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「赤いきつね」CM炎上騒動で、「気持ち悪いからやめろ」という批判が危険なワケ

「表現の自由」は互いに尊重されるべき

赤いきつね

東洋水産株式会社(マルちゃん)の公式Xより

 けれども、一部(ごくごく少数だとは思いますが)から、これをもって不買運動や削除を求める声があがっているのはいただけません。なぜなら、このCMが誰かを傷つけたり誹謗中傷したりする意図をもって制作されているのではない以上、表現の自由の範囲で議論されるべき問題だからです。  そのうえで、“かわいい女の子が深夜にうどんを食べて孤独感を癒やす”映像なのか、それとも“偏った美少女趣味のキモいオタク的な表現”なのかを、あくまでも主観同士で議論をたたかわせるべき話なのです。  過激な批判意見に潜むキャンセルカルチャーには、モノそのものを吟味する主観を逸脱して、政治的正しさという客観を盾に、放映中止や不買、排除を正当化する、いわば強制執行的なニュアンスが含まれる。そこに危うさがあるのですね。つまり、“臭いものに蓋をする”ことの越権行為、介入的な言い方について、政治的に正しいという確信ゆえにためらいを感じずに突っ走ってしまう傾向がある。  もしも自分の気に食わないものを締め出すことを正しいと考えるのなら、逆に自分が締め出される立場になったときに、その理屈を甘んじて受け入れなければなりません。  けれども、そんな“目には目を、歯には歯を”な社会が望まれるでしょうか?  だから、今回の『赤いきつね』のCMが存在する権利は尊重されなければならないし、またそれに対して「キモい」と表明する自由も保障されなければならない。  ただそれだけの話だけれども、それはかけがえのない自由だと思うのです。 文/石黒隆之
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物議を醸した赤いきつねのCM
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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