新語が流布するポイントは「新鮮味や差別化」
よ~く考えると違いが曖昧な似たモノは多く、また、個人の主観で定義が変わることもある。これまで、日刊SPA!ではそんな「似て非なるもの」(https://nikkan-spa.jp/583781)の数々を紹介してきた。公的機関が違いの定義を定めているものがあれば、イメージの違いから新たな呼び方が誕生したケースも少なくない。
◆新鮮味や差別化を狙って生み出された言葉もある
日本語研究者はこうした日本語の変化をどう見ているのか。『三省堂国語辞典』編纂者で、日々、現代語の用例を採集する飯間浩明氏は、「新鮮味や差別化」をキーワードに、言葉の変化を解説する。
「例えば、戦後、食べ放題の立食形式『バイキング』が広まりました。ところが、近年、新しさを演出して『ビュッフェ』『バッフェ』とも言うようになりました。また、大衆化した『ステーキ』に対し、由緒正しさの感じられる『ビフテキ』という呼び名があえて使われる例もありますね」
それぞれの店や個人によって使い分けがあっても、「実際は同じものとみて差し支えない場合も多い」とか。
「女性のつなぎ服は、オールインワンともロンパースともコンビネゾンとも言います。メーカーなどによって、使い方が微妙に違います。国語辞典では、これらの違いをことさら強調する書き方はしません。ある解釈だけがひとり歩きするのも問題ですからね。クルマのハンドルに“あそび”があるのと同じで、言葉にも解釈の幅があっていいんです」
特に、ひとつの言葉に対する“語感”や“好感度”は人によってさまざまで、共通化は不可能だと飯間氏は指摘する。
「『君の言葉は誤りだ、私の基準に合わせなさい』と言う人が多くなると、日本語は痩せていきます。言葉は自分の考えや思いを伝えるための道具です。その目的に適う言葉は、みんないい言葉なんです。辞書の記述を踏まえつつも、自分の感性を生かして、言葉をのびのびと使ってほしいですね」
【飯間浩明氏】
日本語学者。『三省堂国語辞典』編集委員。早稲田大学などで非常勤講師を務める。近著に『辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?』(ディスカヴァー携書、『辞書を編む』(光文社新書)
取材・文/加藤カジカ 田山奈津子 古澤誠一郎 港乃ヨーコ 鈴木靖子(本誌) イラスト/Studio CUBE. 写真/産経新聞社
― [似て非なるもの]の違いがわかる大事典【8】 ―

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