遺品整理で見えた“パパ活女子”の闇

他にも歌舞伎町で
水商売に従事していた20代の女性の家を清掃したこともあったという。
「ラウンジ嬢かキャバクラ嬢か、水商売をしている人が亡くなったようで、
依頼主はその部屋を借りている“男性”でした。最初はどういうことなんだろうと戸惑いましたが、おそらくパパ活といったものをやっている女性のようでした。
部屋の中にはブランドバッグがたくさん転がっていて、ホストっぽい男性とのツーショット写真などが飾ってありました。おそらく、
その男性から貢いでもらったお金をホストに貢ぐという状況だったのだと思います」
遺品整理でブランド品などを買い取ることになり鑑定をしたところ、驚くべき結果となった。
「
部屋にあったブランド品はほとんど偽物だったんです。財布とか化粧品などの小物は本物もあったのですが、カバンは全て偽物でした。たくさんあるんだから一個くらいは本物があってもいいと思うんです。
おそらく貢いでもらったカバンを売って、そのお金でスーパーコピー品を買って、差額を懐に入れていたのだろうと推測できました。貢いでもらった人には安い代替品を見せて、『買ってもらったカバンは大切に使ってるよ』とアピールしていたんでしょう」
遺品整理などの件で彼女の両親に連絡を取ったところ、遺品の受け取りを拒否されたようだ。
「
両親とは絶縁状態だったようです。こちらで引き取ることができない偽物のブランド品はどうしようかと悩みましたが、受け取り手がいないとなると、捨てるほかありません。マンションの契約者である男性にもどうするか聞いたところ『処分してくれ』と言われました。かなり
歌舞伎町の闇を感じる現場でした」
次の現場も先ほどと同様にひどく荒れていたという。
「デザイナーズマンションだったのですが、部屋の状態はかなり酷くて、清掃費用などは契約していた男性の支払いとなりました。階段の上の手すりで首を吊ったようで、体液や血液が階段全体に流れてきていて、死後2週間近く経っていたので臭いもすごかったです。建物の作りもコンクリート打ちっぱなしで、体液がコンクリートの隙間に入ってしまっているので、臭いが取りきれなくて苦労しました」
自殺の原因は不明だが、
ホストとの間に借金があったのではないかと話す。また、若者の孤独死は自殺だけではなく、事故のケースもあるという。
「若者全体の孤独死の割合としては、8割が自殺で2割が事故ですね。病死という現場はいまのところ見たことがありません。病気の若者は入院するので、家で孤独死といった状況にならないのでしょう。
とはいえ、病死なのか事故死なのか判断が難しい状況の孤独死で、
急性アルコール中毒で亡くなった現場はありました。12%とか9%とか強い部類のお酒が散らばっていて、さらに睡眠薬を飲んだ形跡があったのです。最初は自殺かなと思ったのですが、どうやら
事故死で、もともと死ぬつもりはなかったようです」
若者の場合は病気で孤独死する可能性は少ないが、それ以外の複数の原因が重なって、自殺や事故などで亡くなってしまうことがある。その背景に見えてくる“生きづらさ”は複雑で根深い。若者たちに寄り添える社会を作っていくことが今後大切になっていくのではないだろうか。
<取材・文/山崎尚哉>
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「
ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「
BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦