった行為があり、ウソの供述をしている可能性が否定できない」と指摘。

脅迫とされた発言も性的な行為の際に見られることもある卑猥な発言という範疇のものと評価可能であり、明確に脅迫や暴行とあたる行為は認められない。

滋賀医科大学の事件、控訴審で大阪高等裁判所の飯島健太郎裁判長は、推定無罪の原則に忠実な判決を言い渡しました。

しかし、一審で大津地方裁判所の谷口真紀裁判長は、女子学生の「都合の悪い部分が隠蔽された嘘の証言」の信用性を全面的に認めて、懲役刑を課したわけです。

率直に申し上げて、異常な判決だったと思います。

なお、実際に起きた事実に関しては、下記のnoteに掲載されている図が参考になります。弁護士ドットコムの2つの記事を元にして、各人物の行動が時系列順に整理された図です。

性暴力事件で医大生に無罪判決、「部屋に入ったら同意?」
SNSで紛糾…裁判所はどう判断したのか - 弁護士ドットコム
元滋賀医大生らの「無罪判決炎上」は、
たったひとりの弁護士によるデマツイートからはじまった|小山(狂)

事実関係を整理すると、C男は性交渉どころか性的接触を一切しておらず、性的な動画撮影もしておらず、他人の性行為の最中に卑猥な野次を飛ばしただけであることが分かります。

しかし、一審では懲役2年6ヶ月の実刑判決が下されました。

ここで、参考までに「10歳児童を誘拐してホテルに連れ込みわいせつ行為に及んだ42歳女性」に一審で下された判決を見てみましょう。

執行猶予つき懲役2年6ヶ月です。

男子学生は一審で執行猶予なし懲役2年6ヶ月。
42歳女性は一審で執行猶予つき懲役2年6ヶ月。

「10歳児童を誘拐してホテルに連れ込みわいせつ行為に及んだ42歳女性」よりも「他人の性行為の最中に卑猥な野次を飛ばした男子学生」の方が刑罰が重いのは、どう考えても明らかにおかしいのではないでしょうか。

もちろん、42歳女性に執行猶予がついたのは、示談が成立しているからという事情もあるでしょう。しかし、仮に示談が成立しておらず執行猶予がつかない実刑判決が下されていたとしても、懲役の期間は「他人の性行為の最中に卑猥な野次を飛ばした男子学生」と同じです。

逆に言えば「他人の性行為の最中に卑猥な野次を飛ばした男子学生」に一審で課された刑罰は、「10歳児童を誘拐してホテルに連れ込みわいせつ行為に及んだ42歳女性」に課された刑罰とほとんど同じということになります。

どれほど異常な判決なのか、ご理解いただけたでしょうか。

「性的暴行」の罪に問われて高裁で逆転無罪を勝ち取った医科大の男子学生2人の冤罪事件は、要するに「一審の女性裁判官による判決」が間違っていたものと言えます。

女子学生による虚偽の供述に信用性を全面的に認め、男子学生に懲役刑を課した。他人の人生を無茶苦茶にする判決を出したのだから、相応の批判が起こるのも仕方ないでしょう。

後述しますが、逆転無罪の判決が下されてからも、男子学生は顔写真と個人情報を拡散されており、醜悪な誹謗中傷に晒されています。

また、国立大学法人滋賀医科大学の対応もおかしい。

同大学は、地裁で男子学生2名に有罪判決が下されたときは「同日中」に大学サイトに掲載していました。

令和4年5月19日に本学学生2名が、同26日に1名がそれぞれ強制性交等容疑により逮捕され、6月9日に同罪により起訴された事件について、本日、本学学生2名(謹慎処分中)が、有罪判決を受けました。

しかし、高裁で逆転無罪の判決が下されてから「3日以上」が経過しても何の音沙汰もありません。

あまりにも対応が遅くありませんか。

言うまでもない話ですが、有罪判決を受けていた者が無罪判決を受けたということは、今まで不当に名誉を傷つけられていたわけですから、本来ならば有罪判決を受けたときよりも速やかに対応して、名誉回復に尽力すべきでしょう。

下記は、これまで滋賀医科大学が本事件に関して掲示してきた内容です。

【令和4年8月5日】本学学生の起訴を受けた本学の対応状況について
【令和4年5月20日】本学学生の逮捕について
【令和4年9月29日】本学学生に対する懲戒処分の決定について
【令和4年10月27日】本学学生の逮捕・起訴を受けたセクシュアルハラスメント及び性暴力・性犯罪等の再発防止策について
【令和5年1月10日】本学学生が逮捕・起訴された事件について
【令和6年1月25日】本学学生が逮捕・起訴された事件について

特に『本学学生の逮捕・起訴を受けたセクシュアルハラスメント及び性暴力・性犯罪等の再発防止策について』は、前提となる事実が覆っているわけですから、全面的に内容を見直すべきでしょう。

2. 誹謗中傷の数々

性的暴行の罪に問われた滋賀医科大学の男子学生2人が逆転無罪を勝ち取った事件、大阪高等裁判所の飯島健太郎裁判長は「推定無罪」「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」「10人の真犯人を逃すとも1人の無辜を罰するなかれ」等の言葉に象徴される、司法の原則に忠実な判決を下しました。日本は法治国家なので、当然の判断でしょう。

しかし、この判決に激昂する女性が大量に発生して、Xではハッシュタグ【#飯島健太郎裁判長に抗議します】がトレンド入りしました。

下記は、1万いいねを超えるポストを抽出して時系列順に並べたものです。恐ろしいことに20ポスト以上あります。

ご覧になれば分かりますが、どのポストも見事なまでに「女子学生が都合の悪い事実を隠蔽して虚偽の供述を証言していたこと」に触れていません。

都合の悪い事実を隠した女子学生を擁護するために、それ自体を都合の悪い事実として隠しています。異様な光景です。

また、ほとんどの人が間違えている(もしくは意図的に論点をすり替えている)ことですが、女子学生の「やめてください」「絶対だめ」「いやだ」という拒絶の言葉が裁判において「性的な行為の際に見られることもある卑猥な発言という範疇のもの」だと判断された──わけではありません。

(このデマの発信源については後述します)

男子学生の発言が「性的な行為の際に見られることもある卑猥な発言」と解釈されたに過ぎず、女子学生の方は「当初、無理やりの性行為だと信じてもらうため警察にあえて話さなかった行為があり、ウソの供述をしている可能性が否定できない」という理由で信用性が認められませんでした。

もう1つ、どのポストも触れていない事実があります。

滋賀医科大学の性的暴行事件で男子学生が逆転無罪を言い渡された判決には、きちんと「女性の意見」も反映されています。

今回、裁判が開かれたのは第6刑事部。飯島健太郎裁判長、大寄淳裁判官は男性ですが、宇田美穂裁判官は女性です。

岡山地家裁部総括判事の経験もある、優秀な裁判官です。

これらの事実があるにも関わらず、逆転無罪を言い渡した飯島健太郎裁判長および晴れて無罪となった男子学生への誹謗中傷は止みません。

「顔写真と個人情報」もSNSで拡散されています。さすがに引用は避けますが、現時点で2.8万いいねを超える共感を得ている。大手メディアが「マスゴミ」と呼ばれる要因の1つである最低な行為が、SNSでも行われています。

その影響から、誹謗中傷・侮辱・名誉毀損に留まらず、明らかに脅迫行為を促すポストも散見される始末です。

法治国家としては、異常としか言いようがありません。

他にはこんなポストも。まず前提として、当たり前の話ですが日本では司法・立法・行政の三権分立が定められています。ですが……。

日本の三権分立を理解していないとしか思えないポストが3.5万いいねを超えています。司法について総務省行政相談センターに電話しても、迷惑行為でしかありません。

さらに「2秒で分かるデタラメな内容」も相当数の共感を集めて拡散されています。不同意性交等罪に関するもの。

説明するまでもありませんが、滋賀医科大学の男子学生が容疑に問われたのは「不同意性交等罪の施行前」です。法には不遡及の原則があります。

このような「根拠も論理も屁理屈すらない純度100%の邪悪なヘイトスピーチ」でさえも4.5万いいねの共感を集めてしまう。

現代日本ではこのような男性差別が平然とまかり通っているのです。

3. 署名とデモ

異常なのは、Xのポストだけではありません。

『大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します』というオンライン署名に、たった3日間で10万筆も集まりました。

特に判決を下した飯島健太郎裁判長を許してはならない。

年内には、署名リストを印刷し、個人で訴追請求事由を記した文書と共に、これだけの同意があったことを示すべく「裁判官訴追委員会」への提出を試みます。

2024年12月20日時点

この署名は想像以上にヤバい代物です。

どのくらいヤバいのかと言えば、あの津田大介氏が「あなたの署名は訴追への同意として使われることになる」「対処を考えた方がいいかもです」と注意喚起をするくらい。マジでヤバい。

「飯島健太郎裁判長を許してはならない」と記載されており、提出が「訴追請求事由を記した文書」と共に行われて、提出先が「裁判官訴追委員会」であることから、この署名が「判決内容を理由に弾劾で飯島健太郎裁判長の罷免を求めるもの」なのは、誰がどう見ても明らかです。

しかし、そもそも「判決内容を理由に裁判官の罷免を求めること」は裁判官弾劾制度の対象外であり、原則として許されません。

罷免を求めるには、裁判官の行為について、職務上の義務違反が著しいか、職務怠慢が甚だしいか、裁判官としての威信を著しく失わせる非行があったかのいずれかの場合でなければなりません。

この点、訴訟指揮や判決といった裁判官の審理・判断の当否について、他の国家機関が調査・判断することは、司法権の独立の原則に抵触するおそれがあり、原則として許されません。

少しでも文章が読めるならば、少しでも手元のスマホで調べたならば、こんな署名に自分の名前を連ねることは、人生の汚点であり恥であると理解できるでしょう。こんなものが法治国家でまかり通ってはならない。

っていうか、普通に憲法違反です。

裁判官に弾劾による罷免の裁判を受けさせる目的で虚偽の申告をすると、3ヶ月以上10年以下の懲役刑が課せられます。結構な重罪です。

軽い気持ちだった、無知から来る素朴な正義感だった、自分も騙された被害者です──という言い訳は通じません。闇バイトの受け子や実行部隊と同じ。あなたの自己責任です。

第四十三条(虚偽申告の罪)
裁判官に弾劾による罷免の裁判を受けさせる目的で、虚偽の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。

なお、弾劾裁判所まで上がった裁判官罷免訴追事件は過去にたった10件しか実例がなく、判決内容を理由とした罷免訴追事件は1件もありません。

この事実は、弾劾裁判所の公式サイトで確認できます。

しかし、決して「どうせ訴追も罷免もされないから大丈夫」とは言えず、楽観的に「こんなアホな署名どうせ相手にされない」と呆れるのは危険です。

裁判官訴追委員会は、20人の訴追委員(衆議院議員および参議院議員各10人)と10人の予備員(衆議院議員および参議院議員各5人)で構成されています。司法に介入したい国会議員なんて腐るほどいます。「国民の声が集まっているから」「民意だから」と盾にして、裁判所に圧力をかけても不思議ではありません。

日本の三権分立、司法の独立が破壊されようとしている。国会議員による裁判所への介入が成功してしまったとき、国会議員があなたの期待通りに動くと思いますか?

これがフィクションの物語であれば、前述した「大阪高裁の飯島健太郎裁判長への苦情は、総務省行政センターでいいのかしら?」という日本の三権分立を理解していないようなポストが「判決内容を理由に弾劾で裁判官の罷免を求める署名」の存在により「日本の三権分立を理解していないのではなく破壊しようとしている」と判明して見事な伏線回収になっています。

しかし、これは現実です。

さらに言えば、女子学生の「やめてください」「絶対だめ」「いやだ」という拒絶の言葉が裁判において「性的な行為の際に見られることもある卑猥な発言という範疇のもの」だと判断された──という悪質なデマは、この『判決内容を理由に弾劾で飯島健太郎裁判長の罷免を求める署名』で拡散されました。

この署名は「サイレントで文章を変更可能」「変更履歴がどこにもない」という、とんでもない署名です。デマを流して署名を集めて後からシレッと直している時点であり得ない。これがどれほど恐ろしいことか分かりますか?

2024年12月20日時点の文章がこちら。(署名は11,927筆)
2024年12月23日時点の文章がこちら。(署名は106,707筆)
現在の文章がこちら

署名の提出先も、当初は裁判官訴追委員会だけでしたが、後から大阪高等検察庁も追加されています。集めた個人情報の使用方法を勝手に変更して、署名した人々はそのことを知らない。何に名前を使われるか分かったものじゃありません。

個人情報保護法を違反している可能性が高い。

こんな署名に10万筆も集まっているのが日本の現実です。著名人からも「署名した」と名乗りを上げている人物が何名もいます。

異常事態としか言いようがありません。

また、大阪高等裁判所の前では司法に抗議するフラワーデモが開催されました。この「フラワーデモ大阪緊急アクション」では、泣きながら訴えかける女性が「10万筆を集めた署名に書かれていた内容と同じ悪質なデマ」を垂れ流して、飯島健太郎裁判長を誹謗中傷していました。

フラワーデモは草津町で虚偽告訴事件でも開催されていました。

草津町の虚偽告訴事件で、草津町長とそのご家族および草津町が途方もない風評被害に晒されたことは、記憶に新しいでしょう。

フラワーデモもその例に漏れず、草津町に「セカンドレイプの町草津」という凄まじい汚名を着せるものでした。冤罪が無事に晴れて汚名が返上されるまで、実に5年もの時間が費やされました。

女性たちは、草津町の虚偽告訴事件から何も学んでいないのでしょうか。

いいえ、女性たちは決して草津町の虚偽告訴事件から何も学ばない馬鹿ではありません。何も反省しない無能ではありません。

女性たちは、草津町の虚偽告訴事件から「どれだけやっても自分たちは許される」と学んで、「これだけやっても罰せられないならもっと徹底的にやるべきだった」と反省しています。

だから、滋賀医科大学の性的暴行事件では「冤罪を着せられた男性を叩き潰すだけでは不十分であった」「裁判長を社会的に吊し上げて司法そのものを破壊しなければ」と女性たちが行動している。

その結果として、「女子学生が都合の悪い事実を隠蔽して虚偽の供述を証言していたこと」「女性裁判官の意見も判決に反映されていること」には触れないで無罪の男子学生をSNSで誹謗中傷して、悪質なデマを含んだ『判決内容を理由に弾劾で飯島健太郎裁判長の罷免を求める署名』に3日間で10万筆が集まり、大阪高等裁判所の前では悪質なデマを垂れ流して裁判長を誹謗中傷するフラワーデモが開催されたわけです。

楽観的な見方をするべきではないでしょう。

4. 異常すぎる社会

女性が関わる犯罪は、警察・検察・司法・世間の4つが徹底的に女性の味方をします。はっきり言って「女性は甘やかされている」と言っても過言ではありません。

これは女性が犯罪の被害者(と思わしき立場)である場合もそうですが、女性が犯罪の容疑者である場合も同様です。

日本社会では「女性特権」としか言いようがないほど、女性がやりたい放題という現状があります。信じられないかもしれませんが、具体的な事例を見ていきましょう。

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