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「人生詰んだ!」34歳で介護離職、12年後に見つけた新しい人生。岩手から東京への“遠距離介護”で見えた希望

2年半後の出版が転機に

工藤 広伸そんな苦境の中、ブログコンサルタントに相談し、電子書籍を勧められた。「NPO法人企画のたまご屋さん」の支援を受け、2015年10月に『医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得』を出版。ブログ開始から2年半の努力が実を結んだ瞬間だ。 「誰も読まないブログを書き続けるのは、まるで地獄でした。何度も心が折れそうになりました。でも、あの苦しみがなければ今の自分はないです」 出版後は予想を超える反響があり、介護作家・ブロガーとして活躍の場が広がった。

月半分は盛岡で介護、半分は東京で妻と

祖母は1年で亡くなったが、母はアルツハイマー型認知症を患い、遠距離介護は13年目に突入。「月10日~2週間は盛岡で母を介護し、残りは指定難病で働けない妻と東京で過ごします。合間に講演会もしています」 母は、初期の頃は、同じ話を繰り返し、妄想や過剰な買い物が目立った。学生時代から手足が不自由になる難病も発症し、現在は要介護4(自立、要支援1~2、要介護1~5の8段階で後半ほど重度)。障害福祉と介護保険サービスを併用し、1人暮らしを支えている。「今は僕の名前と顔をかろうじて覚えている程度。他はほぼ答えられません。介護休業は、自分が介護する時間じゃない。プロに任せ、仕事と両立する体制を作るためのもの。若いうちにその知識を身につけて欲しい」と訴える。
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介護離職を勧めないが、ポジティブな視点も
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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