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「なんでもそろう」ファミレスの人気低下が示す“時代の変化”。すかいらーくの「資さんうどん」買収で見えたもの

 経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は株式会社すかいらーくホールディングスを紹介したいと思います。  かつて同社はハンバーグやピザを主力商品とする「すかいらーく」を全国に展開し、日本にファミレスを広めた存在です。バブル崩壊以降には低価格業態「ガスト」を開発し、現在に至るまで同社の主力ブランドとなっています。しかし、昨今はファミレス業態が苦戦していることから、徐々に専門店へと軸足をシフトしています。
ガスト 熊本藤崎店

J_News_photo – stock.adobe.com

チェーン店黎明期を切り開いた「すかいらーく」

 すかいらーくHDは1962年、ことぶき食品有限会社として設立。多摩地域を中心に食品スーパーを展開していましたが、当時はダイエーや西友などの総合スーパー(GMS)が台頭し始めた時代。GMSに勝てないと判断した創業者はファミレス事業への参入を決め、1970年に「すかいらーく」の1号店を出店しました。  ハンバーグやピザなどの洋食を低価格で提供する同業態は、すぐに消費者に受け入れられました。当時はマクドナルドも出店しておらず、チェーン店は居酒屋の「養老乃瀧」程度しかありません。個人店がメインだった時代に、定価かつ一律のメニューを提供するチェーン店は、消費者にとって安心感を与えてくれました。1980年にはコーヒーショップ風の別ブランド、ジョナサン、83年には和食業態の藍屋、86年には中華のバーミヤンと、順調にジャンルの幅を広げました。

景気悪化に伴い「ガスト」が主力の座に躍り出る

 1991年にバブルが崩壊すると、消費者は価格によりシビアになりました。そこで同社は低価格業態「ガスト」をプッシュします。開業当初はメニュー数をすかいらーくの半分程度に抑え、さらにドリンクバーの導入で人件費を削減しました。また、現在のファミレスでは当たり前となったベルトコンベヤー式のオーブンを使うことで、調理の手間を省きました。当時の客単価はすかいらーくが1,000円前後であるのに対し、ガストは750円程度でした。  すかいらーくの店舗数は93年時点で750店舗のピークを迎えましたが、低価格路線のガストがヒットすると、店舗を次々に置き換え、すかいらーくは2009年に消滅しました。ちなみに似たような事例として、同社は藍屋の低価格版である夢庵を94年にオープンしています。2024年度末時点で主力のガストは1,249店舗となり、グループ全体では3,069店舗を展開しています。
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今後はファミレスから“専門店化”へ
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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