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電車で「邪魔だったから!」妊婦に“わざと”足をひっかけた女性の顛末「許されることではありません」

優先席を必要としている人に気づかないふり

 ある日の夕方6時過ぎ、帰宅ラッシュの時間帯に電車に乗っていた近田ゆりさん(仮名・20代)。 「その頃の私は、妊娠後期に入っていてもう少しで産休に入るところでした。なので、優先席に座っていたんです」  お腹の張りが気になっていたため、できるだけ安静にしていたかったという。 「電車が駅に止まる度に乗客が増えて、少しずつ混雑していきました。そんな中、『苦しい……助けてください』という細い声が聞こえました」  近田さんは顔を上げ車内を見渡した。すると、20代くらいの男性が、座席の前をゆっくり歩きながら訴えていたのだ。男性は野暮ったい服装に、気の弱そうな顔つきをしていた。  立っている人の視線はスマートフォン。座っている人は目を閉じている状況だったそうだ。そして、その男性はふらふらと歩きながら、ついに優先席の前にきた。 「他の席にはサラリーマンたちが座っていました。見る限り健康そうな人で、妊婦の私だけが“優先席に座る理由がはっきりとわかる”感じだったんです。でも、誰も席を譲りませんでした」  少し迷った近田さんだったが、その男性に「座りますか?」と声をかけた。

席を譲り、ずっと立ち続けることに…

「男性は、『ありがとうございます……』と小さく礼を言い、私の座っていた席に腰を下ろしました」  近田さんは目の前の吊革につかまり、「しばらくの辛抱だ」と言い聞かせた。すると、男性が急に話しかけてきたという。 「そこで私は男性に、『どこで降りますか?』と聞きました。降車駅までまだ30分以上あるそうで、男性の体調を考えると、途中下車して休んだほうがいいんじゃないかと思ったんです」  近田さんは「途中で降りて休んだほうがいいですよ」と伝えたのだが、男性は首を横に振り、「いや、大丈夫です。早く帰りたいんで……」と言い、そのまま目を閉じた。 「私はそれ以上は何も言えず、ずっと立ち続けていました。しばらくして男性が降りる駅に着いたので、『着きましたよ』と肩を軽くたたいたんです」
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席を立った瞬間“スタスタ”と改札へ
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2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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