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絶滅危機…国内わずか6ヶ所「デパートの屋上遊園地」が“名古屋で復活”のワケ。レトロ遊具も再登場

 昭和レトロブームの昨今だが、昭和の時代に「街なかの憩いの場」として親しまれた、昔ながらの「レトロ屋上遊園地」の閉園が止まらない。  一昨年(2023年)には横浜高島屋(横浜市西区)の屋上プレイランド、スズラン百貨店高崎店(群馬県高崎市)の屋上遊園地、矢尾百貨店(埼玉県秩父市)の屋上遊園地が、そして昨年(2024年)には浜屋百貨店(長崎県長崎市)の屋上プレイランドが相次ぎ閉園。日本百貨店協会の加盟店舗数とかつてあった高層スーパーの数から推測すると、最盛期には全国各地に数百軒あったといわれるレトロ屋上遊園地はついに1ケタとなってしまった。  そうしたなか、今年(2025年)3月には改装により休園していた松坂屋名古屋店(名古屋市中区)の屋上遊園が久々に復活。そのほかにも、近年は遊園地ではなくともリニューアルによってさまざまな活用方法が採られるデパートの屋上――デパオクが見られるようになった。  今回は、かつては全国各地にあった「デパートの屋上遊園地の歴史」と、「デパオクの今」を辿っていきたい。
松坂屋上野店南館

2014年に再開発のため閉園した松坂屋上野店南館(現・上野パルコヤ)の屋上遊園地。都心に残る屋上遊園地として知られており、閉園発表後は多くの人が写真を撮影していた(2014年撮影、写真:若杉優貴)

「デパオク」の始まりは明治時代!

 日本国内における「デパートの誕生」は、1904年12月に東京・日本橋に本店を置く「三越呉服店」が得意客に向けて(さらには翌年の1905年正月には新聞広告上で)呉服店から西洋風のデパートメントストアとして生まれ変わるという告知を華々しくおこなった「デパートメントストア宣言」にさかのぼる。  明治の時代、それ以前から呉服店の「デパート化」は少しずつ進んでおり、1898年に大阪高島屋がショーウィンドウとマネキンを導入、1903年に白木屋日本橋店(のち東急百貨店に合併)が食堂などを備えた多層型の複合ビルを建設するなど、呉服店系商業施設の大型化・近代化の動きが起きていた。そうした「呉服店の大型化」のなかで生まれたのが「屋上遊園地」だ。  早くも明治末期には日本橋三越本店をはじめ、日本橋白木屋(のちの東急百貨店日本橋店、現在コレド日本橋がある場所)、名古屋のいとう呉服店(松坂屋の旧名、当時は栄に立地)などが「ビル化」したことに合わせて屋上庭園を開設しており、のちに「デパオクの定番」となる簡単な遊具や商売繁盛を祈る神社、展望台が設置される例もあった。  そうしたなか、現在に繋がるデパートの本格的な屋上遊園地となったのは、1931年に開業した「松屋浅草支店」(松屋浅草/専門店街エキミセとして現在も営業中)の屋上(8階)に設けられた「スポーツランド」だといわれる。  この松屋スポーツランドはロープウェイや木馬といった電動の大型遊具からいわゆるアーケードゲーム、神社、さらにはミニ動物園までをも備えるもので、こうした本格的な屋上遊園地は戦争が激しくなる1930年代後半までに全国各地へと広がった。ちなみに、この時に松屋の屋上遊園地を手掛けた日本娯楽機械(のちニチゴワールド)は戦後も長らく一般遊園地や屋上遊園地などの遊具を手掛けていたものの、残念ながらコロナ禍の2020年に廃業している。  このようなデパートの屋上遊園地・屋上庭園の広がりは、当初は富裕層のみをターゲットにしていた呉服店がデパート化し、そして社会が豊かになるにつれて家族連れや若者へと客層を拡大していったことがうかがえる出来事の1つであった。
松屋浅草/エキミセ

松屋浅草/エキミセ(東京都台東区)の屋上。遊園地は2010年に閉園、現在は「ハレテラス」と名前を変え、スカイツリービュースポットとして人気を集めている。なお、神社は昔と変わらず鎮座している(写真:若杉優貴)

おなじみのあの大企業、出発は「屋上遊園地」だった

 戦時中は殆どの屋上遊園地が閉園となったものの、戦後復興期から高度成長期にかけて屋上遊園地は再び活況を迎え、1970年代にはデパート(百貨店)のみならず総合スーパーやショッピングセンター屋上での開園も目立つようになった。  屋上遊園地が増え続けるなか、商業施設の屋上遊園地やゲームコーナーを専門に手掛ける企業も増えた。実は現在のバンダイナムコHD(東京都港区)――ナムコの前身「中村製作所」も最初に手掛けたのはデパート屋上遊園地の木馬であり、屋上遊園地の拡大に伴い成長を遂げた企業の1つだ。
矢尾百貨店(埼玉県秩父市)

屋上遊園地ブームは高度成長期には全国各地、中小都市にも広がった。秩父・武甲山を望む小さなデパート・矢尾百貨店(埼玉県秩父市)4階にあった屋上遊園地。ゴールデンボンバーのMVに使われて「聖地」となったものの2023年に閉園(写真:若杉優貴)

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バブル崩壊、防災、耐震化、少子高齢化――さまざまな要素が重なり閉園へ
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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